旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

成功のうちに終わったミャゴラトーリ『ラ・ボエーム』公演

2014-07-28 09:51:25 | 文化(音楽、絵画、映画)


 オペラ『ラ・ボエーム』公演は二日目も10枚程度の当日券を残すだけで、ほぼ満席の観客を得て成功の裡に終わった。ウィークデーの昼間公演(午後3時開演)でほぼ満席となったのは、「岩田演出の魅力」によるところが大きかったのであろう。
 後片付けと打ち上げを終えて夜半、娘は「死ぬかと思った」と疲れ果てて帰ってきた。しかしその眼差しには「何とか成功した」という安どの色も浮かんでいた。

 アンケートを始め多くの感想が寄せられたが、その多くは「これまでの『ボエーム』と全く違った感動を得た」というものだった。『ラ・ボエーム』は最もポピュラーなオペラの一つと言っていいだろう。観客の多くは、これまで何度も見てきたに違いない。ところが今回、全く違う『ボエーム』を観たのだ。
 それが「岩田ボエーム」であったのだろう。一般のオペラにはオーケストラが付く。当然オケピットが構えられ、それが舞台と観客を隔絶する。観客は、自分とは別の世界として舞台の演劇を距離を置いてみる。
 今回のボエームはオケも合唱隊もない。歌手たちは舞台のそでからだけでなく客室の通路からも現れ、舞台の下でも演技し歌う。観客は歌手たちの声を耳元で聞き、汗の匂いをかぎ、時には唾を浴びる。物語の中にそのまま身を置く。
 客席はわずか230でオケピットもないが、それを逆手に取って臨場感あふれる小劇場演劇的オペラを実現したのだ。加えて、登場人物の人間表現に力を入れる岩田演出に、力量のある歌手たちがそれに応え、自ら感動しながら歌い上げた結果が、観客を惹きつけてやまなかったのであろう。
 ロドルフォ役の寺田宗永氏は自分のフェイスブックに次のように書いている。
 「学生の時から聞きなれた一幕のミミのアリアは、初めて、こんなに深い、深いドラマがあり、心を打つんだ!と思った」

 出演者自体が新たなオペラに感動しながら演じていたのだ。観客がそれに惹きつけられたのは当然のことであったであろう。


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