「2020年の日本 革新者の時代 掘り起こせ日本の底力」
谷川史郎著 東洋経済新報社 1600円+税
著者は、野村総合研究所専務執行役員。
日本の近未来について、かなりポジィティブにとらえている一冊です。
ドラッカー博士の言われていたように「未来は、現在その端緒がある」ことを10のケースで具体的に紹介しています。
谷川さんが農業の専門家なのかもしれませんが、事例の10社のうち5社が農業関係。
意外な感じもしますが、「6次産業」というキーワードが普及してきたように、今や農業に、工業化、サービス化が掛け算として加わってきたのかもしれません。
著者は、日本の成熟化、老齢化・・・特に労働力人口が半減するという「憂鬱の曲線」を例にだし、それを乗り越えるためには、起業による産業再生しかないと説きます。
そして、現代の特徴ともいえる
「シェール革命」
「技術革新の端境期」
「長寿社会」
「インターネット普及による透明性の高い社会」
には、起業家のチャンスは十分にあると主張します。
目次
1.成熟の先にあるもの
2.心と心で結ぶ未来 金融・流通業
・涙を減らす保険 アニコム損害保険
・顔の見える金融 鎌倉投信
・超地域密着型サービスを極める ダイシン百貨店
3.発想力で未来を変える 製造業・静脈産業
・ロボットスーツが未来を変える サイバーダイン
・リサイクルで資源国家を目指す 日本環境設計
4.未来を耕す農業
・接ぎ木苗で農業に革命を起こす ベルグアース
・しぶとい農業 帯広市川西農協
・うまみ、風味を閉じ込めて差別化する農業
・農業技術のパッケージ化を目指す テクノーカ本部
・大規模農業を核にして日本最大の地域おこし フードバレーとかち
5.掘り起こせ 日本の底力
読んでいて面白かったのが、アニコム損害保険とダイシン百貨店。
そんなビジネスモデルがあったんだ、ジジババストア(失礼!)の極致はこれなんだと驚いた次第です。
同書のまとめは、「夢を信じ、夢を語る」ことの重要性。
豊富な未稼働資産、革新者、大企業の掛け算により、シュンペーターの言う「新結合」を実現しようというものです。
未来に何かを賭けようという若者に読んでいただきたい一冊です。