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てらまち・ねっと



 日本銀行は昨日1日の金融政策決定会合で、政策目標の達成を先送りした。
 安倍氏が異例の人事で日銀総裁に黒田氏を指名。最初は、世界経済の回復に乗って、調子良かったかに見えた。しかし、結局、日本の経済は、大企業は回復したけれど、国民の暮らしは厳しさ増すばかり。

 9月の日銀の会議後、黒田路線は厳しく批判された。しかし、本人は強気。今回は、やっと目標の達成ができないことを認めたカタチ。
 目標達成は「かなり長期化する」。

 ということで、昨日の報告を見てから、9月の各界の批判を整理しておく。
 例えば朝日9月21日★≪こんな「緩和の罠(わな)」から逃れたい、というのが日銀の本音だろう。長期金利の目標を設けた政策修正は、その泥沼から抜け出す一歩となるか。ポイントは、異次元緩和の大黒柱「量的緩和」を今後、事実上縮小できるかどうかである。≫

 毎日9月22日★≪社説 黒田日銀の転換 あの約束は何だったか/幻の「2年で2%」≫
 まぐまぐニュース9月21日★≪アベノミクスはなぜ「つまらない金融政策」ばかりになったのか?/もう限界だ。マイナス金利が招いた、これだけの異常事態≫

 ところで、今朝は、6.2度の気温。30日の朝が5.2度だったので、2番目あたりの寒さ。ノルディックウォークは、朝焼けを期待しながら、デジカメを首から下げて出かけた。

 記録するのは、以下。見出しを見るだけでも批判が分かる。失敗が分かる。

●物価2%「18年度頃」…日銀、5度目の先送り/読売 2016年11月01日
●日銀展望、物価2%目標達成時期を先送り 16年度見通しも下げ /日経 11/1

●海外勢の日本株離れ加速 1~9月、売越額最大の6兆円 /日経 2016/9/30
●海外勢、中長期債を大幅売り越し 9月18~24日、05年以降最大 /日経 9/29
●日銀、物価上昇率2%の目標は未達成、金融緩和策を強化/ロイター 9月21日

●黒田緩和」持久戦に 量に限界、金利に軸足/日経 9/22
●「量」→「金利」重視へ 日銀が方針転換/テレ朝 9/22
●日銀 金融緩和の枠組み変更 量から金利に「現実路線」、「苦肉の策」と厳しい見方も/iza 9.21

●「緩和の泥沼」から抜け出したい 透ける日銀の本音/朝日 9月21日
●社説 黒田日銀の転換 あの約束は何だったか/毎日 9月22日

●アベノミクスはなぜ「つまらない金融政策」ばかりになったのか?/まぐまぐニュース 9.21
●もう限界だ。マイナス金利が招いた、これだけの異常事態/まぐまぐニュース 9.02
●インタビュー:日銀、物価2%達成先送りに3つの誤算=白井氏/ロイター 9月 6日

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●物価2%「18年度頃」…日銀、5度目の先送り
       読売 2016年11月01日
 日本銀行は1日の金融政策決定会合で、政策の目標とする物価上昇率2%の達成時期について「2017年度中」から「18年度頃」に実質的に1年間先送りした。

 日銀が13年4月に量的・質的金融緩和を導入してから、5回目となる。会合後に記者会見した日本銀行の黒田東彦はるひこ総裁は大規模な金融緩和について「2%に達しても続ける」と述べ、かなり長期化するとの見通しを示した。

 量的・質的金融緩和を導入した時点では、2%の物価上昇目標を「2年程度」で達成することを目指していた。しかし、今回の見直しで黒田総裁の18年4月までの任期中に2%の物価目標を達成するのは事実上困難になった。

 黒田総裁は「2年で実現できなかったのは残念だ。原油価格の下落や新興国経済の減速などが国際金融市場に大きな波乱をもたらした」と理由を説明した。

●日銀展望、物価2%目標達成時期を先送り 16年度見通しも下げ
          日経 2016/11/1
 日銀は10月31~11月1日に開いた金融政策決定会合で日本経済の2018年度までの見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめた。2%の物価安定目標の達成時期については「18年度頃」とし、従来の「17年度中」から先送りした。理由として「中長期的な予想物価上昇率の弱含みが続いている」ことを挙げた。物価安定目標について「モメンタムは維持されているとみられるものの、前回見通しに比べると幾分弱まっており、今後、注意深く点検していく必要がある」とした。

