旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

24節気の酒 ・・・ 芒種

2009-06-05 10:49:04 | 

 今日は芒種。稲や麦のように穂先に芒(のぎ)のある穀物の種を蒔く時節で、今日6月5日または、今日から次の24節気である夏至までの期間を言う。
 つまり種蒔く時のことだ。もっといえば田植えの時節だ。先月長崎を旅したが、佐賀平野は黄金に実った一面の麦畑であった。生まれ育った九州では、冬に麦を植え夏に米を植える輪作であったが、5月に冬に植えた麦を刈り、6月が秋の実りに向けた田植えであった。

 酒造界にも種蒔く人は多くいる。造る人(蔵元)、運ぶ人(酒販店)、飲ませる人(料飲店)また飲む人(消費者)の各分野に、ひたすら日本酒の発展を願って「種を蒔き続けている人」を多く知っている。
 その中で、近時、この時期になると思い浮かべるのが中野繁氏だ。氏は酒に関するイベントや出版を業とするフルネット社を主宰、10年前から純米酒普及推進委員会の中心として、年3回の純米酒フェスティバルを大成功に導いてきている。私もその委員の末席を穢させてもらっているが、その運営はほとんど氏の手による。

 もう一つ氏の功績は、各地の小さい蔵を親身になって育てていることである。氏は自らを日本酒プロデューサーと名乗るように、小蔵の酒を掘り起こし新たな命名をして、新たな視点で売り出している。その第1号が「飛露喜」である。平成9年のことであるが、10年を経て今や全国銘柄ともいえる有名酒となった。その後、「天明」、「富美川」、弥久」、「山吹極」、「星自慢」、「加茂金秀」など次々とヒットさせた。いくつか未販売のものもあるが、11番目の命名「一白水成」(秋田、福禄寿)も人気上昇中で、蔵も発奮して命名(平成18年)3年後の今年は全国新酒鑑評会で金賞を取る蔵に成長。

 そして12番目の命名が「仙鳴卿」(神奈川、井上酒造箱根山)。中野さんに「是非ぬる燗で飲んでくれ」と戴いた。昨夜愛用のお燗器(写真)で飲んだが、米の味と甘みが豊かに膨らみ、飲むというより食べる酒というにふさわしく、私の好きな酒であった。
 種蒔く人の「種が実った酒」というべきであろう。
                    

 


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