司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

「法社会学の可能性」

2004-08-15 14:14:03 | いろいろ
和田仁孝・樫村志郎・阿部昌樹編「法社会学の可能性」(法律文化社)

 棚瀬孝雄京都大学教授の還暦記念論文集である。実務の世界に身をおくと、次第次第にこれまで構築してきた事案処理の判断準拠枠組に沿って判断を構成するようになる。すなわち、より実践的な課題に見合う形で、簡略化されたり、目分量的な判断の準拠枠が構成され、実務的カンを働かせるようになるのである。しかし、これは功罪相半ばする面があろう。ときに自身の法体系(判断準拠枠組)を社会学的視座から再検証することが必要であると思われる。そんなときにお奨めか。

 本書所収の樫村志郎神戸大学教授「『相談の語り』とその多様性」の中に、「司法書士と依頼人との間の社会的関係は、弁護士と依頼人との間の社会的関係よりも、平等的である。司法書士の提供するサービスは弁護士のサービスと概括的に異なっている。これらの事情は、司法書士が行う法律相談を、弁護士の法律相談と、概略的に異なったものとしている。」という一節がある。「概略的に異なる」という点が、意不明であるが、脚注に「この点の分析のためには、別稿を予定している。」とあるので、期待して待ちたい。
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