先だっての総選挙でもそうだったが、選挙のたびに目に付く「個人演説会」告知ポスター。大抵が(予定)候補者と他に適当な弁士が一緒に掲載されているのにお気づきだろうか。
公選法で、任期満了6ヶ月以内は“選挙活動”が禁止になる。しかし“政治活動”なら憲法で保障されている思想信条の自由あたるので、「演説会告知」という“政治活動”というわけだ。いわゆる“抜け道”。法律で何もかもは縛れない。聡い者が“抜け道”を作り出すのは世の常だ。
しかし、「選挙活動」か「政治活動」かの線引きは難しい。いくら「演説会告知」だと言っても、候補者の顔と名前がでかでかと、しかも6ヶ月も先の演説会の告知ということで選挙公示直前まで掲示され続けるというのが、選挙目的の「選挙活動」だというのは誰が見たって明らかだ。それだけでも滑稽でバカバカしいのに、(予定)候補者の写真や名前表示と同じくらいの扱いで別の適当な弁士が載せられていれば「選挙活動」とは言いがたいなどという、苦し紛れな「法解釈」もあるらしい。
衆議院では比例区、参議院では全国区というのがある。民意のより正確な反映、少数意見の尊重という意味では意義ある制度だ。
小選挙区、地方区では「公平性の担保」ということで配布できるビラ枚数に制限があり、選管交付の証紙を貼らないと配布できないのは周知のとおり。何万枚ものビラにせっせと証紙を貼る光景、それだけでも大変で滑稽ではあるが、まあ、やってやれないことはない。
では比例区、全国区はどうか。当然、数万枚程度のビラでは対象有権者に対して少なすぎる。かといって何十万、何百万枚の証紙を貼るというのも馬鹿げているということには、さすがに政治家もお役人も思い至ったようで別の方法を編み出した。その方法というのがまたウケる。
総選挙のとき、ある政党が街頭で選管認可の文言入りの“のぼり”を立てて比例区向けマニフェストを各戸配布していた。
聞くところによると、証紙の代わりに配布許可者を示す“のぼり”を交付し、その“のぼり”を持っているもの、およびその協力者だけがビラを配布できるということらしい。しかも配布要員は必ず“のぼり”が目に付く範囲でしか配ってはいけないというのだ。こんなもの、違反したところで取り締まりようもないと思うのだが。
なんという形式民主主義。「金のかからない選挙」が口実の“べからず集”=公職選挙法。まるで「お笑いのネタ帳」だ。
ダムに道路に、二束三文で叩き売られたハコ物に、金融バクチで大損こいたヤツらへの税金投入・・・、何兆円ものムダ遣いをし、規制緩和で雇用、生活をグチャグチャにしておきながら、ビラやポスター、訪問、街頭演説程度を滑稽なほど規制してどこに公平性があるというのだろうか。
国民は、バイアスのかかったテレビ、新聞報道、非常に部分的でしかない選挙公報、内輪で盛り上がっているだけの個人演説会、我田引水・自画自賛で参考にもならない政策ビラで表面的な政策比較をするしかない。今、世をあげて民主党フィーバーだけれど、民主党ってどうよ。所詮、「政党助成金」に寄りかかった「国営政党」。メンバーの主力は自民党崩れではないか。
昔は「立会演説会」という、少しは生身の政見比較ができる機会もあった。最近、青年会議所など民間団体主導で政党、候補者を一堂に会した「討論会」が企画されている。耳ざわりの良いことしか言わないに決まっている政党、候補者の言い分を、候補者同士や聴衆有権者もふくめた相互批判・討論にさらして見極めることのできるこうした機会をこそもっと増やすべきだ。そうすれば、勝手な自己主張のみで愚にもつかないビラやポスター、連呼など選挙でムダ金使う者など自然といなくなる。