昨夜のNHK衛星第二放送番組「世紀を刻んだ歌」は、半世紀に及び歌い継がれてきたフォークソング『花はどこへ行った』を採りあげた。わが青春をともにしたこの名曲は、大意として次のような意味で歌われている。
野に咲く花はどこへ行った 野に咲く花は少女の胸に
少女たちはどこへ行った 少女たちは若者の胸に
その若者たちはどこへ行った 若者たちは戦場へ行った
若者たちは戦い終わり たたかい終わって土に眠る
戦士の眠るその墓石に野バラが咲き
野バラはいつか少女の胸に
・・・私たちがこれを理解するのは いつの日のことだろう
昨夜の番組は、この歌の生い立ちから現在までを克明に追った。随分歌ってきた私も、知らないことばかりで、極めて新鮮に番組を見た。
作者ピート・シーガーは、この歌の上記4行目までを作り、他の人(名前は忘れた)があとの2行を加えて完成させたと言う。最終行の「・・・いつの日か」という問いかけは、「戦争と言うこの不条理を、人類が真に理解するのはいつか・・・」という極めて普遍的な問題提起で、これが「反戦歌」としての地位を不動のものにしたのであろう。
ピート・シーガーは、この発想をロシアのノーベル賞作家ショーロホフの『静かなドン』に出てくる「コサックの子守歌」から得たと言う。ピートがそのことをショーロホフに楽譜を添えて報告した手紙も紹介された。
『静かなドン』にモチーフを得て、ベトナム戦争のさ中に作られたこの歌は、戦場の兵士を含めた世界中で歌われた。ナチに対して毅然とした態度を取りつづけたマレーネ・デートリッヒは、大戦後母国ドイツに帰ってこの歌を歌った。またベルリンの壁が崩壊して東西ドイツが一つになったとき、銀板の女王カタリーナ・ビットは、オリンピックでこの歌にあわせて演技をした。残念ながらピークを過ぎた彼女は7位に終わったが、滑り終わった彼女に対する拍手と投げ込まれた花束の数は、他の誰よりも多かったと言う。