社会人としての還暦、などと題して書いていたら(前回)、また一人、会社人間にケリをつけた人間が現れた。長く付き合いを頂いてきた友、M君である。
私が三井銀行広島支店に転勤したのは1977年の暮れであったが、M君とはその時出会い、以来40年以上家族ぐるみでお付き合いを続けている。M君はこのたび職を離れて、いわゆる自適の生活に入ることになった。彼は三井銀行定年退職のあと、某電力事業会社を経て銀行時代の上司が経営する企業に請われて社長の番頭役を務めるなど、かなりハードな会社人間を務めてきた。今後も二つの企業の監査役を続けるようだが、それぞれ月に1日の勤務であり、実質的には長かった会社人間を離れることになる。
そこで、「今後をどう生きるか?」を肴に一杯飲んだ。とりあえずは、奥さんとの長年の約束を果たすため、「南米のマチュピチュからイグアスの滝周辺」と「北欧四ヶ国とフィヨルド」の旅を計画しているという。いずれも、それなりの長期旅行を計画しているようで、これはうらやましい。私は南米に行ったことがないし、北欧もフィンランドしか行ってない。特に北欧は未来社会を展望するうえで多くの教訓に満ちていると思えて、是非ともゆっくり回りたいと思いつつ、ついに実現しなかった国々だ。
そして、落ち着いたら、予てから温めていた「日本近代史」の知られざる部分にメスを入れて、これまで教えられなかった近代日本の歩みを自分なりにまとめてみたいと言っていた。これまた魅力的なテーマで、、「大いに期待する。私の目の黒いうちにまとめ上げてくれ」と伝えておいた。
M君はまだ71歳。これから20年やそこらは十分に活躍するだろう。私は彼に「大きい視野に立って、知識人としての役割を果たしてほしい」と提案した。彼はこれまで経営者の立場に近く生きてきた。これからは、働くもの、広く国民にも目を向け、日本の進むべき道について、時に及んで提言をしてほしいと思う。
彼にはその素養と力量があると思うし、今後も定期的に飲み交わしながら、そのような発言を聞けるのを楽しみにしている。
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