旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

権力と戦い続けたモーツアルト

2008-04-10 13:30:51 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 昨夜のNHK番組『その時歴史が動いた』は、「音楽の市民革命」と題してモーツアルトの生涯がとりあげられた。モーツアルトは、あの美しい調べを武器に貴族階級と戦い続け、音楽、特にオペラを貴族階級のものから一般市民のものにするため、35年の生涯を捧げた。
 番組によれば・・・・・・、

 子供のころのモーツアルトは神童、天才と騒がれ、貴族たちの庇護の下に演奏活動を続けその才能を伸ばしていく。しかし、自己の音楽を確立していくにつれ、貴族たちの望む音楽との間に隔たりを感じるようになる。ついに、一定の枠内の演奏しか認めない貴族と決別しウィーンで新たな活動を始めるが、貴族たちの結束は固く、モーツアルトへの注文を一切絶って生活自体を脅かすまでに至る。
 しかし、時代は大きく変わりつつあり、やがてフランス革命を迎える。モーツアルトはその動きを敏感に捉え、自己の作曲活動の軸足を民衆の中に移していく。あの貴族生活を痛烈に風刺した『フィガロの結婚』の初演は、フランス革命の2年後であった。しかし『フィガロ・・・』はまだ、貴族の言葉イタリア語で書かれたが、以降モーツアルトは「真に一般市民のためのオペラ」として、市民の話すドイツの語のオペラ『魔笛』の制作に心血を注ぐ。
 初めてオペラを手にした民衆が熱狂した『魔笛』の初演には、病を押して自ら指揮をとるが、その2ヵ月後に35年の短い生涯を閉じる。

 モーツアルトは死したが、まさに「その時歴史が動いた」のである。政治の世界のフランス革命が、自由、平等、博愛を旗印に新しい世界を築いたことに平行して、音楽の世界でも、貴族と戦ったモーツアルトの力で、自由と平等を歌い上げた「音楽の市民革命」が成し遂げられたのだ。
 番組の最後は、モーツアルトの次の言葉で結ばれた。

 
       僕は貴族ではないが
   貴族に負けない力を持っている
   人間を高めるのは貴族ではなく
   心だ
                                     


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