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 政府の原発の将来のあり方についての方針が出された。
   「30年代ゼロ目標」
 しかし、その中を見ると、国民には「ゼロ」を強調したい、
 が原発推進をやめたくはないから再処理は続ける、もんじゅも動かす
 何か、そのうち、ほとぼりが冷めたら、その時の政権がまたどうにかするだろう、
 そんな雰囲気を感じる。

 新聞を見ると、東京・中日新聞が明確。中日の紙面も大特集なみ。    
  たとえば、

     使用済み核燃料から新たな核燃料をつくる再処理事業は不要になるにもかかわらず、続けることを決めた。
     原発の稼働は原則四十年に制限するが、安全が確認されれば期間内は「重要電源」として再稼働を認め、三〇年時点での原発依存度は実質的に15%になる。
     多くの国民が求めたすべての原発からの脱却を含め、三〇年までの稼働ゼロから大きく後退した。

 ただ、ネットでみると、河北新報が現地として厳しく指摘しているほか
 毎日新聞が詳しく乗せているので、興味深く、記録した、。
  たとえば、

     国内50基のうち、稼働しているのは関電大飯原発3、4号機のみ。
     28基はストレステスト1次評価が国に提出されているが、審査は完了していない。

     この日決まった戦略によると、政府は今後20年前後は原発に一定程度依存し、
     19日に発足する原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働する方針だ。
     だが、再稼働は自治体の理解を得にくく、安定電源にならない可能性がある。

 ところで、一昨日、16時55分に議会の委員会が終わって、東京へ向かった。
 昨日は、夜9時過ぎに家に戻った。

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●脱原発 国民意思から後退 「30年代ゼロ目標」決定
          (東京新聞)2012年9月15日
 政府は十四日、今後の原子力政策をめぐり、関係閣僚らによるエネルギー・環境会議を開き、二〇三〇年代の原発ゼロを明記した「革新的エネルギー・環境戦略」を決定した。
使用済み核燃料から新たな核燃料をつくる再処理事業は不要になるにもかかわらず、続けることを決めた。
原発の稼働は原則四十年に制限するが、安全が確認されれば期間内は「重要電源」として再稼働を認め、三〇年時点での原発依存度は実質的に15%になる。
多くの国民が求めたすべての原発からの脱却を含め、三〇年までの稼働ゼロから大きく後退した。

 戦略には判断の先送りや矛盾を抱える内容が多い。だが、野田佳彦首相は会議後、「見通せない将来について確定的なことを決めるのはむしろ無責任だ」と説明した。戦略は、近く国家戦略会議に報告し、閣議決定する。

 戦略は「原発に依存しない社会の一日も早い実現」を目指し「三〇年代にゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と表現した。

 原発の運用は▽四十年運転制限を厳格に適用▽原子力規制委員会で安全が確認されたものは「重要電源」として再稼働▽新設や増設はしない-ことを原則とした。

 二〇〇〇年代に入り運転を始めた中部電力浜岡5号機(静岡県)や北陸電力志賀2号機(石川県)など五基は、三九年時点で稼働四十年を迎えない。
エネ環会議議長の古川元久国家戦略担当相は「ゼロにする努力をする」と述べるにとどめ、廃炉の明言を避けた。中国電力島根3号機など建設中の原発も「個別のものは決めてない」と稼働に含みを残した。

 また、核燃料サイクル政策自体の判断も先送りにした。サイクルの中核となる高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)は、「年限を区切り使用済み核燃料処理の研究に使う」としたが、終了時期を定めなかった。

 使用済み核燃料再処理工場などサイクル関連施設を受け入れてきた青森県を「最終処分地にしないとの約束は厳守する」と強調。一〇年時点で発電電力量が千百億キロワット時だった再生可能エネルギーは、設置手続きの簡素化や送電網の強化などで三〇年までに三倍に拡大する計画を盛り込んだ。

 <革新的エネルギー・環境戦略> 東京電力福島第一原発事故を教訓に、原発に依存しない社会に向けた目標や方策をまとめた中長期的な指針。
今後のエネルギー、環境政策の柱となる。
政府はこの戦略をもとに電力システム改革戦略や、再生可能エネルギーの拡大策などを盛りこんだ「グリーン政策大綱」、新たな地球温暖化対策や、原子力関連の人材・技術の維持策を年末までにまとめる方針だ。


  ●政府、新エネ戦略決定 福島県民、本気度に疑問

            河北新報 2012年09月15日土曜日
 脱原発の未来は玉虫色だった。政府の新たなエネルギー戦略は原発ゼロを掲げる一方、実現時期は2030年代とあいまいな表現にとどまった。福島第1原発事故の被害を受けた福島県の人々は政府の「本気度」を疑っている。

 「次世代に負の遺産となる原発は不要だ」。政府が新戦略決定のプロセスとして8月に福島市で開いた意見聴取会で、30人の意見表明者のうち28人が早期の原発ゼロを求めた。その1人、同市の中野節夫さん(70)は新戦略を「原発ゼロのやる気と自信は本当にあるのか」といぶかる。

 政府はもともと「30年」の原発依存度として0%、15%、20~25%の3選択肢を示していた。「『30年代』は39年までで後退した印象だ。衆院選が近いから『原発ゼロ』を入れたかったのだろう」と中野さんは見る。

