久しぶりに帰ったふるさと臼杵の桜は4、5分咲であったし、帰京すると東京の桜は満開を過ぎていた。とはいえ雰囲気でも味わおうと、昨日夕刻からワイフと出かけ、すぐ近くの神田川沿い(浜田山から高井戸にかけて)を歩いた。
散り急ぐ桜はまさに「桜吹雪」の有様で、神田川に散った花びらは、美しい「花筏(はないかだ)」となってどこまでも続いていた。満開に向かうときのウキウキする風情はないが、これもまた日本特有の美しさだと思った。
とはいえ、花の散るのはどこかさびしい。少し景気をつけるか、と某居酒屋に入った。桜の季節のハナ金とあって、これから予約客が多いので・・・と奥の静かな部屋に通された。
なかなかいい雰囲気で、他の客もなく落ち着いて飲める雰囲気だ。九州は八女の名酒「繁桝」などあるのでそれを頼み、料理は「刺身盛り合わせ」「真鯛のカルパッチョ」などに、ワイフはお腹が空いたと「焼き鳥」と「沖縄焼きそば」などを注文した。
ところが・・・、酒だけは来たが料理が一向に来ない。繁桝一合を飲み干したが、頼んだ料理が来ない上に店の者が顔も出さない。ようやく来たと思ったら「焼きそば」だ。一番最後に食べようと思っていたものが最初に来た。「刺身はどうした」と問うと「今もってきます」と引っ込んでなかなか来ない。しかたなしに焼きそばで名酒を飲む。
二本目の酒を持ってきたあとに、ようやく刺身が出てきた。そのときには、刺身とともに飲みたいと思っていた酒は一本半が空いていた。やがて「真鯛のカルパッチョ」が出てきたので、グラッパ(イタリアの焼酎)の代わりに焼酎を飲みたくなり呼び鈴を押すがなかなか出てこない。カルパッチョが半分ぐらいなくなったときにやっと「遅くなりました」と注文取りに来た。
さすがに気分を害し、「この店はいい店だが、こうサービスが悪くてはとても飲めない」と、いろいろ食べ残したまま店を出た。
飲み屋の良し悪しは、雰囲気も、酒も、料理も良いことが条件となるが、何よりも大事なことは「客が何を求めているかを敏感に掴み、それに的確に応える」ことが出来るかどうか、にかかっていると思う。日本酒とともに刺身を注文した客に、それを出すタイミングを失するような店は、まず居酒屋とか割烹とか名乗る資格はないのではないか?
それは客の身勝手だと言うのなら、そんな店には二度と行かないだけである。