司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

共同相続された定期預金債権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない(最高裁判決)

2017-04-06 21:22:01 | 民事訴訟等
最高裁平成29年4月6日第1小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86670

【裁判要旨】
共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない

「定期預金については,預入れ1口ごとに1個の預金契約が成立し,預金者は解約をしない限り払戻しをすることができないのであり,契約上その分割払戻しが制限されているものといえる。そして,定期預金の利率が普通預金のそれよりも高いことは公知の事実であるところ,上記の制限は,一定期間内には払戻しをしないという条件と共に定期預金の利率が高いことの前提となっており,単なる特約ではなく定期預金契約の要素というべきである。他方,仮に定期預金債権が相続により分割されると解したとしても,同債権には上記の制限がある以上,共同相続人は共同して払戻しを求めざるを得ず,単独でこれを行使する余地はないのであるから,そのように解する意義は乏しい(前掲最高裁平成28年12月19日大法廷決定参照)。この理は,積金者が解約をしない限り給付金の支払を受けることができない定期積金についても異ならないと解される。」
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「数次相続が生じている場合において最終的な遺産分割協議の結果のみが記載された遺産分割協議書を添付してされた相続による所有権の移転の登記の可否について(通知)」

2017-04-06 20:29:05 | 不動産登記法その他
「数次相続が生じている場合において最終的な遺産分割協議の結果のみが記載された遺産分割協議書を添付してされた相続による所有権の移転の登記の可否について(通知)」〔平成29年3月30日付法務省民二第237号〕が発出されている。

 「可」とするものである。常識的な線である。

 ただし,基本的には,数次相続の中間者が取得する旨の合意の積み重ねの結果として,最終的な遺産分割協議の結果が合意される内容であるのが望ましいと言える。


【追記】
 ちょっとわかりづらいようなので,補足します。

第1の相続(被相続人A)
相続人B,C

第2の相続(被相続人B)
相続人D,E

第3の相続(被相続人D)
相続人F,G

 上記のような数次の相続が生じている場合に,被相続人A所有の不動産について相続登記が申請されるとき,相続人であるC,E,F及びGが遺産分割協議を行って,当該不動産をFが取得する内容の遺産分割協議書が添付されているときは,「年月日B相続,年月日D相続,年月日相続」を原因とするFへの所有権の移転の登記の申請が1件でされる場合であっても,当該申請は受理されるというものである。

 本来は,仮に1通の遺産分割協議書が作成される場合であっても,「第1の相続について,Bが取得する」「第2の相続について,Dが取得する」「第3の相続について,Fが取得する」という3つの合意がされるべきであるが,便宜認めて差し支えないというものである。
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「被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否について(通知)」の意味

2017-04-06 10:37:34 | 不動産登記法その他
「被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否について(通知)」〔平成29年3月23日付法務省民二第175号〕

「相続による所有権の移転の登記の申請において,所有権の登記名義人である被相続人の登記記録上の住所が戸籍の謄本に記載された本籍と異なる場合には,相続を証する市区町村長が職務上作成した情報の一部として,被相続人の同一性を証する情報の提出が必要であるところ,当該情報として,住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。),戸籍の附票の写し(登記記録上の住所が記載されているものに限る。)又は所有権に関する被相続人名義の登記済証の提供があれば,不在籍証明書及び不在住証明書など他の添付情報の提供を求めることなく被相続人の同一性を確認することができ,当該申請に係る登記をすることができる」

 被相続人の同一性を証する情報として,

(1)住民票の除票の写し
 本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。登記記録上の住所の記載があっても,本籍の記載のないものでは不可で,この場合,他の添付情報の提供が求められる。したがって,本籍の記載が必須。

(2)戸籍の附票又は除附票の写し
 登記記録上の住所の記載があれば,他の添付情報の提供は,もちろん不要。

(3)所有権に関する被相続人名義の登記済証
 登記済証の提供があれば,不在籍証明書及び不在住証明書など他の添付情報の提供は,不要。相続人全員からの上申書(印鑑証明書付)や固定資産税の納付通知書等も,提供することを要しない。

ということでしょうね。

 司法書士としては,諸々の書類を確認すべきであることは,言うまでもありませんが。
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