能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

労基署は、もう見逃さない あなたが書類送検される日 税務調査・査察のようになっていく労働基準監督署

2017年06月05日 | 本と雑誌
労働基準監督署が、本気モードです。

新入社員が長時間労働の末、自死にいたった不幸な電通事件・・・。
電通では、その前にも最高裁までいって敗訴した社員のメンタル不全による電通事件がありました。

その時の長大な判決文を読んだことがあるのですが、途中で涙を流さずにはいられない記述が多々ありました。
自分が広告代理店に勤務していた時のことが、オーバーラップしてくるのです。

今週の日経ビジネス2017.6.5号の特集。


労基署は、もう見逃さない あなたが書類送検される日

何とも過激なタイトルと副題です。

法学部の学生時代から読んでいた労働基準法。
特に、同法の第32条と37条。労働時間の強行規定です。
32条では、判例などを含めて読み込むと半日かかるくらいの長い長い法律。

明治時代に公布された工場労働者を守るために定められた工場法をベースとする労働基準法は、
時代の流れとともに改正を繰り返してきました。
工場であればベルトコンベアのスタートとストップ、炭鉱であれば入坑と出坑といった比較的分かりやすい労働時間算定ですが、現在は違います。

フレックスタイム制、変形労働時間制、裁量労働制など、様々な労働時間の制度があります。
このため、労基法第32条は改正され続けてきたのです。
パッチワークのような法の構成になっています。

ただし、労働基準法の原理原則は、1日8時間労働、週40時間労働、休日と休憩の確保・・・。
この範囲内であれば、ワークライフバランスのとれた日々を送ることが出来ると思います。

が、
この原理原則も、労使協定である36協定が締結されれば、実態的には青天井になっているという現実があります。
時間外労働の目安時間というものはありますが・・・。

この36協定により、労基法の理念が大きく崩されているというのが最大の課題であると考えています。

中小企業の経営者などは、「労基法を、そのまま守っていれば会社がつぶれちゃう。」「残業代払えば問題ないだろ。」「個人保証を付けて身体を張って借金しながら給料を払っているんだから、社員は必死で働け!」などと言います。
論外です。
そんな会社は、遅かれ早かれ社会から退場せざるを得ないと思います。

今回の日経ビジネス誌の特集では、2015年度の監督実績が図解されています。
定期・申告監督事業場15万件のうち、なんと69.3%が違反、1348社が99億円の未払い残業代を支払ったとのことです。

さらに、よくある間違いについての解説が分かりやすくまとめられています。

ちょっとくらいの違反なら大丈夫・・・
是正勧告にきちんと従えば大丈夫・・・
残業代を払っていれば大丈夫・・・
経営者は送検されないから大丈夫・・・
狙われるのは巨悪だけだから大丈夫・・・
故人は送検されても影響ないから大丈夫・・・
すべて、×バツです。

経営者、経営幹部必読の特集だと思います。

この特集の最後には、労基法に抵触しないために、さまざまな対応策も解説しています。

〇 36協定、特別条項を結ぶか裁量労働制を導入する
△ 健康経営を進め従業員を健康にする
△ 会社を10人未満の事業場に分割する
△ 全社員を個人事業主にする
◎ 労基署に相談に行く

全国にいる3241人の労働基準監督官。
労働基準法を中心に司法警察官の権限を持っています。
税務署の査察、調査のように、経営者にとっての脅威になるのではないかと思います。
労働基準監督官・・・政府が推進する働き方改革の最前線で動き始めています。

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