わが家と庭続きに義姉家族が住んでいる。ワイフの姉夫婦である。うちの子供たちはその夫婦にかわいがられて育った。ところが義兄は10年前、義姉は2年前に亡くなり、今はその息子(つまり甥)が、両親の形見のような猫と一緒に住んでいる。トラという猫だ。
そのトラが昨夜死んだ。一番そのトラを可愛いがっていた私の長女は、知らせを聞いて悲しみに打ちひしがれたようで、出演していたオペラ(コーラス隊)が終わるや否や駆けつけ、ついに昨夜は我が家に泊まり「猫の通夜」となった。
人間なら80か90歳くらいの猫らしいので、正に天寿を全うしたのであろうが、それだけに家族の一員となっていた。甥はとうとう一人暮らしになってしまった。
両親が亡くなり、その形見のような猫も逝った。何か一世代が去ったような感情が、「猫の通夜」の席を流れた。