中国国境警備当局がチベット人に発砲 ネパール国境 13日付の香港各紙によると、中国チベット自治区のネパール国境地帯で先月30日、ネパールに越境しようとしていたチベット人グループに中国の警備当局が発砲、少なくとも2人が死傷したほか、子供を含む数十人の行方が分かっていない。 報道によると、子供十数人を含む約70人のチベット人がヒマラヤ山脈を徒歩で越えようとし、国境警備当局の兵士の銃撃を受けた。国営新華社通信は「不法出国を図ろうとしたグループが、引き返すよう求めた当局の勧告に従わず集団で攻撃してきた」と説明。当局の銃撃で2人が負傷、うち1人が寒さと酸素不足のため死亡したとした。 香港紙サウスチャイナ・モーニングポストは銃撃を逃れた41人がカトマンズに到着したとして、「我々の後をつけてきた兵士が立ち止まるように命じ、発砲した」との証言を紹介。銃撃で死亡したのは、17歳の尼僧だとした。 (朝日新聞asahi.com 2006年10月13日18時24分) さすがは朝日新聞、ネット上でその非道さが話題になっているニュースも中国の事となるとサラッと触れてその後のフォローは無い。 ◆動画: ↓ 中国軍がチベットの巡礼者を無差別に撃ち殺す映像(非グロ/日本語字幕付) 産経新聞が同じ日に第一報を報じた後、22日には次のようなフォロー記事を書いているし、【夕刊JanJan】は19日に踏み込んだ記事を書いていた。 チベットは胡錦濤が弾圧により手柄を立てトップに駆け上がったかつての勤務地である。 チベット少年射殺は胡錦濤がチベットに残した置き土産の象徴である。 中国、和諧と逆行 思想・民族弾圧強める 【北京=福島香織】先の第16期中央委員会第6回総会(6中総会)で「和諧(わかい)(調和のとれた)社会」構築を打ち出した胡錦濤政権だが、今回のチベット亡命者射殺事件に象徴されているように、少数民族政策や思想統制は強化される傾向にあり、「和諧」と逆行する強権体質が浮き彫りになっている。 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が運営するチベット難民受け入れセンターによると、年間のチベット亡命者は約2500人。一方、中国公安省の発表によれば、2005年下半期から今年上半期にかけて国境で逮捕された不法出国者の総数は2459人。このうちチベット亡命者がどれほどの割合を占めるかは不明だが、今回のような事件は氷山の一角、という見方もある。 中国では今夏、ラサと青海省ゴルムドを結ぶ青蔵鉄道が開通、開通式には1989年のラサ暴動鎮圧の指揮をとった当時の自治区書記、胡錦濤国家主席が臨席し、中央のチベット支配強化を改めて印象づけた。このほか、米国に亡命したウイグル人権擁護家のラビア・カーディルさん(58)の新疆ウイグル自治区在住の息子ら3人が逮捕されるなど、ウイグル族への締め付けも目立っている。 6中総会で採択された「社会主義と和諧社会建設に関する若干の重大問題の決定」には、貧富の差の是正など弱者擁護がうたわれる一方、社会安定と秩序維持のために「国内外の敵対勢力」の取り締まり強化も盛り込まれた。国内敵対勢力にはチベットやウイグルの民族活動家や民主化運動家、宗教家らも含まれると解釈されており、「和諧」というソフトな言葉の響きの裏側には思想や民族の弾圧強化を伴う血生臭さも漂っているようだ。(産経新聞 2006年10月22日) 【関連記事】 【夕刊JanJan】疑惑ふかまるチベット人への発砲事件 |
2006/10/19 | ||
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先月30日、70人ほどのチベット人に対して、中国の国境警備隊が発砲するという事件がおきた。 【チョー・オユー山を登ろうとしていた英国人登山ガイドが「チベット国際キャンペーン」に語ったところによると、9月30日、60人の登山者がいたベースキャンプでその事件は起きた。中国兵が70人以上の無防備なチベット人を狙って銃撃し、1人の尼僧が銃弾を受けて死亡したようだったが、誰も助けられなかった】(IPSニュース「ネパールに逃げ込むチベットの人々」10月18日) 「チベット国際キャンペーン」(英文)はその後もこの問題について情報を追加しており、ユーチューブではルーマニアのTV局が撮影した映像を配信、アクセス数は14万を超えた。 新華社通信は事件を【「不法出国を図ろうとしたグループが、引き返すよう求めた当局の勧告に従わず集団で攻撃してきた」と説明。当局の銃撃で2人が負傷、うち1人が寒さと酸素不足のため死亡した】(朝日新聞)としているが、「チベット国際キャンペーン」(英文)などを見る限りでは、当局発表は信憑性が疑われる。 1956年のチベット動乱以後に特に深刻化したチベットの問題は、1970年代末以降チベット亡命政府が【中華人民共和国にも受け入れやすいよう、「完全なる独立」を取り下げ、「中国主権下の完全な自治」・「チベット全域を単位としたチベット人の自治行政単位の設定」などの主旨で妥協する提案を何度か行っているが、中華人民共和国側はこれを「形を変えた独立の主張」だとして拒否、交渉は停頓状態にある】(ウィキペディア) 今年7月1日には、青海省とラサを結ぶ「青蔵鉄道」が開業したが、それに先立ってインドのニューデリーでは、中国大使館への亡命チベット人らの抗議行動が行われた。 チベット亡命政府は【1998年の終わりに、中華人民共和国は人権宣言、人権規約及びその実施措置の3分野のすべてを含む国際権利章典に調印したが、中国国内でもチベット内においても実行からはまだ程遠い。日常生活での抗議を続けるチベット人に対し、そして、未来におけるチベット固有の文化の存続に対し、個人的・集団的権利の侵害は続いている】(現在のチベットの状況:普遍的人権)としており、欧米の政府やNGOは概して中国政府の長年の対応(チベット人を含む少数民族の人権抑圧問題など)に批判的である。 9月30日の発砲事件について、これまでのところ、アムネスティインターナショナル日本支部や、同チベットチームなど日本のNPO・NGOは公式の見解を表明していない模様だが、ダライ・ラマ14世の11月来日が予定されていることもあり、今後の動向が注目される。 (片町みどり) |