 黒田東彦総裁の任期である18年4月までの目標の達成は困難となった。委員が見通した消費者物価指数(CPI)上昇率の中央値は生鮮食品を除くベースで16年度が前年比0.1%の低下と、前回リポートを示した7月時点0.1%上昇から下方修正した。17年度中は1.5%上昇と、前回見通しの1.7%上昇から下方修正した。

 消費者物価についての見解は前回の「当面小幅のマイナスないし0%程度で推移する」から据え置いた。先行きについては18年度の後半に「2%に向けて上昇率を高めていく」とした。

 経済情勢については物価変動を差し引いた実質の16年度の国内総生産(GDP)の前年度比伸び率は1.0%増と見込む。前回予想の1.0%増から据え置いた。

 国内景気は前回の「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」との表現を据え置いた。先行きは「緩やかに拡大していく」との見方を示した。

 政策委員の16~18年度の大勢見通しは以下の通り。・・・(略)・・・

  9月の報道などの記録は以下。
●海外勢の日本株離れ加速 1~9月、売越額最大の6兆円
       2016/9/30 1:26 日経
 日本株に投資する海外投資家の姿勢が厳しくなってきた。2016年1~9月は約6兆円を売り越し、ブラックマンデー暴落があった1987年を抜き最大となる可能性がある。円高や景気減速による業績悪化への懸念や、アベノミクスへの期待がはげ落ちていることが背景にある。

 東京証券取引所によれば海外勢は1月から9月第3週(20~23日)までに累計で5兆9982億円を売り越した。1~9月としては統計を遡れる1982…

●海外勢、中長期債を大幅売り越し 9月18~24日、05年以降最大
        日経 2016/9/29
 財務省が29日発表した対外及び対内証券売買契約などの状況(週間・指定報告機関ベース)によると、海外投資家は9月18日~24日に国内の中長期債を2兆8049億円売り越した。2週連続の売却超で、売越額は現行の形で調査を始めた2005年以降で最大。国債の償還があった一方で入札がなかった影響が出た。

 日本株は2117億円売り越した。売却超は3週連続。米連邦準備理事会(FRB)が9月の追加利上げを見送り、外国為替市場で円相場が対ドルで上昇。円高による日本企業の輸出採算の悪化を嫌気する動きが広がった。

 一方、国内投資家は海外の中長期債を2週連続で買い越した。買越額は1兆1786億円。海外株式も2週連続で買い越した。

 併せて発表された11~17日の状況によると、海外勢は日本株を8174億円売り越し、国内勢は海外の中長期債を1兆3761億円買い越した。

●日銀、物価上昇率2%の目標は未達成、金融緩和策を強化
       ロイター 2016年09月21日
日本銀行の2日間にわたる金融政策決定会合を総括し、黒田総裁は金融緩和策の強化を明らかにした。
黒田総裁は金融緩和策の導入から3年半ほど経過した現在でもまだ2%の物価上昇率は達成できていないことを認め、これを踏まえ、金融緩和策の強化を行なうと語っている。

物価上昇が達成できない理由としては、企業や家計に残るデフレ心理と国際原油価格の急落で物価の上昇が鈍り始めたことを挙げられた。 黒田総裁は「経済・物価の好転をもたらし、物価の持続的な下落という意味でのデフレではなくなった」と評価している。 日銀の金融政策決定会合の結果発表を受け、ドルの対円レートはドル高に転じ、1ドル102円の値をつけた。円安は国外市場への輸出にターゲットを絞る日本の大企業には好条件。
前に伝えられたところによると、ロシアと日本はエネルギーコンサルティング協議会設立と、その一環で専門家による作業班作成を話し合っていた。

●黒田緩和」持久戦に 量に限界、金利に軸足
     日経 2016/9/22
 日銀の黒田東彦総裁は21日の金融政策決定会合後の記者会見で、長短金利を誘導目標とする新しい緩和策について「より柔軟に経済・物価情勢に対応できる」と語った。限界を迎えつつあった量から金利に政策のカジを切るが、目標とする物価2%上昇への道筋はなお見えない。短期決戦を狙った黒田緩和は持久戦を余儀なくされている。