 3歳の時に長崎で被爆した体験を踏まえ、聴取会で「原爆被害は戦争だが、原発事故は電力事業が国民を苦しめる」と訴えた。今となっては「政府は聞く耳を持っていたのか」と思う。
 新戦略の議論過程で高レベル放射性廃棄物の最終処分問題や原子力をめぐる米国、英仏との関係に国民の理解が深まった。原発事故がなければ新戦略を描くことはあり得ず、中野さんは「事故の唯一の効能」と語った。

 政治色の強い「原発ゼロ」に事故被害者の思いは複雑だ。富岡町から大玉村の仮設住宅に避難する建設業山田久夫さん(64)は「政権交代したら原発推進に戻るのでないか」と不安を隠さない。
 「家族が散り散りになり、故郷で老後を過ごす夢も奪われた。原発ゼロは当然だ。私たち以外に犠牲者を出してならない」と語った。

 今も避難区域指定が解けず、住民が帰還できない原発立地町も「脱原発は当然」と受け止める。全町避難の続く大熊町の渡辺利綱町長は「使用済み燃料をどうするのか、廃炉ロードマップをどう作るのかの不安材料もある。政府は方向性を出してほしい」と要望した。
 
政府は原発に代わる電力の安定供給源を確保する責任を担う。県商工会議所連合会の瀬谷俊雄会長は「再生可能エネルギーの導入時期や実現可能性、電気料金の増大による産業への影響など現実的な課題への対応が必要だ」と注文を付けた。

◎東北電運転制限を懸念/燃料費の負担増必至
 政府が新たなエネルギー戦略として「2030年代の原発ゼロ」を決めた14日、東北電力は「極めて大きな課題があり、大変憂慮すべきものと受け止めている」と強い懸念を示した。新戦略には「40年の運転制限の厳格適用」や「新設・増設を行わない」ことも盛り込まれた。代替電源となる火力発電の燃料費など経営面での負担増は必至で、東北電は戦略見直しを求めていく方針だ。

 40年の運転制限による東北の原発の停止時期は図の通り。30年代の原発ゼロが実行されれば、東北電の女川3号機(宮城県女川町、石巻市)と東通1号機(青森県東通村)は稼働40年を待たずに廃炉となる。
 東北電と東京電力が予定する計3カ所の新設計画も実現不可能となり、既に着工した東京電力の東通1号機も建設中止に追い込まれる可能性がある。

 東北電の海輪誠社長は同日発表したコメントで、燃料費増大のほか電気料金上昇の可能性や原子力の人材確保などを「原発ゼロ」の課題に挙げた。政府には「燃料調達の安定性に優れ、発電で二酸化炭素を出さない原発は、安全確保を大前提に今後も活用することが必要」と戦略見直しを訴えた。

◎女川町長「混乱いつも地方に」/山形知事「卒原発の方向評価」
 政府が14日決めた将来の「原発ゼロ」政策について、東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の地元首長らは実現性を疑問視するなど批判的な見方を示した。一方、同原発の再稼働に否定的な吉村美栄子山形県知事は決定を評価した。

 女川町の須田善明町長は「実現までの具体的なプロセスが示されていない。選挙目当ての政策にも映る」と強調した。将来の地元経済や雇用への影響も懸念されることから「都市部に電気を供給してきたのに、混乱に巻き込まれるのはいつも地方の側だ」と苦言を呈した。

 女川原発については「まだ再稼働を議論する段階にない」と説明。ただ化石燃料への依存が不可欠となるとして「エネルギー小国の日本が、本当にゼロにできるだろうか」と、原発の必要性にも言及した。

 村井嘉浩宮城県知事も「安価で安定的、持続的な電力供給は重要」と指摘した。その上で政府には「原発をゼロにするのが本当に国民のためになるのか、しっかり検証を重ねながら慎重に進める必要がある」と求めた。

 隣の山形県のトップとして「卒原発」を提唱する吉村知事は「原発依存から卒業し、安心して暮らせる持続可能な社会をつくり上げていくべきだという、卒原発と同じ方向性を目指すもの」と政府決定を評価した。その上で再生可能エネルギー導入拡大に向け「具体的な政策を着実に推進してほしい」と期待した。

 【解説】政府が14日決定した新エネルギー戦略は、世論に後押しされる形で一応は「原発ゼロ」を盛り込んだものの、原発稼働が前提の核燃料サイクル政策は維持した。建設中の原発をどうするかなど解決の先送りも目立つ。説明し難い矛盾を内包したままでは単なる努力目標に終わりかねず、原発ゼロへの道は開けない。

 政府が当初示した原発ゼロ案は、使用済み核燃料を再処理するサイクル政策をやめ、地中廃棄に転換するとしていた。

 しかし、再処理を前提に各原発から使用済み燃料を受け入れている青森県や六ケ所村は猛反発。返送も辞さない構えで、そうなれば前倒しの原発停止は避けられない。サイクル維持は青森側が求めた「現実的な対応」に配慮した苦肉の策だが、本末転倒で無理がある。

 再処理して取り出すプルトニウムを消費する原発や高速増殖炉「もんじゅ」がなくなるのに、使い道のない核兵器の原料を生産し続ければ国際的な批判を招く。原発ゼロによる電力料金高騰が懸念される中で、地中廃棄よりも割高な再処理費用をさらに上乗せするのも不可解だ。

