tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

忘れ雪(あふれる春の陽を浴びて)

2007-04-09 20:04:28 | プチ放浪 山道編
ぼくらはイスに腰掛け、冷やかしで覗いていくギャラリーを捕まえては、いっしょにウーロン茶を飲みながらまったりと歓談していた。ギャラリーは、入れ替わり立ち代りぼくらのブースを覗いていき、プロモーションビデオの入ったケース入りのCDをプレゼントされると、一様に嬉しそうにもらっていく。若いボーダーたちから、結構年配のスキーヤーまで幅広い年齢層の人たちが覗きこんでいった。
開始してから30分すぎて、ボーダーやスキーヤー達のブースへの冷やかしが一段落した。しかし、肝心の映画会社やスポンサー応募の企業からの訪問はなかった。そんなに映画化の話が簡単に進行していくとは思っていないが、2chで結構話題になったんだし、どっかの企業が話を聞くだけでも来てくれるのではと強い期待を抱いていた。過剰な期待をしていたつもりはないが、映画化の実現を望むことは大いなる絶望への引き金であるのかもしれない。
ぼくは、数人のギャラリーと談笑していたイズミさんのところへ行くと
「スポンサーの応募はなさそうですね。」と告げた。
「まだまだ。これから、これから。」イズミさんが、笑顔で答える。彼は絶対にくじけない強い意思を持っているのだろう。その精神的な強さは尊敬に値する。
そこへ、理津子がやってきてぼくに耳打ちした。
「上毛新聞の人が取材に来てますよ」
見ると、スキーウエアのギャラリーに混じって、20代後半であろう黒のダウンジャケットに身を包んだ女性が立っていた。「責任者の方と話がしたい」とのことらしい。ぼくはイズミさんにこのことを告げた。だれが責任者と決めていたわけではないが、広報担当としては最年長の彼が適任と思えたからだ。
「代表はヤノ君だろう?」イズミさんが真顔で答える。
「あの年代の女性は苦手なんスよ。」ぼくは必死に頼み込む。それは本当のことだった。20代後半の女性から話しかけられると、ぼくの思考回路はフリーズしてしまうことが多かった。固まらずに話せる数少ない話題の一つはスキーなのだが、今の若い女性達はスキーをやらない。だから会話の接点をなかなか見つけられず、彼女達から逃げ回っているうちに、ついには話しかけられないようになってしまっていた。
「いままでは、メーカーやスキー場など業界から押し付けの文化だった。これに対して、2chのみんなが立ち上がって、自分達の文化を創ろうとしてる。ナチュラリストとしてのスキー文化の創出・・・だったけ。」
「そうっす」
「わかった」
話し合った結果、イズミさんが広報担当ということで、上毛新聞の記者の取材の受け答えをしてくれることになった。
そのうち、見たことのあるスキーウエアーの7人組がやってきた。今日のバックカントリースキーで出合った連中だ。渋峠から無事に帰還できたらしい。ウーロン茶を手渡すと、またまたビッグスマイル。彼らは結局、芳ヶ平ヒュッテには寄らずにまっすぐ天狗山まで下りてきたとのこと。どうりで芳ヶ平ヒュッテで会わなかったわけだ。パトロールに下山の届出をしたかどうか聞くと、それは忘れずにやったとのこと。芳ヶ平から下の林間コースでは、狭い登山道のコースゆえにかなり手こずったらしい。「横滑りで降りてきました」と涙目で訴えてくる。もう、バッククロスカントリースキーはコリゴリとのことだった。ぼくらが今日滑っているのを撮った映像を見せてあげると、いくぶんコースに対する印象が変わったらしい。<でも雪質は最高でしたね>と、まるで遠い昔のことのように付け加えた。コースアウトして沢をヒーヒー言いながら登って来たこと、彼らの旅行のいい思い出になってくれればと思う。ぜひ、楽しい思い出をたくさん作って、何度もスキーに来て欲しいと思うのだが、今の若者のスキー、ボード人口の激減を考えると過剰な期待なのかもしれない。