 「リーマン・ショック後、世界の中央銀行が長期金利に直接影響を与えるものを購入し、効果も出て…

●「量」→「金利」重視へ 日銀が方針転換
       テレ朝 2016/09/22
 日本銀行の黒田東彦総裁は「総括的検証」に基づき、新たに導入した金利コントロール型の政策について、会見で強い自信を示しました。

 日本銀行・黒田東彦総裁:「何か手詰まりになったということはない。前の政策を捨てたというわけではなくて、さらに強化してこういった形にしている」
 日銀は21日の金融政策決定会合で、これまでの年間80兆円のペースで資金を供給する「量」を重視した政策から、新たに短期と長期で適正な金利水準になるよう誘導する「金利」重視の政策へ方針を転換することを決めました。市場では量を増やすための国債買い入れに対して限界を指摘する声がありましたが、会見ではこれを否定し、あくまで2%の物価目標を早期に達成するための強化策だと強調しました。

●日銀 金融緩和の枠組み変更 量から金利に「現実路線」、「苦肉の策」と厳しい見方も
       iza 2016.9.21
 日銀が金融政策の枠組みを「量」から「金利」へ修正したのは、「現実路線」への転換といえる。1~2年で市場に出回る国債が枯渇する恐れがある中、円高が進んだ場合などに備えて金融機関の収益をできるだけ悪化させずにマイナス金利を深掘りできる態勢を整えた。だが、年80兆円の国債購入量を減らした場合、緩和の縮小と受けとられる恐れもある。

 現在、日銀は発行額の3分の1超の国債を買い占めている。日銀は今回の枠組み修正で、将来的に緩和手段が手詰まりとなるリスクを未然に防ぐことにした。

 さらに「総括的な検証」ではマイナス金利の悪影響も詳しく解説。国債の大量購入とマイナス金利の組み合わせで長い期間の国債利回りが予想を超えて低下してしまい、国債で資金を運用する金融機関の収益が悪化して金融仲介機能を低下させる恐れがあると指摘した。

 日銀には今回、「量」へのこだわりを捨て去ることで、長い期間の国債の買い入れ量を減らして金利を調整し、こうした「副作用」を少なくする狙いもある。

 しかし、市場からは「量的緩和の限界を公に認められず、枠組み変更でごまかした苦肉の策」(証券系エコノミスト)との厳しい見方も出ている。今後も日銀の国債保有残高は増え続けるものの、日銀幹部は、新たに買い入れる国債を年80兆円から少しずつ減らす可能性を認める。

 日銀の黒田東彦総裁は21日の記者会見で、枠組みの修正は「テーパリング(緩和縮小)ではない」と強調した。だが、国債買い入れ量が減れば、市場は緩和縮小とみなし、金利が急変動する懸念は否めない。
一方、消費者物価指数は5カ月連続で前年割れし、2%の物価目標達成が見通せなくなっているにもかかわらず、日銀は今回、追加緩和カードを温存した。

 米国の利上げや英国の欧州連合(EU)離脱交渉など世界経済の先行きが見えにくくなる中、過度な円高が進んだ場合に備えて次回以降に選択肢を残す道を選んだ形だ。(藤原章裕)

●「緩和の泥沼」から抜け出したい 透ける日銀の本音
      朝日 2016年9月21日編集委員・原真人
 企業収益が好調で雇用統計が改善していても、日本銀行は金融市場から追加緩和を迫られてきた。「インフレ目標を達成するまではお金の量を増やし続けるのだろう?」と。景気が停滞していれば、なおさらだ。

「追加緩和の余地はある」黒田・日銀総裁の一問一答
 こんな「緩和の罠(わな)」から逃れたい、というのが日銀の本音だろう。長期金利の目標を設けた政策修正は、その泥沼から抜け出す一歩となるか。ポイントは、異次元緩和の大黒柱「量的緩和」を今後、事実上縮小できるかどうかである。


 黒田東彦(はるひこ)総裁は、市場に大量のお金を流せば必ず物価は上がる、と説明してきた。だが物価は上がらず、この3年半で結果ははっきり出た。そしてついに日銀は軸足を「量」から「金利」に戻すことになった。

 ただ、国債を買って大量のお金を流す政策も続ける。これをやめられないのは、日銀が事実上財政の支え役になってしまっているからだ。先進国で最悪の日本の赤字財政は、いまや日銀の量的緩和のおかげで成り立っている。

