司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

会社法制の見直しに関する要綱案についての考察(11-2)

2012-10-12 17:42:37 | 会社法(改正商法等)
第5 会社分割等における債権者の保護
1 詐害的な会社分割等における債権者の保護
① 吸収分割会社又は新設分割会社(以下「分割会社」という。)が吸収分割承継会社又は新設分割設立会社(以下「承継会社等」という。)に承継されない債務の債権者(以下「残存債権者」という。)を害することを知って会社分割をした場合には,残存債権者は,承継会社等に対して,承継した財産の価額を限度として,当該債務の履行を請求することができるものとする。ただし,吸収分割の場合であって,吸収分割承継会社が吸収分割の効力が生じた時において残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは,この限りでないものとする。
(注)株式会社である分割会社が吸収分割の効力が生ずる日又は新設分割設立会社の成立の日に全部取得条項付種類株式の取得又は剰余金の配当(取得対価又は配当財産が承継会社等の株式又は持分のみであるものに限る。)をする場合(第758条第8号等)には,上記の規律を適用しないものとする。
【以下,略】

cf. 平成24年9月10日付け「会社法制の見直しに関する要綱案についての考察(11)」

 「承継した財産の価額を限度」とすると,切り出された財産(「資産」-「負債」)が債務超過であれば,承継会社等は,弁済の責任をまったく負わない。

 残存債権者は,分割会社が会社分割前に法的整理に入っていれば,少なくともその時点における清算価値が保障される可能性があったにもかかわらず,会社分割後には,ビタ一文入らないことになりそうである。

 詐害的会社分割が問題とされるケースであっても,大幅な資産超過ということはなく,債務超過又は資産と負債がイーブンに近いことが想定されることからすれば,置いてきぼりを食らって,切り捨てられる債権者にとって,今般の改正は,救済にならない,と言えそうである。
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東日本大震災の被災者の集団移転と抵当権の放棄

2012-10-12 15:12:52 | 東日本大震災関係
京都新聞記事
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20121012000071

 東日本大震災で津波などの被害に遭い,集団移転を余儀なくされた住宅ローン債務者を対象に,民間金融機関が抵当権を放棄する方向であるそうだ。

 あくまで「抵当権」の放棄であって,債権を放棄するわけではない。
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グリーの定款変更

2012-10-12 14:58:00 | 会社法(改正商法等)
日経記事
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/editors.aspx?g=DGXNMSGD0402O_11102012000000

 グリーが大量の事業目的を追加する定款の変更を行ったことが話題を呼んでいるそうだ。

cf. グリーのプレスリリース
http://v3.eir-parts.net/EIR/View.aspx?template=ir_material&sid=18613&code=3632

 余談ながら,上記記事によれば,2012年3月期決算企業の株主総会では,発電事業と無関係の企業が再生エネルギー関連の事業目的を追加するケースが相次いだということである。
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詐害的会社分割に関して最高裁が初判断

2012-10-12 14:47:10 | 会社法(改正商法等)
日経記事
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG12017_S2A011C1CR0000/

 民法に基づく詐害行為取消しの対象となると判断。

 債権者は,新設分割会社が取得した新設分割設立会社の株式に対して強制執行をすることができるとはいえ,取消しを認めざるを得ないでしょうね。

最高裁平成24年10月12日第2小法廷判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82628&hanreiKbn=02

【要旨】
「株式会社を設立する新設分割がされた場合において,新設分割設立株式会社にその債権に係る債務が承継されず,新設分割について異議を述べることもできない新設分割株式会社の債権者は,民法424条の規定により,詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる」

【抜粋】
「本件新設分割により,上告人(新設分割設立会社)はA(新設分割会社)から一部の債務を承継し,Aは上記承継に係る債務について重畳的債務引受けをしたが,本件保証債務(被上告人に対する債務)は上告人に承継されなかった」

「詐害行為取消権の行使によって新設分割を取り消したとしても,その取消しの効力は,新設分割による株式会社の設立の効力には何ら影響を及ぼすものではない」

「株式会社を設立する新設分割がされた場合において,新設分割設立株式会社にその債権に係る債務が承継されず,新設分割について異議を述べることもできない新設分割株式会社の債権者は,民法424条の規定により,詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる」

「債権の保全に必要な限度で新設分割設立株式会社への権利の承継の効力を否定することができる」

【補足意見】
「本件新設分割によって,その直前の時点でのAに対する一般債権のうち,上告人によって承継されない本件保証債務(約4億5500万円)を含む債務に係る一般債権(以下「本件残存債権」という。)と,承継された債務に係る一般債権(以下「本件承継債権」という。)とは,その引当てとなる財産(責任財産)が異なることになる」

「要するに,本件新設分割における対価が相当であるとしても,Aの純資産(株式価値)は変動しないが,本件残存債権の責任財産は大幅に変動するなどの事態が生じ,かつ,本件残存債権の債権者と本件承継債権の債権者との間で著しい不平等が生ずるに至ったということである」
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親族後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,刑法244条1項は準用されない

2012-10-12 14:27:52 | 家事事件(成年後見等)
NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121011/k10015676771000.html

 親族後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領する事件が相次いでいるが,このような場合,刑法244条1項は準用されないとする判断を最高裁が示した。

「家庭裁判所から選任された成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって,成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているのであるから,成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,同条項を準用して刑法上の処罰を免除することができないことはもとより,その量刑に当たりこの関係を酌むべき事情として考慮するのも相当ではないというべきである」

最高裁平成24年10月9日第2小法廷決定
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82627&hanreiKbn=02

cf. 未成年後見の事案(最高裁平成20年2月18日第1小法廷決定)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=35770&hanreiKbn=02
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