●「子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査」
-世帯類型別にみた「子育て」、「就業」と「貧困問題」-
平成 24 年 2 月 29 日(水) 平成23年11月調査
独立行政法人 労働政策研究・研修機構(理事長 山口 浩一郎)
雇用戦略部門 副主任研究員 周 燕飛
調査結果のポイント
<保育サービスの不足が専業主婦世帯の貧困を引き起こす大きな理由>
専業主婦世帯の平均年収は、妻が「パート・アルバイト」として働く世帯より65万円ほど高い。一方、専業主婦世帯の相対的貧困率は、12.4%となっており、妻が「パート・アルバイト」の世帯より約4ポイントも高い。比較的裕福な専業主婦世帯が存在する一方で、貧困層でありながらも妻が何らかの事情で働けない専業主婦世帯も大勢いる。そのうち、「保育の手だてがない」ことが理由で働けない母親は全体の半数以上を占めている。
<ひとり親における子育ての難しさ>
父子世帯の父親5人に1人は平日のふだん子どもと過ごす時間が「1時間未満」となっているほか、夕食をともにできないという問題も深刻である。小学校以上の子どもを持つ母子世帯の母親8人に1人が、「子どもの不登校問題」を経験していた。無業母子世帯の母親の2割弱は、「わが子を虐待しているのではないか」、と思い悩んだことがある。
<ワーク・ライフ・コンフリクトの際に仕事を優先する傾向も>
仕事を持つ保護者に仕事と家庭生活のコンフリクトが起きる頻度をたずねたところ、「ほぼ毎日」と回答した保護者の割合は、母子世帯16.8%、父子世帯13.8%、ふたり親世帯(母親)7.6%となっている。また、ワークライフバランスが困難な場合、保護者は仕事を優先する傾向もうかがえる。多くの保護者は「仕事の時間が長すぎる」または「仕事で疲れ切ってしまった」ことが原因で家事と育児を十分に果たせなかったと回答している。
<母親の職業キャリアコースは「退職復帰型」がもっとも多い>
出産や育児等で一旦仕事をやめたものの、子育てが一段落してから再就職して働き続けている、いわゆる「退職復帰型」母親の割合は、母子世帯53.6%、ふたり親世帯35.3%となっている。一方、「一社継続型」(学校卒業後についた勤務先でずっと働き続けてきた)および「転職継続型」(転職経験はあるが、学校卒業後に働き続けてきた)というブランクの少ないキャリアコースを形成した母親の割合は、ふたり親世帯が39.4%で、母子世帯(32.5%)より7ポイント高くなっている。
<無業母子世帯の母親のメンタルヘルス問題はより深刻>
臨床心理学のCES-D うつ感情自己評価尺度の簡略版(7項目)を用いて保護者のメンタルヘルス状況を調べたところ、ひとり親、とくに無業母子世帯の母親におけるメンタルヘルスの問題が突出している。うつ傾向とみられる保護者の割合は、無業母子世帯34.0%、有業母子世帯19.0%、父子世帯12.7%、ふたり親世帯(母親)7%程度となっている。
<子育て世帯の社会保険料・税負担は重い>
子どものいる世帯の中位所得の半分、いわゆる「貧困ライン」以下の所得で暮らす貧困層の比率(以下「貧困率」)は、母子世帯は52.3%(可処分所得ベース)で突出して高い。一方、父子世帯とふたり親世帯の貧困率は、母子世帯より低いものの、税込所得ベースに比べて可処分所得ベースでは貧困率が逆に上昇しているという点では共通している。ふたり親世帯の貧困率は、税込所得ベース10.5%、可処分所得ベース18.3%となっている。父子世帯の貧困率も、可処分所得ベースは10.2%となっており、税込所得ベースの約2倍である。子どものいる世帯には、社会保険料や税負担は重くのしかかり、所得再分配による貧困軽減は、十分に機能していない可能性が高い。
<経済格差の世代間継承>
保護者自身の成育環境は、その後の経済状況に大きな影響を及ぼしている。保護者が成育期に「その親が生活保護を受けていたこと」や「両親が離婚」、「父親との死別」といった不利なことを経験した場合、その世帯の生活保護受給率が大きく上昇する。また、貧困率については、「10 代出産」、「中学校卒」、「離婚」といった経験を持つ者が顕著に高い。こうした貧困のリスク因子を持つ確率が、「両親の離婚」を経験した保護者(母親)により顕著に現れている。
<保護者の望む支援>
国には「保育園・学童保育の拡充」、会社には「就業時間の配慮」を望む声が強い。とくに「保育園等の拡充」について、ふたり親世帯の41.8%、母子世帯の27.6%、父子世帯の25.1%、いずれの世帯類型においても、多くの保護者は公的保育サービスが足りないと考えている。
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