「経営センスの論理」
楠木健著 新潮新書 740円+税
「会社をよくするのに必要なのは、スキルよりもセンスを磨くことである」
なんとなく分かるようで分からない「センス」の話・・・。
センスを磨くためのスキルもあるような気もするし、スキルなきセンスも不毛な感じもするし・・・。
センスがないと言われるより、センスがあるといわれる方が嬉しい気もするし・・・。
同書は、「ストーリーとしての競争戦略」でブレークした楠木健一橋大学教授の3年ぶり新刊。と
いってもハーバードビジネスレビューのオンラインサイトで2011年~2012年にアップされていたもの。
やさしい表記で、気軽に読むことのできる一冊です。
目次
第1章 経営者の論理
第2章 戦略の論理
第3章 グローバル化の論理
第4章 日本の論理
一番おもしろかったのが、第2章「戦略の論理」。
「経営はすべて特殊解」とする著者が悩まれている頭髪の問題と体重の問題。
「攻撃は最大の防御 極私的な事例で考える」のセッションでは、大笑いをさせていただきました。
経営関係の書籍を読んで、ここまで笑ったのは初めてです。
楠木先生、ありがとうございます!
著者は、悩むのであれば、いっそ根源的にカットするという戦略を取ります。
頭髪がなくなってきたのであれば、いっそ坊主にする・・・
体重が増えてデブになるのであれば上半身だけムキムキマンになって全体のバランスをとる・・・
ご自身の体験をそのままストレートにストラテジックに分析、実行されるスタンスには感動さえおぼえた次第です。
ここだけでも読む価値アリです。
また、大学生の人気企業ランキングを「ラーメンを食べたことのない人による人気ラーメン店ランキング」とし、真に働きがいのある会社とは何か?について迫るあたりは、おもしろおかしく読むことができます。
一橋大学の名前を聞くと、10年ぐらい前に起こった王様ゲーム事件を想起します。
イノベーション、トレンドを勘違いされた一部の人たちのために、イメージダウン、ブランドが損なわれた典型的な事件だったと思います。
真面目で優秀な人材を金融界や商業界に多数輩出していた大学イメージが一瞬にして毀損されたのです。
女性が過度な反応をして大騒ぎになったのか、あるいは犯罪的なセクハラが行われたのか、真相は分かりませんが、その情報がメディアに乗った時点でアウトです。
また、大学側の説明もお粗末・・・コンプライアンスの教科書の逆を行く展開を見せ、これが社会科学を教えている学校なのか?と疑問を持った次第です。
個人的には、イノベーションは、突拍子もないフラッシュアイデア、天才肌の人材からもたらされるというよりも、ダイバーシティ、異文化融合、巡り合わせ、オープン、ソーシャルといった何かの組み合わせによって起こる確率が高まると考えています。
マイケル・ポーター教授と真逆のポジショニングをとる楠木教授には、まだまだ頑張っていただきたいところです。