第5 会社分割等における債権者の保護
1 詐害的な会社分割等における債権者の保護
① 吸収分割会社又は新設分割会社(以下「分割会社」という。)が吸収分割承継会社又は新設分割設立会社(以下「承継会社等」という。)に承継されない債務の債権者(以下「残存債権者」という。)を害することを知って会社分割をした場合には,残存債権者は,承継会社等に対して,承継した財産の価額を限度として,当該債務の履行を請求することができるものとする。ただし,吸収分割の場合であって,吸収分割承継会社が吸収分割の効力が生じた時において残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは,この限りでないものとする。
(注)株式会社である分割会社が吸収分割の効力が生ずる日又は新設分割設立会社の成立の日に全部取得条項付種類株式の取得又は剰余金の配当(取得対価又は配当財産が承継会社等の株式又は持分のみであるものに限る。)をする場合(第758条第8号等)には,上記の規律を適用しないものとする。
【以下,略】
cf. 平成24年9月10日付け「会社法制の見直しに関する要綱案についての考察(11)」
「承継した財産の価額を限度」とすると,切り出された財産(「資産」-「負債」)が債務超過であれば,承継会社等は,弁済の責任をまったく負わない。
残存債権者は,分割会社が会社分割前に法的整理に入っていれば,少なくともその時点における清算価値が保障される可能性があったにもかかわらず,会社分割後には,ビタ一文入らないことになりそうである。
詐害的会社分割が問題とされるケースであっても,大幅な資産超過ということはなく,債務超過又は資産と負債がイーブンに近いことが想定されることからすれば,置いてきぼりを食らって,切り捨てられる債権者にとって,今般の改正は,救済にならない,と言えそうである。
1 詐害的な会社分割等における債権者の保護
① 吸収分割会社又は新設分割会社(以下「分割会社」という。)が吸収分割承継会社又は新設分割設立会社(以下「承継会社等」という。)に承継されない債務の債権者(以下「残存債権者」という。)を害することを知って会社分割をした場合には,残存債権者は,承継会社等に対して,承継した財産の価額を限度として,当該債務の履行を請求することができるものとする。ただし,吸収分割の場合であって,吸収分割承継会社が吸収分割の効力が生じた時において残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは,この限りでないものとする。
(注)株式会社である分割会社が吸収分割の効力が生ずる日又は新設分割設立会社の成立の日に全部取得条項付種類株式の取得又は剰余金の配当(取得対価又は配当財産が承継会社等の株式又は持分のみであるものに限る。)をする場合(第758条第8号等)には,上記の規律を適用しないものとする。
【以下,略】
cf. 平成24年9月10日付け「会社法制の見直しに関する要綱案についての考察(11)」
「承継した財産の価額を限度」とすると,切り出された財産(「資産」-「負債」)が債務超過であれば,承継会社等は,弁済の責任をまったく負わない。
残存債権者は,分割会社が会社分割前に法的整理に入っていれば,少なくともその時点における清算価値が保障される可能性があったにもかかわらず,会社分割後には,ビタ一文入らないことになりそうである。
詐害的会社分割が問題とされるケースであっても,大幅な資産超過ということはなく,債務超過又は資産と負債がイーブンに近いことが想定されることからすれば,置いてきぼりを食らって,切り捨てられる債権者にとって,今般の改正は,救済にならない,と言えそうである。