「反対株主は買取請求権を有しないのになぜ? であるが,改正後の会社法第796条第3項によれば,この通知又は公告の日から2週間以内に,一定数の株主から吸収合併等に反対する旨の通知があったときは,原則に戻って,株主総会の決議によって,吸収合併契約等の承認を受けなければならない。」
「そして,通知又は公告の日から2週間以内に,一定数の株主から吸収合併等に反対する旨の通知がなかったときは,2週間を経過した時点で,簡易組織再編の要件が完備したことが一応確定することになる。」
cf.
平成27年3月5日付け「簡易組織再編における会社法第797条第3項の規定による通知又は同条第4項の公告」
とすると,この場合,定款で定める公告方法が電子公告であるときは,公告の日から2週間を経過したときは,電子公告を終了してよいと考えられる。
なぜなら,会社法第797条第4項の電子公告は,効力発生日の前日まで継続してしなければならない(会社法第940条第1項第1号)と解されているところ,
cf.
平成19年2月28日付け「電子公告の公告期間」
「通知又は公告の日から2週間以内に,一定数の株主から吸収合併等に反対する旨の通知がなかったときは,2週間を経過した時点で,簡易組織再編の要件が完備したことが一応確定」したときは,電子公告を継続することは,無意味だからである。
仮に,条文の文言に囚われて,2週間の経過後も電子公告を継続しなければならないとする解釈を採ると,公告期間中に公告の中断が生じた場合において,その時間の合計が公告期間の10分の1を超えたとき(会社法第940条第3項第2号)又は同項各号のいずれかに該当しないときは,どうするのであろうか?
したがって,会社法第940条第1項第1号の規定にかかわらず,電子公告の日から2週間以内に,一定数の株主から吸収合併等に反対する旨の通知がなかったときは,2週間を経過した時点で,簡易組織再編の要件が完備したことが一応確定することになるので,その時点以降は,電子公告を継続する必要はないと解すべきである。
理屈を言えば,効力発生日の直前になって,簡易組織再編の要件を満たさないことが発覚し,効力発生日の変更の手続を取らざるを得ないこともあり得る。この場合,変更後の効力発生日の20日前から買取請求のための公告がされていることを要するから,そういった意味では,電子公告が継続されている方が都合がよいこともあり得るであろう。
しかし,それは,吸収合併存続会社等が,そのようなリスクを承知の上で,電子公告を終了するか否かの問題であるから,法をもって電子公告の継続を強制すべきことにはならないであろう。