tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

当面する経済問題を整理する:輸入インフレ対策は?

2022年04月21日 11時49分34秒 | 経済
この問題はすでに何回か触れているので簡略に整理したいと思います。
前2回で円安対応について整理しましたが、円安の場合も輸入価格が上がりますので、現実には、今回のように現象としては輸入インフレと一緒になります。
しかし、理論的には全く違うので、一緒に起きても、海外価格が上がる部分と円安の部分は分けて考えなければ本当の姿は解りません。
今回取り上げるのは海外価格が上がって輸入物価が上がる部分のことです。

典型的には今起きている原油の値上がりです。これは世界でほぼ一律に起きます。産油国でもガソリンは値上がりします。国内で安く売るより海外に高く売った方が得ですから、政府が介入しない限り国内価格も上がり値上がりは世界共通です。

当然日本でも原油輸入価格が上がりガソリンの価格が上がります。それで困る人がいるのという事で政府は補助金を出したりして弥縫策を取っています。

いずれ下がるからその時まで補助金をというのでしょう。通称{トリガー条項}という激変緩和措置もあり、値段が一定額を越えたら、ガソリン税を安くするという方法もあるのですが、いずれも政府が負担するという事で形が違うだけです。結局は税金などで国民負担になります

こう考えれば解りますように、原油の値上がり分は結局、日本経済として持ち出しにならざるを得ないのです。産油国への上納金か義捐金の様なものです。
という事で結局負担からは逃れられません。しかし、世界中同じように値段が上がるので、日本だけが不利というのではありません。 

ところでこの輸入インフレに対処する方法というのは、上がった分をきっちりと価格転嫁して、値上がりを我慢するしかないのです。
円安の場合は、輸出部門で為替差益がありますから、日本経済としては損得チャラで(輸出入同額として)ですが、原油価格の場合は日本経済としては純損失です。

我慢すればいいのですが、我慢しない場合もあります。アメリカやヨーロッパでは、物価(ガソリンなど)が上がるのだからその分賃金で補填しろと言う場合が多いようです。
日本も1973年の第一次石油危機の時は春闘で32%の賃上げをして20%を越えるインフレになりました。

インフレが酷くなると、国際競争力が落ちます。今のアメリカのように心配して金利を上げてインフレを抑えようとしています。それで不況になったりします。
日本は第一次石油危機の失敗に学び、第二次石油危機の時は春闘は平常に戻り、石油の値上がりは省エネ努力や節約我慢して、インフレにしませんでした。

一方、欧米諸国は第二次石油危機の時も賃上げインフレを続け、結局国際競争力を軒並み落としてスタグフレーションになりました。国際競争では日本が独り勝ちで、「ジャパンアズナンバーワン」ということになっています。

今回の原油値上がりでもアメリカ・ヨーロッパは、既にかなりインフレ状態ですが、日本の物価は多少上がり始めましたが、春闘の様子を見ても、比較すれば、ほぼ健全な安定の範囲でしょう。日本の労使は経験からよく学んでいるようです。

輸入インフレ対策というのは、それを賃金上昇に持ち込んで、賃金インフレにつなげてしまうかどうかが決め手です。アメリカは金利引き上げでそれをやろうとしていますが、上手く行くといいですね。

<蛇足>という訳で、日本経済は安定の範囲ですが(慌てているのは、参院選を控えた各政党などの責任者だけ?)、問題は、日本だけがあまり安定していると、また外国から、「日本はやり過ぎだ」「インフレにしないのだったらもっと円高を認めるろ」などと、プラザ合意の二の舞の憂き目をみる可能性も出てきますから、政府・日銀には「十分にご注意あれ!」