ニューオルリーンズはアメリカ南部料理の宝庫といわれる。スペイン系とフランス系移民が生み出したクレオール料理、カナダから来たフランス系の人が作ったケイジャン料理、黒人たちが生み出したソウル・フードなどなど・・・。
私もこれらをレストランなどで能書きを聞きながら食べたが、印象に残っているのは、酒場や屋台で食べたガンボ・スープとポー・ボーイ・・・そして、左手にはいつもハリケーンがあった。
ガンボ・スープ(Gumbo)は、日本で言えば《ごった煮汁》というようなもので、魚介やチキン、玉ねぎなどの野菜を香辛料で煮込んだ濃厚なスープ。庶民が何でもあるものを入れて作ったのであろうと思っていた。ところが、最近「カメルーン料理教室スコラチカ」というホームページを見ていたら、「・・・フランス系移民のブイヤベース、スペイン系移民のスパイス、アフリカ系移民のオクラ、インディアンがサッサラスの木の葉、お米の産地であるルイジアナのお米が混じりガンボスープができた」とあるので、大変な料理であると驚いた。私が、酒場や、道端の屋台で食べたものはもっと素朴なものに感じたが。
ポー・ボーイ(Po‐Boy)は、フルネームをポーボーイ・サンドウィッチというように、フランスパンを裂いてその間にカキやカニなど魚介類やローストビーフなどを挟んだもの。PoはPoorの略で、文字通り貧しい少年が腹を満たすために、それこそ側にあるものを何でもパンにはさんで食べたのであろう。
私は、ミシシッピー河岸の屋台でポー・ボーイと紙コップに入ったハリケーンを買い、それをちびちび飲りながら肖像画を描いてもらった。20年前の思い出の肖像画は今も私の書斎に掲げられて、その時の不思議な味を想起させる。ポー・ボーイはけっこう重厚で、決して貧しい感じはなかったし、ハリケーンはラム酒の甘さが心地よく効いた。
次回はそのハリケーンとラム酒について。