旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

「花はどこへ行った」(NHK番組「世紀を刻んだ歌」より)

2009-09-06 12:53:58 | 文化(音楽、絵画、映画)

 昨夜のNHK衛星第二放送番組「世紀を刻んだ歌」は、半世紀に及び歌い継がれてきたフォークソング『花はどこへ行った』を採りあげた。わが青春をともにしたこの名曲は、大意として次のような意味で歌われている。

  野に咲く花はどこへ行った 野に咲く花は少女の胸に
  少女たちはどこへ行った 少女たちは若者の胸に
  その若者たちはどこへ行った 若者たちは戦場へ行った
  若者たちは戦い終わり たたかい終わって土に眠る
  戦士の眠るその墓石に野バラが咲き
   野バラはいつか少女の胸に
  ・・・私たちがこれを理解するのは いつの日のことだろう

 昨夜の番組は、この歌の生い立ちから現在までを克明に追った。随分歌ってきた私も、知らないことばかりで、極めて新鮮に番組を見た。
 作者ピート・シーガーは、この歌の上記4行目までを作り、他の人(名前は忘れた)があとの2行を加えて完成させたと言う。最終行の「・・・いつの日か」という問いかけは、「戦争と言うこの不条理を、人類が真に理解するのはいつか・・・」という極めて普遍的な問題提起で、これが「反戦歌」としての地位を不動のものにしたのであろう。 

 ピート・シーガーは、この発想をロシアのノーベル賞作家ショーロホフの『静かなドン』に出てくる「コサックの子守歌」から得たと言う。ピートがそのことをショーロホフに楽譜を添えて報告した手紙も紹介された。
 『静かなドン』にモチーフを得て、ベトナム戦争のさ中に作られたこの歌は、戦場の兵士を含めた世界中で歌われた。ナチに対して毅然とした態度を取りつづけたマレーネ・デートリッヒは、大戦後母国ドイツに帰ってこの歌を歌った。またベルリンの壁が崩壊して東西ドイツが一つになったとき、銀板の女王カタリーナ・ビットは、オリンピックでこの歌にあわせて演技をした。残念ながらピークを過ぎた彼女は7位に終わったが、滑り終わった彼女に対する拍手と投げ込まれた花束の数は、他の誰よりも多かったと言う。

 実にいい番組であった。改めて、歌の力、芸術の力を思い知った。
                             

        


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