夏休みの読書・・・時間があるので、じっくりと熟読できる楽しみ・・・。
今日の課題図書は、「日本社会のしくみ」。
新書ながら601ページあります・・・新書版2冊分ですね。
ゆっくりスローリーディング。
休みは、やっぱりいいですね。
新書ながら601ページあります・・・新書版2冊分ですね。
ゆっくりスローリーディング。
休みは、やっぱりいいですね。
日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学
小熊英二著 講談社現代新書 1300円+税
小熊英二著 講談社現代新書 1300円+税
著者は、慶応大学総合政策学部教授。
「単一民族神話の起源」「民主と愛国」「1968」「社会を変えるには」等の著作があります。
今回の「日本社会のしくみ」では、日本社会の暗黙のルールとなっている「慣習の束」の解明が本書の主題であると著者は説きます。
目次
第1章 日本社会の「3つの生き方」
第2章 日本の働き方、世界の働き方
第3章 歴史の働き
第4章 日本型雇用の起源
第5章 慣行の形成
第6章 民主化と「社員の平等」
第7章 高度成長と「学歴」
第8章 「一億総中流」から「新たな二重構造」へ
終章 「社会のしくみ」と「正義」のありか
先行研究や学術論文を丹念に拾いながら、ニッポンの「慣習の束」を追求する著者。
砂をかむような努力に敬意を表したいと思います。
序章では、いきなり「日本社会の構成原理」について切り込みます。
①学歴が重要な指標になっている。ただし、重要なのは学校名であり、何を学んだかではない。
②次に年齢や勤続年数が重要な指標になっている。ただし、それは一つの企業での勤続年数であって、他の企業での職業経験は評価されない。
③その結果、都市と地方という対立が生じる。
④そして、女性と外国人が不利になる。女性は結婚と出産で、勤続年数を中断されがちだ。また、他国企業での職業経験が評価されないなら外国人は入りにくい。
これは、昭和の時代のことかと思っていたら、2018年6月に日経新聞の経団連についての記事(「経団連、この恐るべき同質集団」)から著者が導き出した仮説。
今、時代の最先端を走る企業で、こんなことをしていたら、瞬く間にお陀仏です。
失われた20年、いや、日本の失われた30年がなぜ起きたかが分かる気がします。
また、日本の生き方の類型として、「大企業型」「地元型」「残余型」の3類型があると著者は主張します。
大企業型・・・大学を出て大企業や官庁に雇われ、正社員・終身雇用の人生を過ごす人たちとその家族。
地元型・・・地元から離れない生き方。農業、自営業、地方公務員、建設業など。
残余型・・・それ以外の人たち。都市部の非正規労働者など。
それぞれの比率は、2割、3割、5割。
正社員は減っていない、日本の雇用のコア部分は変わっていないということですので、地元型と残余型の間での移動が繰り返されているということなのでしょう。
ほんの50年前まで、職工と社員の間に大きな差別、区別があったこと、女性は30歳前後で「停年」になっていたこと・・・著者の歴史研究からいくつかの発見がありました。
学歴、雇用を起点として、「社会」について考えさせてくれる一冊です。
若者たちについては、かなり絶望的な未来が予見されます。
お隣の国の若者たちが「ヘル朝鮮」と呼ぶすさまじい格差社会と格差の固定・・・ニッポンもそんな国になっていくんでしょうか?
今週号の日経ビジネス誌の特集は、「見直せ 学歴分断社会 先進企業は動いている」。
学歴を得ることは大事・・・ただ、大学だけ出ても、フツーの生活を送れる人たちは限られている・・・なかなか厳しい日本社会の断面を切り取っていました。
江戸時代は農工商といった自営業者が90%、それが現代ではサラリーマンが90%。
大企業と中小企業との処遇格差は大きく、大企業に入るためには大学へ・・・。
大学の数も、この数十年で2倍以上の780校にも膨れ上がり、学卒者であっても、今まで高卒者がやっていた仕事に就いている・・・少子化により廃校となる大学や公立化する大学まで出てくる始末。
雇われる人たちの急増ということが、日本の雇用、教育、福祉というものを大きく変えていったということなのでしょう。
著者が最後に提示する「正義のあり方」。
まだまだ昭和のフレーム、スキームからの延長線の思考なんじゃないかと思いました。
歴史や現状からの分析から、もう一歩踏み込んだクリエイティビテ、提言が欲しかったなあ。
たまには、学者先生の書いた本を読む・・・実務家として夏休みの暇つぶしには最適な一冊でした。