宇宙飛行士の若田光一さんが2013年末から、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在。滞在期間の一部(2ヶ月)、ISSのコマンダーを勤めることになった。英語だとCommanderである。
これを17日、18日の報道では船長と訳していた。これ、妥当なのだろうか。そう思って、まずJAXA(宇宙航空研究開発機構)のプレスレリースを読んでみたら、こう書いてあった。以下引用する。
若田宇宙飛行士は、第38次/第39次長期滞在期間において、日本人初のコマンダ―として第39次長期滞在の指揮をとります。
コマンダーはコマンダーなのだ。
+++++ +++++
言葉のイメージというのは難しい。報道で使われている日本語の船長は、文字通り船の運航責任者、長(おさ)である。ISS全体はサッカーグランドほどのサイズだとどこかで読んだことがあるが、船のイメージはない。確かに地球をまわる軌道(周回軌道)を飛んでいるけれど、アメリカのスペースシャトル、ロシアのソユーズ、そして日本のHTVこうのとりなどが、ドッキングする基地・港のイメージの方がずっと強い。ISSのSは、Space StationのSであって、Space ShipのSではない。
+++++ +++++
アメリカのSFでスタートレックというものがある。今から40年以上前に放送が始まったものだが、以下のシリーズがある。3作目を除き、各シリーズともクルーが宇宙船に乗り、宇宙探査をする時に出会うsense of wonderを描くものである。3作を目を除いて、舞台は宇宙船。そこには主役の船長・艦長がいる。
『宇宙大作戦』
Star Trek, The Original Series, TOS
船長 ジェイムス・T・カーク
『新スタートレック』『新宇宙大作戦』
Star Trek: The Next Generation, TNG
艦長 ジャン=リュック・ピカード
『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン』
Star Trek: Deep Space Nine, DS9
司令官 ベンジャミン・シスコ
『スタートレック:ヴォイジャー』
Star Trek: Voyager, VGR(Voyager)、VOY(Voyager)
艦長 キャスリン・ジェインウェイ
『スタートレック:エンタープライズ』
Enterprise, ENT
船長 ジョナサン・アーチャー
5作目は、1作目のプリクエル(1作目の前の時代を描くもの)である。
初期の時代は、船の責任者は船長であり、2作目、4作目ではそれぞれ艦長が船の責任者の呼称。3作目は宇宙ステーションが舞台であり、そこの責任者はコマンダー(Commanding Officer)、司令官である。若田さんはまさに、この役目を担うことになる。適訳は船長ではなく司令官(基地司令)か指揮官だろう。ただ、ISSは軍事基地ではないので、ミリタリーのイメージがある(?)司令官・指揮官という用語を、マスコミは避けたのかもしれない。
なお、スタートレックの原作では船長・艦長はCaptain、コマンダーはCommanderである。劇中のスターフリート(宇宙艦隊)における階級は、アメリカ海軍の階級にならい付けられている。Captainは海軍では大佐である。