最初にアメリカに行った頃(1988~89年頃)の日本酒はすべて純米酒であった、と書いた。その後、90年代の半ば頃になると、大吟醸(これは少量といえどもアルコールが添加されている)や本醸造が並ぶようになっていたが・・・。
純米酒を示すラベルには、英語で「Pure Sake」と書かれてあった。正に「純粋な日本酒」と言う意味だ。わたしはこのラベルが欲しくて、飲む度に剥がした。
ところがこれは、何故か同行者のひんしゅくを買った。「みっともない」と言うのだ。加えて「剥がして持って帰るのならチップを払え」と言う。冗談ではない。ウェイターなどに剥がしてもらうのならチップでも払うが、自分で剥がすのである。しかもかなり苦労して剥がすのにチップを払ういわれはない。酒のビンは、再使用するにはすべて洗浄し、その際ラベルなどは全て洗い流して、次の酒を詰めればそのラベルを貼るのである。どうせ捨てるものを先に剥がして持っていってやるようなものだ。もっとも、割り切れない気持ちを持ちながら、何度もチップを払ってきたが・・・。
それはさておき、酒のラベルは私にとっては貴重品である。ラベルには、銘柄、製造元の住所、電話番号に始まり、製造年月日などのほかに、何よりも重要な原材料や製法などが書かれている。これは酒の資料としては「第一級品」である。
私は、剥がしたラベルの裏に、飲んだ日付、一緒に食べた料理やその相性、また同行の人の感想などを書き込んで保存しておく。これが「酒の記録」として蓄積されてていくのである。
特に外国となれば、再びその地を訪れると言う保証はない。後になって必要となり、「ちょっとその店まで行ってくる」というわけには行かない。理不尽でもチップぐらいは払う値打ちがある。
「Pure Sake」のラベルに始まり、たくさんの思い出深いラベルが、私のアルバムを飾っている。
ところで、なぜ外国人だけが、日本人も殆ど飲んでいない純米酒だけを飲んでいるのか?