取締役は、何時でも自己の意思で辞任することができる。株式会社に不利な時期に辞任した取締役には、損害賠償義務が生ずることがあるし、辞任により欠員が生ずる場合には、補欠の取締役が就職するまで取締役の義務を免れることはできないが、辞任は、株式会社に対する一方的意思表示の到達により効力を生ずるのである。
辞任の意思表示は、書面によることを要しない。従って、口頭での辞意の表明により、辞任は効力を生ずることになる。ただし、辞意の表明が確定的意思表示であったか否かが争いになり得るし、また、登記実務上、辞任の登記には「退任を証する書面」(商業登記法第54条第4項)の添付が必要であることから、辞任届書が徴求されるのが一般である。
では、辞任届書の提出がなく、又は、紛失等により、登記申請時に添付できない場合は、いかに対応すべきか?
この点に関して、昭和36年10月12日民四第197号民事局第四課長回答では、株主総会議事録に「席上辞任の意思表示」がなされた旨が記載されている場合には、退任を証する書面として援用を認めるものとされていた。また、旬刊商事法務第1225号48頁にも同旨の解説があるようである。
しかし、実務においては、「東京法務局商業法人登記速報第144号(平成8年8月20日)」にもあるとおり、辞任した取締役が株主総会を欠席していても、「(株主総会議事録の記載から)本人の辞任の意思とその日付けが判明していれば、受理しているのが実情である。」という取扱いであった。旧商法下の解説書であるが、青山修著「株式会社法と登記の手続」(新日本法規)252頁においても、同取扱いが紹介されている。望ましくはないが、便宜認めてきたということであろう。
ところが、昨年来、上記取扱いが変更され、辞任した取締役が株主総会を欠席している場合には援用不可とされるようになったということである。
株主総会議事録における辞任に関する記載の証明力を本人の辞任届書と同程度にみることができるかという問題であるが、これを認めないとすると、中小企業においては、辞める者が株主総会に出席して辞意を表明するケースは稀なので、辞任届書を受領できない等の場合には、登記申請が困難になってしまう。
私見としては、会社法の下で取締役の記名押印を要しないとされた株主総会議事録の記載の証明力を認めるよりは、むしろ、
①取締役の辞任の場合は、他の取締役全員による証明書
②監査役の辞任の場合は取締役全員による証明書
により「年月日取締役(又は監査役)何某より辞任の意思表示がなされた」旨が明らかとされていれば、「退任を証する書面」として認める取扱いをすべきである、と考える。
もちろん例外的なケースであるし、辞任届書の添付が原則であるが、上述のとおり、辞任は、口頭の意思表示により有効であり、辞任届書の作成は法律上要求されていないこと、また、商業登記法第54条第4項は、「退任を証する書面」を要求しているに過ぎないことからすると、私見のような取扱いを認める余地はあるのではないか。
中小企業においては、取締役等を辞任する者が株主総会に出席して辞意を表明するケースは稀であり、辞任届書を受領できない等の場合(音信普通となっているケースも少なくない。)に、登記申請が困難であるという事態を打開する上では、例外的措置として認めるべきであろう。
辞任の意思表示は、書面によることを要しない。従って、口頭での辞意の表明により、辞任は効力を生ずることになる。ただし、辞意の表明が確定的意思表示であったか否かが争いになり得るし、また、登記実務上、辞任の登記には「退任を証する書面」(商業登記法第54条第4項)の添付が必要であることから、辞任届書が徴求されるのが一般である。
では、辞任届書の提出がなく、又は、紛失等により、登記申請時に添付できない場合は、いかに対応すべきか?
この点に関して、昭和36年10月12日民四第197号民事局第四課長回答では、株主総会議事録に「席上辞任の意思表示」がなされた旨が記載されている場合には、退任を証する書面として援用を認めるものとされていた。また、旬刊商事法務第1225号48頁にも同旨の解説があるようである。
しかし、実務においては、「東京法務局商業法人登記速報第144号(平成8年8月20日)」にもあるとおり、辞任した取締役が株主総会を欠席していても、「(株主総会議事録の記載から)本人の辞任の意思とその日付けが判明していれば、受理しているのが実情である。」という取扱いであった。旧商法下の解説書であるが、青山修著「株式会社法と登記の手続」(新日本法規)252頁においても、同取扱いが紹介されている。望ましくはないが、便宜認めてきたということであろう。
ところが、昨年来、上記取扱いが変更され、辞任した取締役が株主総会を欠席している場合には援用不可とされるようになったということである。
株主総会議事録における辞任に関する記載の証明力を本人の辞任届書と同程度にみることができるかという問題であるが、これを認めないとすると、中小企業においては、辞める者が株主総会に出席して辞意を表明するケースは稀なので、辞任届書を受領できない等の場合には、登記申請が困難になってしまう。
私見としては、会社法の下で取締役の記名押印を要しないとされた株主総会議事録の記載の証明力を認めるよりは、むしろ、
①取締役の辞任の場合は、他の取締役全員による証明書
②監査役の辞任の場合は取締役全員による証明書
により「年月日取締役(又は監査役)何某より辞任の意思表示がなされた」旨が明らかとされていれば、「退任を証する書面」として認める取扱いをすべきである、と考える。
もちろん例外的なケースであるし、辞任届書の添付が原則であるが、上述のとおり、辞任は、口頭の意思表示により有効であり、辞任届書の作成は法律上要求されていないこと、また、商業登記法第54条第4項は、「退任を証する書面」を要求しているに過ぎないことからすると、私見のような取扱いを認める余地はあるのではないか。
中小企業においては、取締役等を辞任する者が株主総会に出席して辞意を表明するケースは稀であり、辞任届書を受領できない等の場合(音信普通となっているケースも少なくない。)に、登記申請が困難であるという事態を打開する上では、例外的措置として認めるべきであろう。