前回は円安になった場合に、日本経済にはどんな影響がどのくらい出るのかといった基本的な問題について見てきました。
答えは、日本の場合10円、15円の円安では、そのまま消費者物価に影響してもせいぜい1~1.5%ぐらいということが解りました。
それなら、なんでアメリカでは7%とか9%とか消費者物価が上がるのかと言えば、それは便乗値上げとか、流通混乱で商品が足りなくなるとか、物価が上がったからとすぐに賃金も上がるとかいったことが重なるからでしょう。
日本の経済社会はもう少しお行儀がいいので、そういう部分は少ないようです。
ところで、問題は、もともとの原因である円レートの問題、円レートがなんで急にそんなに動くのかという事です。
今回の直接の原因は、お行儀の悪いアメリカなどで、物価が上昇し、インフレ抑制のために金融の引き締め、金利の引き上げをするのに対し、日本が金利は当分引き上げませんと明言したことがきっかけのようです。
それだけでは多分今回のような大幅な円安にはならないのでしょうが、現実に円レートが決まるのは、円とドルを売買する場、金融市場で、そこでは実需の売買より、国際投機資本のマネーゲームで動くカネの方がずっと大きいのです。
こうした金融市場でキャピタルゲインを得るためには、相場が動かなければゲームになりませんンからなるべく相場を動かすというマネーゲームの力学が働きます。
所謂「ボラティリティ」(変動幅)を大きくしてビジネスチャンスを大きくするというのはマネーゲーマーの本能でしょう。
ですから、多分、今回のように、急激に円安が進むと次の段階では、必要以上に円高に振れる可能性も出て来るわけです。
同様なことは株式市場での起きるわけで、ここまで円安になると輸出産業は為替差益が大きいだろうということになり、この所半導体不足などで冴えなかった自動車関連も今日は株価が上がっているようです。
国際投機資本などのマネーゲーマーは、為替も株のやっているわけですからこういう時は各種の相互関係を先読みして絶好のビジネスチャンスでしょうか。
しかし、実体経済の世界では、為替レートなどは安定している事がビジネスの安定のために大事ですから、マネーゲーマーとは、利害相反することになります。
中央銀行の立場としては、多分マネーゲーマーより実体経済の方が重要ですから、為替の変動はなるべく小さくする事を考える立場にあると思うのですが、その意味では、今回の日銀の対応には一部に「異次元金融緩和に固執し過ぎ」という声もあるようです。
アメリカが金利引き上げにきわめて積極的という状況の中では、日本もゼロ金利脱出のきっかけがつかめるかどうか、口先だけでもマネーマーケットの反応を見るといったことが必要という意見もあるようです。
確かに、いずれ日本も金利の正常化をしなければならないでしょう。その時、マネーゲーマーがビジネスチャンスを広げようと必要以上に円高に動かそうとする可能性もあります。
実体経済の安定の面から日銀にお願いしたのは、今円安で大騒ぎし、近い将来には行き過ぎた円高で大騒ぎといったことに以ならないような為替レートの安定策を巧みな采配で実現してほしいという事でしょうか。