4月20日、またはそれから5月5日の立夏までを、24節気では穀雨とする。文字通り、穀物が育つために雨の降る時節である。なにも穀物だけではなく、この雨で万物が生育するが、中でも米つくりを始める水田に雨を欠くことはできない。つまり田植の時節である。
このブログでも温暖化をはじめ気象異変に何度も触れた。2月ごろに初夏の陽気が来たかと思うと、桜の開花を迎えて真冬の寒さが見舞う。近年の異常気象は年毎に激しくなるが、しかし、大きい流れの中で見ると季節の変化は争うことなく訪れる。
穀雨の今日は晴(曇)天であるが今夜からは雨の予報だ。4月になって、週を通して同じ気象が続くことがない。2,3日の晴天の次には必ず2、3日の雨が続く。その雨が、田おこしされた水田の土を潤し、田植の準備をすすめ、稲を受け入れ(田植)、生育を約束する。
あれほど乾季が続いていたのに、必要な時期がくれば必ず雨が降る・・・、自然はよくできているのである。
この時節を迎えると思い出す酒がある。姫路の本田商店が造る『龍力米のささやき』という酒だ。酒を思い出すというより、その酒を造る本田武義(本田商店会長)という人物を思い出すと言った方がいいかもしれない。
本田武義会長は70歳代半ばを過ぎるが、一貫して酒つくりにたずさわり、純米大吟醸「米のささやき秋津」などの名酒を造ってきた。この酒は高価(一升31,500円)で簡単には飲めないので、純米酒フェスティバルでは、それを飲もうと『龍力』のブースに長蛇の列ができる。
本田会長の関心は、その酒つくりから原材料の米に向かった。中でも山田錦の探究に没頭し、自ら栽培して研究を続け、数々の研究業績を残している。
その後会長の研究心は「米を作る土」に向かう。酒つくりは若い者に任せ、もっぱら「土の研究」を重ね、ついに学位を取るまでに至ったのである。
この追求心は、並みの人間では持ち得ないのではないか。
私は穀雨を迎えるたびに『龍力米のささやき』という名酒を思い、原料の「兵庫県特A地区産秋津産山田錦」を経て、それを育てる「本田武義の土」を思う。
穀雨の雨に潤されたその土は、今年も山田錦の早苗を受け入れる準備をすすめていることであろう。