 「核のごみ」を青森だけに押しつけ、課題解決を先送りしてきたツケでもある。本気で原発ゼロを目指すなら、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の処分問題は避けて通れず、全国各地で受け入れを促す覚悟が問われている。
 青森の問題もそうだが、原子力事故で最大の被害を受ける立地地域が原子力施設の維持を望み、恩恵を受ける電力消費地が「NO」を声高に叫ぶ構図が浮き彫りになっている。こうした逆転現象はやるせなく、異様でもある。
 原子力政策は、経済的利益と引き換えに迷惑施設を過疎地に押しやって成り立ってきた。その根幹にある地域格差に真剣に向き合う時だ。

 原子力に依存せざるをえない地域の構造転換策を示すのは、エネルギー安定供給や環境対策などと等しく、原発ゼロへの不可欠な道筋と言える。国策として原子力を進めた以上、それは国の責務だ。(東京支社・石川威一郎)


●クローズアップ2012:原発ゼロ決定 核燃処理、重い課題
           毎日新聞 2012年09月15日
 東京電力福島第1原発事故から1年半。政府は14日、エネルギー政策のかじを切り、「2030年代の原発稼働ゼロ」という目標を打ち出した。
ただ、実現の道筋が明確に描けているわけではない。課題も次々に浮かび上がる。
「脱原発」を望む国民の声と、原発立地県などに広がる不安。そして日本の原発に深く関与してきた米国の懸念−−。目標を達成するため、政府は難題を解く責任を負っている。

 ◇矛盾露呈に内外反発
 戦略の取りまとめが迫っていた11日、枝野幸男経済産業相、古川元久国家戦略担当相、細野豪志原発事故担当相、民主党の仙谷由人政調会長代行、斎藤勁官房副長官が東京都内のホテルに集まった。

 3閣僚に2人が加わる、この会合は「3プラス2」と呼ばれ、関西電力大飯原発の再稼働問題など原子力政策を実質的に仕切ってきた。11日は大詰めの協議だったが、原発活用派の仙谷氏は不満そうにほとんど発言しなかった。政府方針は既に決まっていたからだ。

 野田佳彦首相が「原発ゼロ」にかじを切ったのは8月6日。広島原爆の日だった。首相は、原発依存ゼロの場合の課題を整理するよう枝野氏らに指示。政府関係者は「この時点で首相の気持ちは固まっていた」と明かす。

 首相周辺によると、首相は早い段階から「将来的なゼロは言わないとな」と周囲に漏らしていたが、国民向け意見聴取会などで支持を集めた「30年の原発ゼロ」には、「本当に大丈夫なのか」と懐疑的だった。
広島原爆の日の直前、首相公邸を繰り返し訪れて首相を説得したのが「原発ゼロ」が持論の枝野氏だった。
古川氏も決断を促し、最終的に、ゼロを打ち出しつつ首相の懸念に応えて「30年代」と時期に幅を持たせることで歩み寄った。

 ただ、難題は残っていた。13日夜には枝野、古川両氏らが都内のホテルで2時間以上にわたって協議。最終的な取りまとめは14日午前までずれ込んだ。

 新たな戦略は30年代に「原発ゼロ」としつつ、使用済み核燃料を再処理して再び利用する核燃料サイクルの継続を打ち出した。
再処理を前提に使用済み燃料を受け入れている青森県側への配慮だ。


 一方、再処理で発生するプルトニウムは核兵器に転用できることから、米国は「原発ゼロ」でプルトニウムが蓄積されていくことを問題視した。政府は、この矛盾にどう向き合うかに直面した。

 政府は12日、急きょ、長島昭久首相補佐官と大串博志内閣府政務官を米国に派遣。2人は複数の政府関係者らと接触したが、米国側の納得は得られなかった。14日午後に帰国した長島補佐官は記者団に「1回で済む話ではない。専門家を含めて議論を深めていくことになった」と問題解消の難しさを認めた。

米側は、原発の燃料とする前提で日本がプルトニウムを取り出すことを認めた「日米原子力協定」に反し、これを認めれば、イランなどにプルトニウム生産の口実を与えてしまうとの懸念を持っている。東芝が米ウェスチングハウスを傘下に収めるなど日米の原発メーカーは密接に結びついており、日本が「原発ゼロ」を選択すれば、米国の原子力産業にも影響を与えかねない。

 米国に配慮して再処理を断念すれば、青森県側は、保管している使用済み燃料を各原発に返す構え。青森と米国の意向を両立させる妙案はない。
「関係自治体や国際社会とコミュニケーションを図りつつ、責任を持って議論する」。政府は、戦略にこう書くのが精いっぱいだった。
【丸山進、笈田直樹、小山由宇】

 ◇再稼働、八方ふさがり もんじゅ「高速増殖」実質断念
 「莫大(ばくだい)な金をかけて安全評価(ストレステスト)をしたのに、はしごを外された」。原発ゼロ明記に、関西電力の関係者は怒りを隠さない。
国内50基のうち、稼働しているのは関電大飯原発3、4号機のみ。28基はストレステスト1次評価が国に提出されているが、審査は完了していない。

 この日決まった戦略によると、政府は今後20年前後は原発に一定程度依存し、19日に発足する原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働する方針だ。だが、再稼働は自治体の理解を得にくく、安定電源にならない可能性がある。

