旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

ムハマド・ユヌス氏と「グラミン銀行」、「ソシアル・ビジネス」

2009-06-06 21:15:00 | 政治経済

 11日のNHK「未来への提言」で、バングラデシュのノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏の業績が報じられた。その一つ「グラミン銀行」については、元銀行員として一度詳しく知りたいと思っていたので、強い関心を持って番組を見た。

 アメリカに留学して経済学を学んだユヌス氏は、バングラデシュの独立を機に帰国する。しかしそこには「一日の生活費平均2ドル(200円)」という貧困層が生きていた。彼らは足りない生活費を高利貸に借りるが、農作業や民芸品作りなどで生み出す価値は高利に奪われ、いくら働いても何も残らない。
 ユヌス氏は、当初ポケットマネーで彼らに「一人27ドル」を貸す。もちろん無担保。彼らはその資金で物つくりに励み、高利を奪われることなく貧困から抜け出していった。しかし最貧困層に無担保で貸して何故回収できたのか? その秘密は5人を一組にして互いに連帯保証とし、相互の励ましを基盤としたこと。結果は98%の返済率を維持しているという。今や世界から資金を集め「グラミン銀行」として多くの貧困を救っている。

 もう一つ、そうして集めた資金で国民の生活を支えるさまざまな事業を興した。ただ、資金提供者には配当は無いことを条件にし、儲けは全て次の事業にまわし貧困層の救済に当てた。事業の採算は厳しくチェックし利益を追求したが、利益を個人のものとしないで貧困救済の次の事業に回す。ユヌス氏はそれを「ソシアル・ビジネス」と呼ぶ。
 一般企業の社長の年次報告は「いくら儲かったか」であるが、ソシアル・ビジネスの社長は「何人の貧困者を救ったか」を報告、来期計画は「何人救うか」を目標にする、

 ユヌス氏は、「人間は多様だ。自分の儲けだけを追及する人もいるが、“社会のために役立ちたい、そのために資金を出したい”という人も多くいる。そこに依拠すればこの事業は必ず成功し返済も確実に行い、やがて世界から貧困はなくなる」と断言した。
 また、人類は高い技術水準に達している。それを社会が最も必要とする事業に向け、且つその儲けを一部のものが独り占めすることなく次の事業に投じていく(これを氏は“新しい資本主義”と呼んだ)ならば、貧困を救うソシアル・ビジネスは必ず成功する、と強調した。

 最後に「近い将来、貧困は博物館だけで見ることが出来る社会が来るだろう」と結んだ。
  この高邁な思想が、単なる理論や提言でなく現実に行われれていることに、心の震える思いがした。
                   

 


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