わが社は今、正社員の募集をやっている。不況のまっただ中で、失業率はピークに達している状況下で、わが社は景気がいいから人を募集しているわけではない。世間同様に大変苦しい経営を続けているのであるが、とはいえ、絶えず新鮮で優秀な人材を求めていかない限り、映像メディア制作、コンテンツつくり事業などと言うものは生きて行けないのだ。
今回も一人か、せいぜい二人の採用に過ぎないが、既に70名近い応募があった。では、相当に優秀な人間がたくさん集まっているかと言えば決してそうでもない。もちろんそれぞれに相応の能力を持った人はいるが、当社が求める人材にピッタリの人は少ない。
会社の倒産やリストラで、また学校は出ても職は無く、世間に人があふれ返り、とにかく仕事を求めて右往左往しているという印象だ。それだけに応募する方も余裕が無いのか礼を欠いている例も目に付く(来社して面接した人は別として)。
いくつかの例をあげると・・・、
70名近い応募者に対して、当社はほぼ全員に面接日をメール連絡し、その中で「当日の参加可否」を折り返し連絡していただくように依頼した。しかし、内40%の人からは返事が無かった。中にはまだメールを見てない人も居るのかもしれないが、自ら応募していながら、面接日を指定されて求められた返事もしない、というのはいかがなものか? もちろん中には、当日参加できない理由を付して、謝辞や他日への変更を丁寧にお願いしてきた人もいたが。
回答の中にも様々あって、自分の名前を記載してないのもずいぶんあった。メールでは発信者のメールアドレスがあるので、名前など書かないのが常識なのだろうか? ただこちらとしては、70ものアドレスとその本名を記憶するなどの能力は無いので、それらについては一覧表とつき合わせて本名を突き止め、面接予定日の表から抹消するなり変更するなりやらなければならなかった。手紙を書いて差出人たる自分の名前を書かない、というのはわれわれの常識としては無かった。メール世界はそれを可能にしたのか?
これらは、世に立ち遅れた私のようなアナログ人間が負うべき責めなのか、それとも現代人の道徳的退廃の一現象と見るべきか?