司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

学校法人等の解散と清算人の登記

2011-07-08 10:31:06 | 法人制度
 学校法人には,役員として,理事5人以上を置かなければならない(私立学校法第35条第1項)。理事のうち1人は,寄附行為の定めるところにより,理事長となる(同条第2項)。そして,寄附行為に別段の定め(同法第37条第2項)がなければ,理事長のみが学校法人を代表し,その業務を総理する(同条第1項)。登記される役員は,原則として,理事長のみである。

 しかし,学校法人が解散したときは,破産手続開始の決定による解散の場合を除き,理事がその清算人となる(同法第50条の4本文)。寄附行為に別段の定めがあるときは,この限りでない(同条ただし書)とされているが,逆に言えば,寄附行為に別段の定めがない限り,解散時の理事全員が清算人となる。清算人は,各自学校法人を代表するので,清算人全員の氏名及び住所が登記事項となる(組合等登記令第2条第4号)。

 元々,「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が施行される前の私立学校法第58条は,同整備法施行前民法第74条を準用していたので,評議員会において他人を選任することができたはずである。

 しかし,同整備法の施行により,私立学校法第58条が削除され,同法第50条の4が追加されたことから,寄附行為に別段の定めがない限り(通常は,ない。),評議員会において他人を選任することができず,解散時の理事全員が清算人となってしまう。

 結果として,清算人の登記の申請に際して,清算人となる者に関しては,「その者が解散時の理事であったことを証する書面」(解散時の理事全員の氏名及び住所を列挙する。)を添付する必要があることになる。

cf. 「私立学校法の一部を改正する法律の施行に伴う法人登記事務の取扱いについて(通知)」(法務省民商第496号平成17年3月3日法務省民事局商事課長通知)

 NPO法人においては,理事が各自NPO法人を代表するが,清算人に関しては,整備法施行前特定非営利活動促進法第40条は,整備法施行前私立学校法第58条と同様に,同整備法施行前民法第74条を準用していた。同整備法施行により第40条は削除され,第31条の5が追加されたが,同条ただし書は,「定款に別段の定めがあるとき,又は社員総会において理事以外の者を選任したときは,この限りでない」と規定しており,社員総会において理事以外の者を清算人に選任することができる。

 社会福祉法人においては,社会福祉法第46条の4ただし書は,「定款に別段の定めがあるときは,この限りでない」であるが,社会福祉法人の理事は,各自社会福祉法人を代表する(同法第38条本文)のであり,同条ただし書が「定款をもつて,その代表権を制限することができる」と規定しているだけであるから,整合的である。

 比較するに,改正にあたっての私立学校法第50条の4ただし書の立案趣旨が不明である。

 とまれ,現行私立学校法下における学校法人の解散に際しては,寄附行為の変更により,同法第50条の4ただし書の「別段の定め」を設けることを検討すべきということになろうか。
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会社分割無効の訴えの原告適格

2011-07-07 16:35:18 | 会社法(改正商法等)
 旬刊商事法務2011年7月5日号に,弥永真生「会社分割無効の訴えの原告適格」がある。東京高裁平成23年1月26日判決(金融・商事判例1363号30頁)の評釈である。

 上記東京高裁判決は,「新設分割について異議を述べることができない債権者は,会社分割無効の訴えの原告適格を有しない」と判示したものであるが,弥永教授は,これに異論を唱えている。

 すなわち,新設分割後も新設分割会社に対して債務の履行を請求することができる債権者は,新設分割について異議を述べることができないため,会社分割無効の訴えの原告適格を有しないとされた点につき,原告適格を認めてもよいのではないか,という論陣である。

 得心がいくものであり,興味のある方は,ぜひご覧ください。

cf. 平成23年6月27日付「『詐害的会社分割』と破産法による否認権の行使」
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成年後見と登記識別情報の提供の要否について(再掲)

2011-07-07 09:37:03 | 不動産登記法その他
 以下は,登記研究の質疑応答の構成をとっているが,私見である。


【○○○○】成年被後見人が所有する居住用不動産について所有権移転登記を申請する場合における登記識別情報を提供することの要否について

〔要旨〕成年被後見人が所有する居住用不動産について,成年後見人が家庭裁判所の許可を証する情報を添付して所有権移転登記を申請する場合には,登記義務者の登記識別情報を提供することを要しない。

問 成年後見人が,家庭裁判所の許可を得て,被後見人が所有する居住用不動産を売却し,所有権移転登記を申請する場合,家庭裁判所の許可を証する情報を添付するので,申請情報と併せて登記義務者の登記識別情報を提供することを要しないものと考えますが,いかがでしょうか。

答 ご意見のとおりと考えます。

 問題意識としては,登記識別情報の失念の場合に,本人確認情報の提供を要するか否か,である。
 破産管財人に関する先例,相続財産管理人に関する質疑応答の趣旨からすると,本ケースでは,これらの場合と同様に,家庭裁判所の許可を証する情報を添付するので,登記義務者の申請意思は担保される。また,居住用不動産の処分についての許可は,被後見人=不動産所有者であることが大前提であり,当該許可書は,申請人(被後見人)=登記名義人(不動産所有者)であること,すなわち本人確認資料として十分なものである。さらに,成年後見人が,目的である不動産に関する登記識別情報を入手し難い点も同様である。
 したがって,所有権移転登記を申請する場合に,登記義務者の登記識別情報を提供することを要せず,すなわち,本人確認情報の提供を要しないものと考える。

cf. 平成19年4月12日付「成年後見と登記識別情報の提供の要否について」

 ※ 元記事に若干補訂しました。
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商業・法人登記のオンライン申請における「連件」設定について

