昨日(27日)の琉球新報には社会面6段を使った大見出しが踊った。
「基地負担の現状無視」、
「<PAC3 久間発言> 中部首長ら反発 配備反対を再度強調」
更に来月行われる知事選候補者のコメントも取り付けている。
「納得できない」 - 仲井真氏
「不安理解せず」 - 糸数氏
・・・と保革両候補とも琉球新報の大見出しにコメントを合わしている。
この地元紙の騒ぎようは、沖縄中が「久間発言」に怒り狂っているような印象を与える。
事の発端の「久間発言」とは。
久間章生防衛庁長官は26日午前の参院外交防衛委員会で、米軍パトリオット・ミサイル(PAC3)の沖縄配備について次のように述べていた。
「幸い沖縄については米軍がPAC3を置いてくれた。沖縄の方までは今のわが国の予算の中で追いつかない点を先にやってくれた。むしろ沖縄の人は喜んでもらいたいと私は思っている」
これに対して県幹部は「PAC3配備について沖縄県では誰も感謝する人はいない。むしろ問題があると言っている」と述べ、不快感を示したという。
「PAC3配備について沖縄県では誰も感謝する人はいない。」と断じる県幹部とは一体誰だろう。 ぜひ名前も報じて欲しいものだ。
同じ琉球新報の「声」欄で工房経営の城間さんは
≪反戦平和原理主義的な言動は県民の大意ではない。速やかに地対空誘導弾パトリオットを配備すべきである≫(市民団体と右翼団体)
と声無き声を張り上げている。
一握りの反戦原理主義者を代表する新聞の大見出しが民意でないことは「声なき声」の大多数の県民が承知している。
沖縄の地元二紙が偏向していることは当日記でも再三指摘しているが、選挙前の候補者が新聞の「論調」と異なるコメントを述べるのは大変な勇気が要る。
「踏み絵」を踏まされる心境だ。
革新候補で共産党、社民党推薦の糸数慶子氏が久間発言に「不安理解せず」と批判するのは分かるが、保守候補で自民党推薦の仲井真氏は「納得できない」と言う大見出しのコメントとはニュアンスの異なる微妙な本音を本文記事では語っている。
≪「発言を確認していないが、事実とすれば」と言葉を選んだ上で、「県民感情としては納得できない。『感謝せよ』と言われても、どういう意味か理解不能だ」と指摘。「もっと丁寧な説明がないといけない」と不満をにじませた。≫
うーん、ビミョウな言い回しだ。
「納得できない」の主語は仲井真氏ではなく、琉球新報の民意を代表する「県民感情」なのだ。
とすると知事候補としては新聞の言う県民感情に逆らえるはずも無い。
苦し紛れに「どういう意味か理解不能だ」、「もっと丁寧な説明がないといけない」と逃げの一手を打つ意外に術が無かったのだろう。
でも紙面には「納得できない」 - 仲井真氏、と見出しが大きく踊る。
他方、新聞と同じ論調の糸数氏のコメントは明快で歯切れがいい。
[県民の不安を、全く理解していない」
「軍事基地をより強力な武器で守ろうというのは、軍拡競争の発想だ。強行配備は、県民の不安をあおるだけで、平和と基地の整理縮小に逆行する」
これはまさに「声」欄で城間さんが言う「反戦平和原理主義的な言動」ではないか。
それに「軍事基地より強力な武器」って、もしかしてパトリオットのこと?
もう一度城間さんの言葉を借用しよう。
反戦平和原理主義的な言動は県民の大意ではない。
速やかに地対空誘導弾パトリオットを配備すべきである。
皮肉なのは同じ琉球新報の30面に載ったインタビュー囲み記事。
テレビの討論番組に中国代言者として顔なじみの朱建栄・東洋学園教授が、
新報記者の[パトリオット・ミサイルの配備は?」の問いに対して、
「パトリオットの早期配備、ミサイル防衛構想前倒し実施などは、日本に中国への一定の警戒心があるのは分かる。」、と中国への警戒心を持つことには理解を示している。
中国の日本に向けたミサイル配備や、沖縄近海の度重なる領海侵犯を考えると中国の代理人たる中国学者もパトリオット配備を「分かる」といわざるを得ないのだ。
だが、地元新聞報道にかかると「県民総意でミサイル反対」の印象となる。
もっとも朱教授、「もし(米軍再編などの狙いが)中国に向かってくるとしても、中国は軍事的に対抗しない戦略を取る・・・・もっと対話を求めていく。」とインタビュアーの顔色を読んだのか「反戦平和原理主義的発言」もしている。
「県民喜んでほしい」 PAC3沖縄配備で久間防衛庁長官
【東京】久間章生防衛庁長官は26日午前の参院外交防衛委員会で、米軍パトリオット・ミサイル(PAC3)の沖縄配備について、「幸い沖縄については米軍がPAC3を置いてくれた。沖縄の方までは今のわが国の予算の中で追いつかない点を先にやってくれた。むしろ沖縄の人は喜んでもらいたいと私は思っている」などと述べた。岡田直樹氏(自民)への答弁。 自衛隊のPAC3配備について久間長官は「ミサイル防衛はできるだけ前倒ししてやりたいという思いがある。そのため予算も2007年度で要求しているが、(PAC3配備は)07年の末になるだろう。しかし、私たちの気持ちとしては、できるだけ前倒しで、可能なものならばやらせたい」と述べ、ミサイル防衛体制の整備を急ぎたいとの考えを強調した。
◆「県内では誰も感謝してない」 県幹部が批判
久間長官の発言について県幹部は「PAC3配備について沖縄県では誰も感謝する人はいない。むしろ問題があると言っている」と述べ、不快感を示した。 さらに「県民と本土では完全に意識のズレがある。これはなかなか収まりがつかないかもしれない。いずれにせよ政府には説明が足りない」と、政府の姿勢を批判した。 (琉球新報10/26 16:05)