 深刻なのは安倍政権がそれに甘え、財政規律をゆるめていることだ。2回にわたる消費増税の延期、大規模な経済対策である。黒田総裁は、こうして財政が過剰に日銀依存を強めていくのを恐れ、ひとまず「量」の拡大に歯止めをかけた。

 それにとどまらず、将来の緩和縮小に向けた備えも必要だ。たとえ政権の求めがあっても、追加緩和を乱発しない強い覚悟も求められる。日銀が政権の僕(しもべ)となれば、いずれ高い代償を払わされるのは国民である。(編集委員・原真人)

●社説 黒田日銀の転換 あの約束は何だったか
       毎日 2016年9月22日
 無謀な実験は失敗に終わったということだ。

 日銀が、黒田東彦総裁のもとで進めてきた大規模金融緩和策の「総括的な検証」を行い、併せて「新しい枠組み」を発表した。アベノミクス第一の矢として注目を集めた「量的・質的金融緩和」が始まり約3年半になるが、こうした検証や枠組みの変更が必要になったこと自体、行き詰まりを如実に示している。

 日銀自身は、誤りを認めようとしない。黒田総裁は、政策の限界が枠組みの変更をもたらしたとの見方を、記者会見で強く否定した。

幻の「2年で2%」
 それどころか日銀は、「この間に、わが国の経済・物価は大きく好転し、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなった」と自賛してみせた。

 肝心の年2%の物価上昇目標は達成していないが、日銀の政策に問題があったからではなく、原油価格の大幅下落、消費税の引き上げ、新興国経済の減速、さらに日本人の物価観の特殊性のせいだと分析した。

 時計の針を2013年4月4日に戻してみよう。

 「2%、2年……」−−。記者会見に臨んだ黒田総裁は、大きく記した「2」が並ぶパネルを自ら手にし、決定したての金融緩和策に自信満々だった。

 従来の日銀との違いとして強調したポイントは主に三つだ。2%の目標達成まで「2年程度」と期限を切って結果を約束したこと。口約束でなく、国債の大量購入という異例の行動を伴わせ、人々に物価上昇を信じ込ませようとしたこと。そして従来のような小出しの追加策を重ねたりしないと言い切ったことだ。

 「2年で2%の物価安定目標を達成するために、現時点で必要な措置は全て決定した」と総裁は胸を張った。同じ時期に日銀入りした岩田規久男副総裁は、2年で2%を達成できない場合、辞任するとまで宣言していた。後に「説明責任を果たすことが先決というのが真意だった」と撤回したが、日銀がお金の量を本気で増やしさえすれば、2%の目標は達成できるというのが、当時の約束だった。

 結果はそうならなかった。

 日銀は四半期に1度の物価見通し発表のたびに、2%の達成時期を先送りした。14年10月には、お金の量の増やし方を拡大したが、それでも約2年で2%は遠く及ばなかった。

 日銀は検証の中で、14年の消費税引き上げの影響や海外の景気の鈍化を挙げているが、政策のプロなら、想定外とは言い訳できないだろう。

 確かに原油価格の激しい下落は、予想の域を超えたものだった。これについて日銀の検証は、米国などに比べ、日本人の将来の物価予想が、現実の物価動向に左右されやすいためだとした。長引いたデフレや、春闘という日本特有の賃上げ交渉が、短期的な物価下落の影響を受けやすくしていると説くが、明らかな言い訳、責任転嫁である。

 「2年で達成」をあっさりと葬り新たに導入した枠組みは、異次元緩和を支える、お金の量に主軸を置いた政策から金利重視の政策への大転換だ。しかも、今年2月に導入したばかりのマイナス金利政策も、金融機関の収益を圧迫したり、年金など長期の運用を一段と困難なものにしたりと弊害が多く指摘されたため、修正を余儀なくされた。

市場をゆがめた責任
 従来の枠組みでは、物価上昇率2%の達成時期が先送りされそうになるたびに市場から追加緩和期待が出ていた。自らまいた種ではあるが、日銀の政策があまりにも市場の主要関心事になり過ぎた。それが改善されるメリットはあるだろう。

 しかし、短期金利だけでなく長期金利(10年物国債の利回り)まで日銀が望ましいと思う水準に管理することが可能かという疑念は残る。さらに、長期金利は本来、市場が決めるものだ。例えば無責任な財政支出に対して、警告のシグナルを送る。その機能を縛る政策は過剰な市場介入ではないか。