規制委では、ストレステストの扱いを含め、再稼働の可否を判断する仕組みを見直す。
根拠となる安全基準の法制化は発足から10カ月程度かかるとみられる。
原発の直下や周辺にある断層の問題も浮上。北陸電力志賀原発など6施設は再調査を求められている。事業者の調査結果が出るのは11〜3月になる。


 さらに焦点となるのが、プルトニウムを混ぜたMOX燃料を一部使うプルサーマル炉だ。戦略では、核燃料サイクルについて、使用済み核燃料の再処理を堅持
。再処理で出るプルトニウムをプルサーマル炉で消費しなければ、プルトニウムを無用に増やしてしまう。


 プルサーマル炉は現在、九州電力玄海原発3号機など3基のみ。
全燃料をMOX燃料とするJパワー(電源開発)の大間原発が建設中だが、「新増設しない」との原則に適用されるかは「検討課題」(内閣官房)という。
使用済みMOX燃料の実用的な処理方法は未開発で、立地自治体の理解を得るのは難しいとみられる。


核燃料サイクルのもう一つの要の高速増殖原型炉「もんじゅ」は、燃料となるプルトニウムを生み出しながら発電する本来の目的は事実上、断念。
プルトニウムなど寿命の長い放射性物質を、寿命の短い放射性物質や放射線を出さない物質に変えて、廃棄物を減らす研究に、期間限定で使う。


運営する日本原子力研究開発機構によると、この研究は高速中性子を利用するもんじゅの特徴を生かし、震災前から米仏と計画。
もんじゅの中島文明副所長は「放射性廃棄物の減量は国際的に求められており、もんじゅは有力な手段」と話す。【岡田英、西川拓】


●ネルギー・環境戦略:「30年代に原発ゼロ」目標決定(その1) 再生エネ普及カギ
             毎日新聞 2012年09月15日
 ◇太陽光、風力、送電網 投資122兆円、大幅省エネと併用
 政府は14日、エネルギー・環境会議を開き、「30年代の原発稼働ゼロ」目標を決定。国内で原発が営業発電を開始した1966年以来、46年間続いてきた原発依存型のエネルギー政策の転換を初めて宣言した。「脱原発依存」を求める世論に背中を押された形だが、政府目標の達成までには多くの難題が立ちはだかる。国民の生活水準とのバランスを取りながら、いかに代替エネルギーを確立していくのか。経済活動への影響をどう緩和するのか。新エネルギー政策の課題を検証した。

 将来の原発ゼロ実現の最大のカギを握るのが、太陽光、風力など再生可能エネルギー発電と省エネの促進だ。ただ、送電網の整備や用地確保、強制的な規制の実施など、実現に向けたハードルは低くない。関連ビジネスの成長は期待できるものの、必要投資額は30年までに122兆円程度に上るとされ、電気料金などのコスト上昇で、家計や中小を含めた企業経営を圧迫することは避けられない。

 国内の総発電量に占める再生エネ発電の割合比率は10年で約10%だが、原発を代替するには30年時点で30%程度に高める必要がある。現在の再生エネは多額の建設費や工事期間がかかる大型水力発電が9割近くを占めており、これを除くと1%程度に過ぎない。政府案では、太陽光は30年までに10年実績の38億キロワット時(原発0・5基分に相当)から、17倍の666億キロワット時、風力は同様に43億キロワット時から15倍にそれぞれ増やす必要がある。

具体的には、住宅用太陽光なら最大1000万戸程度への設置が必要だ。1戸あたりの標準的な設置費用は約200万円だが、現在は購入時に約15万円の補助金や余剰電力を電力会社が買い取る制度があるため、10年程度で費用回収が可能とされる。現在太陽光を導入している家庭は約100万戸ある。毎年約40万戸ある新築一戸建てと古い耐震基準の住宅の建て替え需要を考慮すれば、まったく実現不可能とは言えないが、設置を義務づける必要がありそうだ。

 一方、風力の場合は、東京都の1・6倍の面積に発電施設を設置することが求められる。ただ、風力は発電に適した地域が北海道や東北の一部に限られる。東北・北海道では電力需要が少ないため、需要の多い首都圏などに電気を送る必要があり、送電網の整備や用地買収、環境面への配慮が不可欠だ。また、欧州に比べて導入が遅れている洋上風力は10年代半ばから本格的に実用化を開始するが、漁業権の調整も課題となる。太陽光、風力とも天候や季節に左右されがちで、電気をためておく蓄電池の大幅な性能向上も必須だ。

 省エネは10年比で19%の電力消費量の削減が求められている。

 電力を効率的に利用する次世代送電網(スマートグリッド)の普及が前提となるほか、現行の省エネ基準以上の断熱を新築住宅では100%(現状約40%)、既存ビルでは8割(同20%)導入するほか、▽LEDなど高効率照明の100%導入(同20%)▽家庭用燃料電池530万台を含む高効率給湯器を9割導入(同10%)−−など、家庭・企業両部門での抜本的な取り組みが不可欠。政府による支援強化や強制的な規制措置は避けられない見通しだ。

