旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

集団的自衛権について(昨日のつづき)

2013-08-10 11:22:42 | 政治経済

 

 元法制局長官の阪田雅裕氏(在任2004年8月~06年9月)は、集団的自衛権について要旨次のように発言している。(8月9日付毎日新聞5面)

「憲法9条の解釈は国会での議論の集積で合理的。理屈抜きに『私はこう考える』と変更することは許されない。」
「統治権力が自由に解釈できるなら、『法治』ではなく『人治』になる。」
「集団的自衛権を認めると、国際法上許されない武力は行使できないという『世界標準』の憲法となり、9条の意味がなくなる。国民の考える平和主義と整合するのかどうか疑問だ。」

 さすがに法の番人である。まさに9条こそが、日本国憲法を世界の並の憲法と区別するメルクマールで、その解釈は国会の議論の積み重ねで合理的だとする。小松新長官もこの見地を堅持してほしい。

 改憲論者は、「世界情勢の変化に合わせて解釈も変える」とよく言う。しかしそれを言うならば、世界の軍事同盟はむしろ解体、解消され、平和友好条約の方向に向かっているのではないか。
 半世紀前世界を覆っていたソ連を中心とした軍事同盟も、東南アジア条約機構(SEATO)も、中東地域の中央条約機構(CENTO)も解散、オーストラリア・ニュージーランド・アメリカ合衆国安全保障条約(ANZUS)も米州相互援助条約(リオ条約)も機能停止に陥っている。
 いまや軍事同盟で残っているのは、NATOと日米、米韓、米豪の四つしかないといわれている。半世紀前は世界人口の67%がいずれかの軍事同盟の属していたが、今や16%に過ぎないとする資料もある。
  世界は日本国憲法の示す方向に向かっているのではないか? 世紀単位の観点に立てば、改憲派は世界の動向を見誤っているのではないか?


集団的自衛権行使容認への布石 … 小松法制局長官の任命

2013-08-09 16:15:52 | 政治経済

 

 安倍政権は、従来の慣習を破って外務省出身の小松一郎氏を法制局長官に任命した。これまでの法制局長官が、どうしてもウンと言わなかった集団的自衛権行使の容認を、長官を容認派の小松氏に差し替えて、政府として容認の道筋をつけようというのだ。
 しかし、これはルール違反ではないか。これまで法制局は、法の番人として「主権国家として集団的自衛権を有してはいるが、憲法9条より行使できない」としてきた。そこで、そのヘッドを容認派に取り換え、「憲法9条のもとでも行使できる」と解釈改憲して集団的自衛権の行使を容認しようというのだ。

 自分の都合に合わせて、自分と考えを同じくする者だけを周囲に集めてことを決して行こうというのは、まさにルール違反というしかない。そのようなことを許していけば、先日同僚の麻生副総理が「学ぼう」と呼びかけたナチスの独裁を許す道につながるだろう。
 土俵に追い詰められたらその土俵を広くするようなことを許すわけにはいかない。法制局は、「集団的自衛権を行使することは、憲法9条で許されている必要最小限度の自衛権の行使の範囲を超え、許されない」としてきたのだ。そしてそれを我が国政府は国の見解としてきたのだ。
 どうしても集団的自衛権を行使したいのなら、その本当の狙い、つまり「アメリカと一緒に戦争のできる道を開きたい」という狙いを明らかにして憲法9条の改定を国民に問うべきだろう。もちろん「衆参3分の2以上の発議で国民投票」というハードルを乗り越えてのことだ。
 それはそれで、国の運命を決める、国を二分する大闘争となろうが…。


猛暑の中で迎えた立秋 … 江國滋の死を思う

2013-08-07 14:37:23 | 時局雑感

 

 今日は立秋。暦の上では秋である。この暑さと、スコールのような集中豪雨の襲来は、秋などない熱帯地方の様相であるが。
 この時期になると思い出す俳句がある。

   おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒

という俳人江國滋の辞世の句である。
 江國は1997年2月6日に食道癌を告知され、約半年、187日の闘病生活の末、同年8月10日にこの世を去った。その間闘病日記を書き続け、膨大な闘病俳句を世に残した。
 退治しても退治しても転移を繰り返す癌との闘いは壮絶を極めたが、ついに8月8日、「敗北宣言」と題してこの句を書き記し、二日後の10日に逝った。
 闘病日記は2月5日書き始められ、最初の闘病句は2月6日の、「立春の翌日に受く癌告知」であり、最後の句は立秋の翌日の「おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒」となった。
 江國はどのような思いで秋を迎えたのであろうか? 敗れた相手とはいえ、とことん付き合い闘いつくした癌のことを、「癌め」と親しく呼び、ようやくたどり着いた酒のおいしい秋に、その「秋の酒」を酌み交わそうとしたのだろう。
 これが「夏の酒」では句にならなかっただろうから…。


