今日のテレビニュースで、世界最大のビール祭り「ミュンヘンのオクトーバーフェスト」が開幕されたことが報じられている。1リットルジョッキを7~8個奉げた民族衣装のウェイトレスが、世界中から集まったお客に勢いよくビールを運ぶ・・・。昨年は、その興奮の中に身をおいていたことを思い出す。
昨年の今日、私たちは朝早くフランクフルトを発ってミュンヘンに向かった。以降3日間、二日目の日中にノイシュバンシュタイン城を訪ねた静寂のほかは、夜も昼も、林立するジョッキと人いきれとワケの分からない興奮の中にあった。その様子を「狂乱のビアホール」と題してブログにも書いた(07.10.27付)。
ドイツでは「ドゥンケル」を中心に各地でドイツビールを飲みまくったが、「ビール純粋令」(麦芽、ホップ以外の一切の混入を許さない法律)を500年の長きにわたり守り続けたドイツビールの実力を見せつけられた。一部を除いて「米やトオモロコシやでんぷんを混ぜた日本のビール」とは味もコクも違う。本物を守り続けた歴史の重みを感じた。
それは何もドイツだけではない。イギリスのエールを飲んで、ピルスナー系のドイツビールと違う上面醗酵ビールの豊かな味わいも素晴らしいと思った。勢いよく飲んで喉を潤すだけでなく、話をしながらいつまでも味合うビール・・・つまり「パブが育てたビール」というイギリスの歴史がそこにあった。
ビールだけでなくワインにもそれは感じた。リヨンでは専ら赤ワインを、ドイツでは白ワインを飲んだが、濃醇な深い味わいは現地ならではと思った。特にライン河の町リューデスハイムで飲んだ「アウスレーゼ」には驚嘆した。原料である葡萄の栽培を探求し続け、「ついにここまで来たのか!」と、これまた歴史を感じた。
もちろん私は、なにも外国かぶれしているつもりはない。日本にも歴史を重ねた素晴らしい酒がたくさんある。戦中戦後のアル添三増酒(米、米麹のほかに醸造用アルコール、水飴、調味料などを混ぜたニセ日本酒)という混乱をようやくぬけ出し、まさに日本民族が長年にわたって造り上げた純米酒を中心とした酒が、そのシェアーを高めつつある。
私はヨーロッパの旅で「それぞれの国と酒の歴史」を感じながら、わが国の純米酒の歴史と素晴らしさを再確認したのであった。