 政府は今年7月1日から、電力会社に再生エネ発電の全量購入を義務づける「固定価格買い取り制度」をスタートさせた。太陽光の買い取り価格は1キロワット時あたり42円で、専門家の間では「30円台でも事業者の採算は合う」との声もあったが、導入促進のため高めに設定。このため、利益を見込んだ新規参入が相次いでいる。

 全国で大規模太陽光発電(メガソーラー)の建設計画を進めるソフトバンクの孫正義社長は「日本は自然エネルギーの宝庫。技術的能力も十分ある」と意気揚々だ。

 ただ、買い取り費用は電気料金に上乗せされ、家庭や企業などが負担することになる。電気料金7000円の標準的な家庭の場合、12年度は月平均で87円上乗せされる。買い取り条件に変更がなければ17年度には400円まで上昇するとの試算もある。

 しかも、これには、電力会社が自身で負担する送電網の整備費や税金でまかなう国の補助金などは含まれていない。政府によると30年までの投資額は再生エネは38兆円、省エネは84兆円で、電気料金や税金などを通じたトータルの国民負担は大幅に増えそうだ。

 また、仮に、再生エネが想定通り導入できなければ、電力不足を補うために割高な火力発電を増やさざるを得なくなる。今後、国民生活や経済活動への影響を抑えながら、再生エネの大幅導入をいかに現実的なものにしていくか。消費増税などで国民負担が増す中、実現可能な制度設計が求められる。

 ◇温室ガス、削減目標引き下げへ
 政府の「原発ゼロ」の方針決定で、日本の国際公約「温室効果ガスを20年に90年比25%削減」は達成不可能となった。

国際社会は昨年末、国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)で12年に終わる京都議定書後の新枠組みを15年までに採択し、20年以降に発効することを合意した。年末のCOP18に向け、新枠組みに向けた議論が始まったが、各国の削減目標の引き上げを巡り、先進国と途上国の間で意見の対立は深刻化するばかりだ。

 そんな中で日本は削減目標の引き上げという新枠組みの全体的な議論は支持しながら、自身の削減目標は引き下げようとしている。9月にバンコクで開かれた締約国の会合に参加した世界自然保護基金(WWF)ジャパンの小西雅子気候変動プロジェクトリーダーは、「(国際公約撤回は)国際社会から受け入れられる雰囲気ではない。新枠組みの議論を前進させるためには、先進国が責任をきちんと果たすことが求められる。日本が目標を大幅に引き下げれば、世界が協力しての温暖化交渉に著しく悪影響を及ぼし、発言力も失う」と指摘する。

 一方、細野豪志環境相は「COP18までには考え方をまとめる」と述べるだけで、戦略は全く見えない。

 ◇LNG依存、コスト高 割安シェールガスに期待
 政府の「原発ゼロ」シナリオで、発電量の多くを依存することになるのが火力発電だ。電力各社は割高な液化天然ガス(LNG)による発電を強いられ、燃料費の増加をコスト削減で補えなければ、東京電力以外の電力会社にも電気料金値上げが波及することは避けられない。家計や企業の負担は一段と重くなる。

 資源エネルギー庁によると、10年度の国内発電電力量全体に占める火力の比率は約62%。内訳は▽LNG29・3%▽石炭25・0%▽石油7・5%だ。石油は割高な上に9割近くを政情不安定な中東に依存するなど調達リスクが高く、石炭は安価だが発電時のCO2排出量が多い。このため、調達先が分散しCO2排出量も少ないLNGが主流となっており、20年度までに新設される火力発電所の9割はLNG火力だ。「原発ゼロ」の下、LNG依存はさらに強まるとみられる。

 問題は割高な燃料価格だ。近隣に大規模ガス田がなく、天然ガス調達を輸入に頼る日本は、パイプラインが整った米国などに比べて液化と輸送のコストが余計にかかる。その上、原油価格と連動した長期契約が中心で「調達価格の大幅な低下は当面見込みづらい」(エネ庁幹部)のが実情。国際エネルギー機関(IEA)の予測では、日本向けLNG価格は、10年の百万BTU(英国熱量単位)あたり11ドルから30年代にかけ14〜15ドル程度まで右肩上がりが続く見通しだ。

 日本は既に世界のLNG輸入量の3割超を占める世界最大の輸入国。東日本大震災後、原発停止で火力の比率が高まり、11年の輸入量は前年比12%増の7850万トンに拡大した。価格は今年5月ごろに18ドル前後と震災前の最大1・6倍に跳ね上がった。12年1〜6月のLNG輸入総額は前年同期比約1・5倍に増え、貿易収支は半期ベースで過去最悪の赤字を計上。恒常的な貿易赤字に落ち込む主因となっている。

 一方、電力10社のLNG消費量は11年度に5289万トンで、過去最多だった07年度(4192万トン)を大幅に上回った。燃料費増加が直撃し、中国電力と沖縄電力を除く8社が12年3月期連結決算で最終(当期)赤字を計上。「原発がなければ産ガス国に足元を見られ、調達価格はさらに上がる」(電力大手首脳)との見方もあり、電力各社の一斉値上げが現実味を帯びてくる。

 こうした中、注目を集めるのが米国産の割安な「シェールガス」だ。頁岩(けつがん)層と呼ばれる岩盤に含まれ、採掘技術が確立した00年代半ば以降に生産が拡大。現在の技術で東京ドーム約1800万個分の採掘が可能とされる。豊富な生産量を背景に米国内の天然ガス価格は現在2ドル台と日本の5分の1程度。米国からLNGを輸入できれば電気料金の値下げも期待される。