東京近郊の華麗なる花火の競演

2013-08-04 14:01:19 | 時局雑感

 

 猛暑や豪雨が荒れ狂っているが、同時にこの季は花火のシーズン。昨夜8月3日は東京近郊で30か所以上の花火大会が行われたという。浦和の高級マンションの23階に住むWさんの部屋からは、その数か所を一望できる。
 この機会を逃すまじと、Wさんを含む「酒の会」(名前はまだなかったが、図らずも昨夜決定した!)は、彼女の招きに甘えてそのお部屋で臨時総会を開いた。しかもWさんは料理の名人、次々と出される高級料理を食べながら都会の花火を満喫した。
 何と言っても23階のベランダの下には180度の夜景が広がる。その正面に戸田の花火、その他右方に1か所、左方に3か所の花火を見ることができた。

 
    

 料理はWさんを中心に女性3人が作ってくれたので、私は酒の担当。事前にWさんから「真心料理を作ります」と言われていたので、それに応えるべく、栃木は大田原市の「旭興」が「真心こめて」造る『たまか』純米吟醸と、真心料理をつくろうというやさしい女心を表す酒名として、笠間市須藤本家の『山桜桃(ゆすら)』純米大吟醸を持参した。
 これは大変に喜ばれ、これまで決めかねていた会の名前を、「山桜桃の会」と命名することが一気に決まった。
 最後のデザートの段階では、Y氏持参の「ヘミングウエイが愛したキューバのラム酒」で〆るという、内容豊かな会であった。

    
                    
      
  
 
    


安倍政権の危険な方向(つづき)

2013-08-02 14:32:06 | 政治経済

 

 安倍政権の主要閣僚や自民党の幹部の中にも、この政権の危険な方向を思わせる本音の発言が相次いでいる。
 麻生副総理の、「憲法改定は、ナチスがワイマール憲法を国民の気が付かない間にナチス憲法に変えたあの手法に学べ」というけしからん発言には、本人の無知も重なって国内外の非難を浴びている。
 ヒトラーは、ナチスがワイマール憲法のもとで合法的に第一党となり政権についたのを機に、他の保守政党を巻き込んで「授権法」(全権委任法)を成立させて独裁体制を敷いた。ワイマール憲法はそのまま存続したが全権委任法の下で骨抜きになってしまった。
 麻生氏のいうヒトラーが変えたナチス憲法とは全権委任法のことだろうが、それはさておき、「ナチスに学べ」とは時代錯誤も甚だしく、「国民に気付かれないようにやれ」というのは、本音であろうが何とも浅ましい。
 この憲法改悪の先には、石破幹事長の「自衛隊を国防軍に変え、軍法会議(審判所と言っているが)を設置して、命令に従わないものは最高刑(わが国なら死刑)に処す」(自民党憲法改定案の説明)という方向があるのだろう。

 正に暴言というほかないが、これらが衆参選挙での過半数獲得を背景にしているとすれば、それは傲慢である。
 自民党は今回参院選で65議席を取り過半数(53.7%)を取ったが、比例区の得票率は34.7%、選挙区でも42.7%だ。衆院選でも小選挙区で「4割の得票で8割の議席」と話題になった。衆院選比例区の得票率に至っては27.6%であり、政党名で選ぶ比例選挙では、自民党はいわば3割政党なのである。
 国民は「全権委任」はしていない。心して政治に当たるべきである。


『世界でたった一つの花』が否定されようとしている … 安倍政権の危険な方向

2013-08-01 17:41:21 | 政治経済

 

 参院選が自民の圧勝(議席数だけの話であるが)に終わり、安倍政権の危険な方向が、いろんなところに見え始めてきた。
 安倍政権の「教育再生実行会議」メンバーには、八木秀次氏や桜井よしこ氏がいるが、彼らの教育思想にはいささかの危険性を感じてきた。
 八木氏は、SMAPの『世界に一つだけの花』についてこんな発言をしているという。「ナバーワンにならなくてもいい、というような歌を学校で歌わされていたのでは子供たちは何も努力しなくなる」……。
 私は、この歌の素晴らしさをブログでも何度も書いてきた。(2008.2.2「世界でたった一つの花」さんありがとう、など) 一番になれなくても人に負けない個性を持った人はたくさんいる。子供の教育で一番大事なのは、その個性を育てることだと思ってきたからだ。
 しかし八木氏は、「これが望ましく美しいと考える“型”にはめるのが教育や躾の本質」、「教育や躾には強制力が必然的に伴う」と主張する。桜井氏も「体罰は教育です」と主張して軌を一にする。(7月27日付「しんぶん赤旗」3面)
 このような人たちが、安倍政権の進める「教育再生実行会議」の中心を占めるとすれば、その考え方は当然のように推し進められるだろう。
 子供は個性を生かされるどころか、同じ型のはめられてしまう。
 私の重視する『世界に一つだけの花』は無視されようとしている。

            


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