司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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特例民法法人が公益法人に移行した場合の「外部理事」

2010-09-11 18:06:07 | 法人制度
 特例民法法人が公益法人又は一般法人へ移行した場合に,従来から在任していた理事が外部理事(一般社団・財団法人法第113条第1項第2号ロ)の要件を満たすのか否かという問題があるようで,検討を試みる。

 特例民法法人(理事会を置く特例民法法人及び「代表理事」を定めた特例社団法人を除く。以下,同じ。)にあっては,理事は,各自代表権を有し(一般社団・財団法人法第77条第1項本文,整備法第77条第5項参照),各自業務を執行する(一般社団・財団法人法第76条第1項,整備法第77条第5項参照)のが原則である。ただし,理事の中から,定款の別段の定めによって,業務を執行しない理事を定めることができる(一般社団・財団法人法第77条第1項本文,整備法第77条第5項参照)。

cf. 平成20年11月15日付「特例財団法人の理事の代表権に関して」

 特例民法法人において,定款の別段の定めによって,業務を執行しない理事を定めている例は,それほど多くはないと思われる。特例民法法人の理事又は監事の行為に基づく損害賠償責任については,なお従前の例による(整備法第55条)とされているので,一般社団・財団法人法第115条第1項の適用を受けることができず,「外部理事」との間で責任限定契約を締結することができないため,定款の別段の定めを検討する必要に乏しいからと考えられる。

 外部理事の定義は,次のとおりであるから,特例民法法人においては,定款の別段の定め(業務を執行しない理事に関する定め)がない場合の理事であっても,現に業務を執行していない限り,外部理事の要件を満たす場合があることになる(上記のとおり区別する実益はないが。)。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第113条第1項第2号ロかっこ書 外部理事
一般社団法人の理事であって,当該一般社団法人又はその子法人の業務執行理事(代表理事,代表理事以外の理事であって理事会の決議によって一般社団法人の業務を執行する理事として選定されたもの及び当該一般社団法人の業務を執行したその他の理事をいう。以下この章において同じ。)又は使用人でなく,かつ,過去に当該一般社団法人又はその子法人の業務執行理事又は使用人となったことがないものをいう。

 ところで,特例民法法人においては,理事は,その属性により,次の6種類に分類される。
① 特例民法法人を代表することができる理事(定款規定等に基づく内部的制限を受けていない理事であり,一般社団・財団法人法上の「代表理事」とは異なる。)
② 特例民法法人を代表することができない理事(定款規定等に基づく内部的制限を受けている理事をいう。以下,同じ。)であり,かつ,業務執行権を有する理事(定款の別段の定めにより業務を執行しない理事と定められているもの以外の理事をいう。以下同じ。)であって,現に業務を執行しているもの
③ 特例民法法人を代表することができない理事であり,かつ,業務執行権を有する理事であって,現に業務を執行していないもので,外部理事の要件を満たさないもの
④ 特例民法法人を代表することができない理事であり,かつ,業務執行権を有する取締役であって,現に業務を執行していないもので,外部理事の要件を満たすもの
⑤ 特例民法法人を代表することができない理事であり,かつ,定款の別段の定めにより業務を執行しない理事と定められているものであって,外部理事の要件を満たさないもの
⑥ 特例民法法人を代表することができない理事であり,かつ,定款の別段の定めにより業務を執行しない理事と定められているものであって,外部理事の要件を満たすもの

 理事会設置一般社団法人以外の一般社団法人において,各自代表である場合,各理事が代表理事の地位を有するので,理事の中から業務を執行しない理事を定めることはできない。
cf. 平成22年9月10日付「取締役会設置会社以外の株式会社における『社外取締役』」

 しかし,特例民法法人における理事は,各自代表であるが,一般社団・財団法人法上の「代表理事」の地位を有しないため,理事の中から業務執行理事を選定する(=業務を執行しない理事を定める)旨の定款の別段の定めを設けることができると考えられており,上記のような分類が可能である。
cf. http://stfd.jp/contents/2/2-3-1.PDF ※4頁以下

 したがって,特例民法法人が公益法人又は一般法人へ移行した場合に,従来から在任していた理事が上記④又は⑥に該当する場合には,「業務を執行した」(一般社団・財団法人法第113条第1項第2号ロかっこ書)にあたらないことから,外部理事の要件を満たすものといえ,定款の定めに基づき責任限定契約を締結しようとする場合には,外部理事である旨を登記することができる。
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