 既に日本の商社や電力、ガス会社などは米国産シェールガスの獲得に動いている。

 ただ、米国は「エネルギー安全保障上、重要な安定調達先になりうる」(経済産業省幹部)半面、天然ガスの輸出を原則として自由貿易協定(FTA)締結国に限定。非締結国の日本への輸出は現時点でハードルが高く、日本が実際にどの程度輸入できるかは未知数だ。

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 この特集は、藤野基文、篠田航一、久田宏、種市房子、宮島寛、小倉祥徳、和田憲二、杣谷健太が担当しました。


●エネルギー・環境戦略:「30年代に原発ゼロ」目標決定(その2止) 新産業創出に期待
         毎日新聞 2012年09月15日 
 ◇HV、EVなど柱 空洞化加速に対処
 「原発ゼロ」を目指す中で、政府は電力供給の不足を火力や再生可能エネルギーの比率を増やすことで補おうとしている。火力発電に必要な燃料費の増加や再生エネの固定価格買い取り制度への負担は、電気料金の値上げを招くことになり、電力を大量に消費する製造業には強い逆風となる。長引く円高や経済のグローバル化で製造業の海外移転が進んでいるが、一層の空洞化を招きかねない。「制約を逆に成長のバネに変える」(古川元久国家戦略担当相)と政府は原発ゼロを踏まえた成長戦略を描くが、実現はまだ見通せない。

 「電気料金の値上げが全国に波及すれば、鉄鋼業界全体への影響は甚大だ。鋳造業や電炉業にとって廃業勧告に等しい」。鉄鋼関連の業界団体の代表者が先月29日、経済産業省を訪れて窮状を訴えた。金属や鉄スクラップを電気で生じた熱によって溶解する鋳造業や電炉業は、生産コストに占める電気料金の比率が高く、これ以上の料金の上昇は「日本での事業継続が困難になる」と警鐘を鳴らす。

 それ以外の製造業でも影響は避けられない。

 日本総合研究所の藤波匠主任研究員は「製造業は設備投資を国内で行うかどうかを判断する際、電気料金の違いで海外を選びかねない」と、国内産業の空洞化進展の可能性を指摘する。経団連が今年4月に一部の会員会社を対象に実施したアンケート調査でも、「電気料金の上昇によって3分の1の製造業が海外設備への投資を増加させる」と回答した。

 国内の産業空洞化にどう立ち向かうか。政府が用意している処方箋は、電力制約を逆手に取った省エネルギー分野で新産業を起こすとの内容。産業転換で国内に新たな雇用を生み出し、製品や技術を輸出することで海外からも収益を上げるというものだ。

政府が「重要プロジェクト」と位置付けているのは、電気だけでなく石油なども含めた総合的な省エネルギーの推進だ。ハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)などの次世代自動車のさらなる性能向上と電力需給ピークの抑制に貢献する蓄電池の大型化・高性能化が大きな二つの柱となる。新興国も含めて、世界市場はいずれも拡大しており、蓄電池では「20年の世界シェアで5割を日本勢が獲得する」との意欲的な目標を掲げ、日本の存在感を再び高めようともくろむ。

 ただ、いずれの分野も海外勢の追い上げは激しい。世界で普及させるには規格の統一が必要だが、EV向けの急速充電規格は、日本勢と米独8社の2陣営が主導権争いをしており、中国も独自規格の採用に踏み切っている。蓄電池でも国際的な規格作りが進んでおり、国際標準がどう決まり、それにどう対応するかがカギになる。

 ◇技術継承に工夫を 「廃炉」ビジネス、どう確立
 政府は「原発ゼロ」の方針を決めたが、54基ある既存原発(福島第1原発を含む)を全基解体するには最低でも数十年の長い年月が必要だ。廃炉を着実に進めるためには原発技術の維持・継承が不可欠で、先細りする業界に若い世代を集める工夫が課題となる。

 「原子力がゼロになるとして、どうやって技術を残すのか。福島第1原発を40年近くかけて廃炉にするための技術者確保は極めて重要。認識が甘すぎる」。エネルギー政策論議が佳境を迎えた8月21日、細野豪志原発事故担当相は会見で語気を強めてそう言った。

 福島第1原発は炉心溶融(メルトダウン)の結果、核燃料が原子炉圧力容器外の物体と混ざり合ったまま固まっている状態とみられ、それらを取り出す技術は現状では確立できていない。政府と東京電力は取り出し技術などの確立を急ぎ、最大40年かけて廃炉を終える目標だが、廃炉には事故を起こしていない原発でも1基20〜30年程度かかるとされるだけに「40年での廃炉完了は希望的観測」(原子力損害賠償支援機構幹部)というのが実態だ。現役技術者だけで完結できる作業ではなく、数世代にわたる技術の継承が必要になる。

 しかし足元では既に原子力からの学生離れが起き始めている。文部科学省によると全国に11ある大学・大学院の原子力関係学科・専攻への志願者数は12年度、前年度比1割減の733人に。11年度開催された原子力関係企業の合同就職説明会に至っては、就職難にもかかわらず来場者数が前年度約4分の1の496人に激減した。説明会に参加した原子炉メーカー幹部は「廃炉しか仕事のない、夢のない業界に好んで進もうとする学生なんていない」と断じた。

