「知識経営のすすめ ナレッジマネジメントとその時代」
野中郁次郎・紺野登著 ちくま新書 660円+税
書斎の本棚に以前読んだナレッジマネジメントの書籍を発見。
そういえば、15年ほど前、日本が失われた十年の中にいた時、知識経営という言葉が流行しました。
その前は堺屋太一さんの「知価革命」というブームもありました。
その頃は、高尚なカテゴリーである「知識」さえあれば、日本の産業界は復活するかもしれないという期待も高いものがあったように記憶しています。
「SECIモデル」
「場のデザイン」
「創造パラダイム」などといった新しいコンセプトは、新鮮さとともに21世紀に向けての希望を抱かせたものです。
しかしながら、その後のニッポン企業は、さらなる窮地に追いやられることになります。
青い目の外国人がCEOにすわる、
韓国、中国、台湾メーカーに市場を席巻される、
中国にGDP2位の地位を奪われる、
相次ぐリストラで疲弊する国内企業・・・まさに正念場を向かえるようになったのです。
今にして思うと、
本当にナレッジはマネジメントできるのか?
知識だけで経営できるのか?
経営理論だけで、複雑なシガラミの中にある人と組織を動かせるのか?
現場から「場」だけを抽出して、産業の最前線を復活させることができるのか?
偉い学者の先生方の経営理論に組織の未来を託していいのか?
様々な疑問が浮かんできます。
サムソンやLG、ヒュンダイなどの韓国メーカー、ホンファイなどの中国系メーカー、いずれも独自のポジションを築き上げ、わが世の春を満喫しています。
今にして思えば、やはり戦略も必要、ポジショニング学派も必要・・・だと考える次第です。
「能率の父」と言われている経営学者であり能率技師であった上野陽一(1883~1957)は、テーラーもギルブレスの科学的管理法を振り出しに、生産性の向上に生涯を捧げました。
そして、上野の晩年にたどり着いたのが、「独創性」「創造性」のカテゴリーなのです。
欧米諸国と競争していくためには、生産性の向上のみならず、独創性・創造性を発揮して、世に存在しない新しいサムシングを創出していくことの重要性を唱えたのです。
国際会計基準、内部統制、コンプライアンス、競争戦略、マーケティング、グローバル経営・・・アングロサクソン的な香りがプンプン漂うコンセプト、方法論で占領されつつある日本人のアタマの中・・・。
国際ルールとして尊重はするものの、日本産業、日本企業の復活のためには、やはり生産性プラス独創性がキーになるように思います。
まずは、同質的な日本の組織の中で異質な人材をいかに活用し活躍させるか?
それが第一歩になると思います。