2011-07-06 07:07:11 | 会社法(改正商法等)
商業・法人登記のオンライン申請における「連件」設定について by 法務省
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00050.html

「法令により同時に申請しなければならないとされている申請以外の申請については,一括して送信することはできますが,「連件」の設定はしないでください」

cf. 平成23年5月13日付「会社以外の法人と会社との間の組織変更の登記の申請をする場合の申請方法について」
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不動産取引契約書の暴力団排除モデル条項

2011-07-05 18:28:20 | 不動産登記法その他
 警察庁が,不動産取引契約書の暴力団排除モデル条項及び解説を公表している。

 これらは,不動産流通4団体((社)全国宅地建物取引業協会連合会,(社)全日本不動産協会,(社)不動産流通経営協会及び(社)日本住宅建設産業協会)が策定し,各々の会員に導入を要請したものである。

○概要
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/bouryokudan/boutai9/gaiyou.pdf

○売買契約条項例
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/bouryokudan/boutai9/baibai.pdf

○媒介契約条項例
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/bouryokudan/boutai9/baikai.pdf

○賃貸契約条項例
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/bouryokudan/boutai9/chintai.pdf

○売買契約書のモデル条項例の解説
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/bouryokudan/boutai9/baibaikaisetsu.pdf
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監査役の法定任期の変遷

2011-07-05 17:02:41 | 会社法(改正商法等)
 平成13年改正前商法下の監査役の任期は,「就任後3年内ノ最終ノ決算期ニ関スル定時総会ノ終結ノ時迄」(同商法第273条第1項)であった。

 そして,平成13年改正商法(法律第149号=平成14年5月1日施行)により,「就任後4年内ノ最終ノ決算期ニ関スル定時総会ノ終結ノ時迄」(平成17年改正前商法第273条第1項)とされた。

 その際,次の経過措置が置かれた。

附則
 (監査役の任期に関する経過措置)
第7条 この法律の施行の際現に存する株式会社の監査役でこの法律の施行後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結前に在任するものの任期に関しては,この法律の施行後も,なお従前の例による。

 したがって,例えば,3月決算の株式会社においては,施行後最初に到来する決算期(平成15年3月期)に関する定時総会(平成15年6月)の終結後に就任する監査役から任期が4年となった。

 よって,このような株式会社で,平成15年4月開催の臨時株主総会において選任され,就任した監査役の任期は,上記改正附則第7条により,「就任後3年内ノ最終ノ決算期ニ関スル定時総会ノ終結ノ時迄」となる。すなわち,平成18年3月期に関する定時総会(平成18年6月)の終結の時までである。

 平成18年5月1日,会社法が施行されて,監査役の任期は,「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」(会社法第336条第1項)とされた。

 その際,次の経過措置が置かれた。

整備法
 (取締役等の任期に関する経過措置)
第95条 この法律の施行の際現に旧株式会社の取締役,監査役又は清算人ある者の任期については,なお従前の例による。

 よって,上記の監査役は,やはり平成18年6月開催の定時総会の終結の時に任期満了となりそうである(ただし,いわゆる「公開小会社」においては,平成18年5月1日に任期満了となったので,それ以外の株式会社の場合である。)。

 しかし,いわゆる「解凍理論」により,「公開会社でない株式会社」が会社法施行後に監査役の任期に関する定款の変更(例えば,「選任後10年以内」とする等)を行えば,会社法施行の際現に旧株式会社の監査役である者の任期も,「なお従前の例による」が解凍されて,「選任後10年以内」に伸長することができると解された。

 したがって,3月決算の株式会社において,平成15年4月開催の臨時株主総会において選任され,就任した監査役の任期が,極端な話ではあるが,平成25年3月決算期に関する定時株主総会(平成25年6月)の終結の時までである,というようなことがあり得る。


 監査役の法定任期の変遷に関するおさらいでした。監査役の改選が永年放置されている株式会社の登記の際には,上記の経過措置等をよく御確認を。
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厚生年金の未加入法人の調査に,商業登記簿を活用へ

2011-07-05 10:14:05 | 会社法(改正商法等)
毎日新聞記事
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110705k0000m010031000c.html

 公示されている情報であるにもかかわらず,いまごろ・・・という話。「法務省のシステム改修」とあるが,必要であろうか?
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わびすけ閉店

2011-07-01 23:12:56 | 私の京都
京都新聞記事
http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20110630000032

 同志社大学関係者には,寂しい出来事でしょう。
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路線価(平成23年分)

2011-07-01 18:26:28 | 不動産登記法その他
路線価
http://www.rosenka.nta.go.jp/

 路線価(平成23年分)が公表されている。
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「上場廃止は不当」と提訴

2011-07-01 11:20:36 | 会社法(改正商法等)
朝日新聞記事
http://www.asahi.com/national/update/0630/TKY201106300763.html

 元上場企業が,東証から上場廃止の処分を受けたのは不当であるとして,提訴した。4年も前の話だが・・。
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