 震災当時は定期検査中で発電していなかった福島第1原発4号機まで水素爆発を起こしたように、原発は止めるだけで危険をなくせるわけではない。使用済み核燃料の半永久的な管理も必要で、「廃炉」をいかにして新ビジネスモデルとして確立させるかが焦点になりそうだ。

 ◇歳入減に募る危機感 立地自治体、支援要請活発化も
 東京電力福島第1原発事故後、村長自らが村内にある日本原子力発電東海第2原発の廃炉を訴えた茨城県東海村。立地自治体にもかかわらず脱原発を訴えた自治体として注目されたが、実際には脱原発への道のりは容易ではない。

10年度の村の歳入170億円(一般会計決算ベース)のうち、電源立地地域対策交付金は11億9500万円を占め、村民の3分の1は原子力関連の仕事に携わっているとされる。村上達也村長は廃炉による経済的影響について「電源交付金がなくなれば、ぐんと(歳入は)減る」と認める。また従来「国が『脱原発依存』を打ち出している以上、激変緩和策として財政支援をすべきだ」として、原子力からのエネルギー転換を支援する新法制定を国に求めてきた。

 村上村長の念頭にあるのは、1961年に制定された「産炭地域振興臨時措置法」。主要エネルギー源が石炭から石油に移行して閉山が相次いだ産炭地に、税制優遇・財政支援する仕組みを作った。

 09年度に原子力や水力など発電所の立地する道府県と市町村に対して支払われた電源立地地域対策交付金は約937億円。資源エネルギー庁は「発電所立地への理解を図るため」として、使途を「公共施設や住民福祉に資する事業」と幅広く認める。立地自治体では、道路整備や企業誘致広報費に充当するなど貴重な財源になってきた。原発ゼロへの転換で、立地自治体では「歳入源は確保されるのか」という強い危機感が広がっている。

 エネルギー政策の転換による自治体の財政悪化では、破綻した北海道夕張市の記憶が生々しい。衰退した炭鉱に代わる新たな歳入源を見いだせなかったことが財政悪化の主な原因だった。

 国の方針が定まらない中、これまで静観していた立地自治体。今後は、東海村同様「国の責任においてエネルギー政策を転換した」として新たな仕組みの財政支援を求める動きが活発化することが予想される。しかし、1000兆円近い累積債務を抱える政府が、新たな税源を捻出するのは難しいのが実情。

東海村の財政担当者は「うちは違うが、原発のみに財政を依存する立地自治体もある。エネルギー政策転換後も立地自治体が自立できるよう国が支援する制度設計をしないと第二の夕張が生まれる」と懸念を示す。

 ◇「2022年、脱原発」 送電網整備立ち往生/料金値上げ 試行錯誤続くドイツ
 ドイツは福島第1原発の事故後、国内17基の原発を2022年までに順次停止する「脱原発」を決めた。その代替措置として、電力消費量の20%を占める再生可能エネルギーの普及を急ぎ、50年までに割合を80%まで高める方針だ。

 特に現在8%を占める「風力」への期待は大きいが、約2万基の風車が回る陸上は既に満杯のため、北海・バルト海の6カ所で洋上風力発電所を稼働させ、さらに27カ所の建設を急ぐ。

 課題は送電網の整備だ。海がある北部から産業拠点が集中する南部まで、20年ごろまでに国内全土で全長約3600キロの送電網を急ピッチで増設しなくてはならない。だが現在、東部ウッカーマルクなどドイツ各地で反対運動が起き、年間わずか20〜35キロ程度しか進んでいない。残り10年で「原発ゼロ」を達成するには、課題は山積だ。

 ウッカーマルク地方の丘陵地帯には、のんびり草をはむ放牧牛の背後に、旧東独時代に建設された高圧送電線の鉄塔が立つ。送電会社は、現在27メートルの鉄塔を今後2倍の高さにし、新たな高圧線を増設する計画だが、反対運動で建設事業は立ち往生している。

 「電磁波による健康被害も懸念され、自然破壊も進む。高圧線は地下に埋めるべきだ」。反対運動のリーダーで元教師のハルトムート・リントナーさん(66)は訴える。送電会社側はコスト増を理由に「埋設」を拒否し、住民側との対立が続いている。

ドイツでは、消費者の負担増も問題になっている。政府は太陽光などで発電した電気を電力会社が固定価格で買い取る制度を00年に導入。一般家庭などで発電パネルの取り付けが進み、11年の新規導入量は7500メガワットと06年の9倍に達した。だが、買い取り費用は電気料金値上げの形で消費者の負担増につながり、00年には1世帯で月平均42ユーロ(約4200円)だった電気料金が、今年は75ユーロ(約7500円)まで上昇。このため政府は今年、買い取り価格の引き下げを決めた。

 「脱原発は未来への大きなチャンス」。昨年5月、高らかにこう宣言したメルケル首相は、1年後の今年5月、ギリシャ神話の英雄があまりに多くの難題に直面した故事に例え、「(脱原発は)まるでヘラクレスの課題だ」とその困難さを嘆いた。「原発ゼロ」を選択したドイツの試行錯誤は続く。