 当然、問われるべきは、「2年を念頭に達成」との約束で始めた実験の失敗の責任である。

 日銀のもとには、将来値下がりの恐れがある国債や投資信託といった資産が450兆円以上も積み上がった。今後も当分の間、増加を続けるだろう。円という通貨の信用にかかわる問題だ。

 日銀による大量購入に依存し、ゆがみきった国債市場を、将来どうやって正常化するかという難題も待ち受ける。物価の上昇率が持続して2%を超えるようになれば、日銀は段階的に国債の購入額を減らしていかねばならない。

 だが、日銀という巨大な買い手が市場から手を引こうとした途端、価格が急落し、長期金利は急上昇しかねない。それを回避しようとすれば、国債購入をいつまでも止められず、バブルや景気の過熱を招く恐れがある。極めて難易度の高い出口戦略を求められよう。

 将来に重大な問題を残した異次元緩和策の責任は、日銀だけにあるのではない。アベノミクスの第一の矢に頼った政府の責任も問われる。

●アベノミクスはなぜ「つまらない金融政策」ばかりになったのか?
       まぐまぐニュース 2016.09.21
もう限界だ。マイナス金利が招いた、これだけの異常事態
政府・日銀による景気対策の効果が感じられない状況が続いていますが、黒田総裁は「金融緩和の拡大や物価上昇率2%の目標は貫く」という強気な姿勢を崩していません。これに対して無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』の中で嶌さんは、「日銀や政府の考える政策は、企業や国民の心理に配慮していない」と厳しく指摘しています。

国民、企業心理に心づかいを

政府・日銀の財政・金融政策は、本当に正しい道を突き進んでいるのだろうか。黒田日銀総裁が登場して大胆な金融緩和策を実行したため、一時は1ドル=80円割れしていた円高は、あっという間に円安に転じた。その後も黒田日銀は大幅な金融緩和を続行、ついにゼロ金利からマイナス金利の導入にいたるまで踏み切った。

低金利、ゼロ金利、マイナス金利となれば企業や消費者はおカネを借りやすくなり市場にカネがだぶついて、企業は安い金利のうちに設備投資を行い、消費者もおカネを使うようになるだろうとみたのだ。加えて財政面からは東日本大震災もあり災害復旧や公共投資などに惜しみなくおカネを注ぎ込んだ。

その結果、円は1ドル=80円割れから、一時120円台をのぞくところまで進んだが、肝心の設備投資も消費も盛り上がらなかった。企業の内部留保資金が厚くなっただけだし、円安で輸出増ともならなかった。効果が目立ったのは、外国人観光客が急増し、爆買いをしてくれたことだろう。ただその爆買いも3ヵ月位前にこの欄で指摘したように下火となっている。

黒田日銀総裁は相変わらず強気で、金融緩和の拡大や物価上昇率2%の目標は貫くと言い続けている。しかし、さすがに日銀や財政当局の内部ではこのまま今の方針を続けると金融機関の体力が弱り、財政健全化の目標も遠のくばかりだと懸念する声が出始めている。このため9月になったらこれまでの政策や効果を再点検すると言い出した。しかし調査、点検して本気で政策を見直す気があるのか。

思うに安倍内閣は「経済が最重要」といいながら政策は日銀にまかせきりできたとしか思えない。日銀の失敗は、頭だけで考えた経済理論で突っ走っており、企業や消費者の心理などをよく研究していないためと思われる。経済と市場は理屈よりも消費者や企業の心理に左右されないのではないか。

今の消費者は物価が多少安くなったり、おカネが借りやすくなっても消費を増やさないだろう。一番気にしていることは将来の不安なのだ。高齢化に伴う医療費の増大、死ぬまで安心して暮らせる預貯金の額などだ。若者や中年たちはリストラや老後の生活が安心できないのでボーナスがふえてもたとえ金利が低くとも貯金にまわすのだ。

企業も多くは海外展開しているので、円安になっても国内生産を増やそうとはしない。国民や企業の消費意欲、投資を増やしたいならむしろ金利をあげ利回りのよい商品が出回った方が効果的なのではないか。日銀は経済理論だけを重視するのではなく企業や国民の心理も考えて政策を考えて欲しい。
(財界 2016年9月20日号 第431回)

