今日の毎日新聞が、「文化栄える国へ」というテーマで「自由な社会あってこそ」という社説を掲げている。今後の日本の進むべき道として、なかなか含蓄のある社説だ。
とかく地盤沈下がいわれがちな日本であるが、日本文化の評価だけは世界で高いとし、具体例として宮崎駿のアニメ、村上春樹の文学、磯崎新や安藤忠雄などの建築、また川久保玲らのファッションや草間弥生らの現代美術などをあげている。
そして、それらを生み出した理由として4点をあげている。
第一、戦後日本が築き上げた自由と民主主義が、表現や言論の自由を保障しており、これがなければ高い芸術は生まれない。
第二、日本が外来文化を消化し、自分のものに生かしてきた。漢字の音を使い自分たちの音楽を表現し、ひらがなやカタカナをつくった。アニメも小説も洋服も西洋建築も外来ものだが伝統文化と融合させた。
第三、日本人の多神教的な世界観。「千と千尋の神隠し」では神と共存し、村上作品ではネコやカエルが登場人物とコミュニケーションをとる。自然は破壊の対象ではなく共存の相手、万物に神が宿る世界観。
第四、作品にみられる繊細で大胆な表現。例として「巨人の星」の“滝のような涙”や“瞳が燃える”演出などをあげている。
そして最後に、これらの文化を守るための国のバックアップ、制作者の労働条件の改善、制作会社への税の優遇措置などの必要性を強調している。
何と言っても第一に掲げた理由だ。社説の題名となった「自由な社会あってこそ」だ。だから秘密保護法に多くの文化人が反対して立ち上がっているのだ。戦後築き上げた自由と民主主義が、いささかでも壊されるようなことがあっては文化は育たない。