●エネルギー・環境戦略:「30年代原発ゼロ」決定 識者の話
          毎日新聞 2012年09月15日
 ◇状況に応じて柔軟に見直しを−−井熊均・日本総研創発戦略センター所長
 「原発ゼロ」という言葉が独り歩きしているが、「40年運転制限の厳格適用」「原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働」「原発の新増設はしない」の3原則は国民的議論を反映した成果と言え、評価できる。

 新戦略が想定する再生可能エネルギーの大量導入や、IT(情報技術)を用いたエネルギーの効率的な制御による省エネといった方向性も決して間違っていない。この分野は新興国などでもニーズが高く、原発など既存の大規模電源を推進するよりも新たな産業が生まれる余地は大きい。

 2030年のエネルギー社会を現時点で描くのは限界がある。状況変化に応じて柔軟に見直していけばいい。

 ◇廃炉に必要な技術、維持できず−−澤昭裕・21世紀政策研究所研究主幹
 選挙を意識したのだろうが、あまりに拙速な判断だ。原発ゼロになるのは30年代だといっても、技術は急速に失われる。夢のない業界に進んで就職する若者はおらず、現役の技術者にも転職先を探す人が出てくるだろう。廃炉に必要な技術の維持もままならなくなる心配がある。

 近い将来停止する原発のために、電力会社は数千億円もの巨額な安全対策費用を調達できるだろうか。電気代は大幅に上昇し、電力不足も解消されず、生産拠点の海外流出が加速することになりかねない。せめて今後国会に提出する関連法案には、数年後の見直し規定を盛り込み、原発ゼロの弊害が顕在化した時に備えるべきだ。

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●エネルギー・環境戦略:「30年代、原発ゼロ」 デモ参加者「遅い」 官邸前、不信感あらわ
     毎日新聞 2012年09月15日
 政府の「30年代原発ゼロ」戦略を、金曜日恒例となった反原発行動の参加者たちはどう見たのか。東京・首相官邸前などで14日夜、感想を尋ねると「だまされるな」「今すぐ原発をなくせ」という答えが返ってきた。【川崎桂吾、馬場直子、春増翔太】

 「市民の力で政府から『原発ゼロ』という言葉を引き出すことができたことは大きい」。抗議行動のリーダーの一人でイラストレーターのミサオ・レッドウルフさん(ペンネーム)はこう評価しながらも「(国内で唯一稼働中の)大飯原発の即時停止を求めている私たちにとって本当の勝利には遠い」と話した。

 この日の行動は午後6時にスタート。「原発いらない」「原発やめろ」のシュプレヒコールが続く。「一時期より人が減った」(参加者)とはいえ、この日も家族連れや会社帰りのサラリーマンらの姿が目立つ。

 「ごまかされているように思えてならない」と話すのは千葉市の男性会社員(36)。3回目のこの日、初めて妻(38)と娘(4)を伴った。男性は「本当に実現できるのか。脱原発の声を鎮めるためのその場しのぎで、選挙対策に思える」と政府への不信感をあらわにした。

 官邸前から霞が関への歩道では、参加者がプラカードや旗を持ってアピール。東京都杉並区の大学2年の鈴木裕輝さん(21)は「今すぐ原発を止めてほしいというのが自分の思い」ときっぱり。
東京都中野区のフリーの編集者、阿部進さん(60)は「首相はとりあえず脱原発を言おうという程度では。今すぐ原発から脱却すると言うのが次世代への責務だ」と語った。

 行動は再稼働を巡る閣僚会合を前にした3月下旬、市民団体「首都圏反原発連合」の呼び掛けで始まった。
官邸に向かってひたすら「再稼働反対」「原発いらない」と声を上げるスタイル。ツ
イッターなどで広まり、参加者は当初の約300人から最大約20万人(主催者発表)に激増し、全国30以上の都道府県にも飛び火した。

7月から仙台市中心部でデモを続けている「脱原発みやぎ金曜デモ」事務局の館脇章宏さん(47)は「脱原発を政府が明確に打ち出した意味は大きいが、30年代の設定は遅すぎる」との見方。甲府市内であった抗議行動「甲府でもやるじゃん」に参加した約70人の一人、佐藤袿子さん(64)=山梨県甲斐市=は「政府は核燃料再処理事業も維持すると言っており、信用できない。本気ならもっと早く廃止を」と話した。

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 ◆原発を巡る市民の動き◆

3月29日 反原発市民団体「首都圏反原発連合」の呼び掛けで官邸前で抗議行動を初開催

5月 5日 国内で稼働する原発がゼロに

6月29日 首相官邸前での抗議行動に過去最多の約20万人(主催者発表)が参加。抗議に集まった市民のどよめきを聞いた野田佳彦首相が「大きな音だね」と話したと伝わり、反発も

7月 1日 関西電力大飯原発3号機が再稼働。各地で反対運動

  16日 東京・代々木公園で「さようなら原発10万人集会」。大江健三郎さんや坂本龍一さんが呼び掛け、主催者発表で約17万人(警察調べ約7万5000人)が参加

  20日 官邸前抗議行動に鳩山由紀夫元首相が参加。党内から批判も

  29日 東京都内で大規模デモ行進。参加者が国会議事堂周辺約1.3キロを取り囲んだ

8月22日 野田首相が官邸で市民団体代表者11人と面会。議論は平行線に

9月14日 政府が「30年代の原発ゼロ」の目標を決定




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