私は外国では、基本的にはその国の酒を飲む。国内であっても、旅でも出張でも、その地の酒を飲むことにしている。酒はその地のものであり、その地の風土、文化、なによりもその地の食べ物とともにあるものだから。
しかし、日本酒をこよなく愛する私は、どこの国に行っても、その国で日本清酒がどのように飲まれているか大変に気になるので、機会を見つけて日本酒を探して飲む。
今でこそ日本酒も相当な国で、相当な種類のものが飲まれているが、最初にアメリカに行った1988~89年頃は、未だそれほどの種類は飲まれていなかったように思う。
それでも私は、アクロンの「東京ー北京」、シカゴの「紅花」、ニューヨークのホテル エセックス・ハウスの「弁慶」などという日本料理屋で日本酒を飲んだ。当時は、殆どが白雪、大関、月桂冠、菊正宗など大手12社の酒であり、日本からの直輸入のものもあったが、多くはカリフォルニア産の日本酒であった。
ただ当時一番驚いたのは、アメリカで飲んだ日本酒は「全て純米酒であった」と言うことだ。これには本当に驚いた。当時日本国内での純米酒の消費量は全清酒の3.4%に過ぎなかった。あとは全て、アルコールや糖類や調味料を混ぜたニセモノ日本酒であった。
にもかかわらず、アメリカでは全て純米酒(正に本物の日本酒)が飲まれている!
日本人はニセモノを飲まされ、外国人だけが本物を飲んでいるのか!
この怒りが、私をいっそう日本酒の探求に向かわせたのであった。(以下次回)