●もう限界だ。マイナス金利が招いた、これだけの異常事態
      まぐまぐニュース 2016.09.02
導入から半年が経過しても思うような成果を出せていない「マイナス金利」。私たち庶民にとってはむしろデメリットの方が大きいように感じてしまいます。無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』ではマイナス金利が生んだ数々のデメリットを解説。さらに一部富裕層の不動産投資により、日本にまた思わぬ「バブル」が訪れる可能性についても指摘しています。

ひどい!こんなにあるマイナス金利の弊害
今日は導入から半年「マイナス金利」を検証したい。日銀や政府は経済理論からどうやったら景気がよくなるのかということを考えているが、それと同時に「景気は気から」。企業や大衆の心理をよくみないと間違いが生じるように思う。どうもここのところ日銀は理論だけで動いていて、間違いが多いように感じられる。

マイナス金利をおさらい
この「マイナス金利」を改めておさらいすると、これまで一般の銀行は余ったおカネを日銀に預け、若干ではあるが金利がついていた。しかしながら「マイナス金利」導入後は、日銀におカネを預けることによって金利はマイナスとなり、逆に預けた銀行側が日銀におカネを払わなくてはならないという異常事態となっている。

日銀はこの政策によって、銀行は日銀に預けずそれを企業等に貸出したり、個人ももっとおカネを借りて大きな買い物をするようになり消費が活発化するようになると読んでいた。しかしながら、はっきり言うとその通りにはなっていない。確かに銀行の貸出し金利は下がったが、消費は向上していない。
・・・(略)・・・

●インタビュー:日銀、物価2%達成先送りに3つの誤算=白井氏
      ロイター 2016年 09月 6日
 9月6日、白井さゆり前日銀審議委員(慶大教授・アジア開発銀行研究所客員研究員)は、ロイターとのインタビューで、日銀の総括検証に関連し、物価2%の達成時期の先送りが繰り返された背景に3つの誤算があったと述べた。写真は日銀本店。3月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 6日 ロイター] - 白井さゆり前日銀審議委員(慶大教授・アジア開発銀行研究所客員研究員)は、ロイターとのインタビューで、日銀の総括検証に関連し、物価2%の達成時期の先送りが繰り返された背景に3つの誤算があったと述べ、日銀は経済・物価見通しの甘さを認めなければ、処方せんを誤ると警告した。

政策の持続性確保に向け、国債買い入れの減額とマイナス金利の深掘りのパッケージを提案した。

5日に行ったインタビューで白井氏は、量的・質的金融緩和(QQE)の導入から3年余りが経過しているにもかかわらず、物価が目標の2%に到達できていない背景として、予想インフレ率、潜在成長率、需給ギャップが想定通りに改善しなかった「日銀の3つの誤算」を挙げた。

予想インフレ率は「皮肉なことに、今年1月にマイナス金利政策の導入を決定して以降、下がってしまった」とし、「日銀に対するクレディビリティが低下し、予想インフレ率を引き上げる力が弱まったと見ることもできる」と語った。

また、マイナス金利の導入で名目金利が大きく低下したにもかかわらず、予想インフレ率も低下したことで、日銀が効果波及経路の起点と位置づける実質金利が「思うように低下せず、需給ギャップも改善しなかった」と述べた。

特に潜在成長率は、日銀試算でゼロ%台前半での推移が続き「原油価格の下落ではなく、潜在成長率が予想通りに上がらなかったことが経済・物価見通しの下方修正の主因であったことを認めない限り、日銀は処方せんを誤る」と指摘した。

そのうえで物価2%目標の実現には時間がかかるとし、まず1%を目指して、それを達成したうえで、日銀・政府・国民が「2%を目指すべきかを議論する2段階が現実的」と主張。

金融政策の持続性確保には、大きくフラット化したイールドカーブをスティープ化させ、年金や保険のビジネスモデルに対する不安を抑制することが不可欠とし、国債買い入れの減額に合わせたマイナス金利の深掘りと、物価目標の柔軟化をパッケージで示すべきだとした。

もっとも、現在の日銀が「持続的な政策への枠組み転換を模索しているとは思えない」とし、2017年度中としている2%達成時期のさらなる先送りと、追加緩和に直面すると予想。

国債買い入れ増額を決断すれば、イールドカーブのフラット化に拍車をかけると述べ「マイナス金利の深掘りが選択される可能性が大きい」と語った。
(伊藤純夫 木原麗花 編集:田巻一彦)


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