夏休み積読(つんどく)クリアランス・ウィーク。
朝から読書・・・一日3冊が目標です。
読みたいと思いながら、なかなか手をつけられなかった「貞観政要(じょうがんせいよう)」。
「じょうがんせいよう」と読みます。
激動の中国史の中で、300年という長期政権を築いた唐王朝の2代目皇帝太宗の言行録。
これを学んだと言われる徳川家康も三百年近くの徳川の世を実現しました。
教養としての「貞観政要」講義 時代を超えた組織・リーダーシップ論の古典
田口佳史著 光文社知恵の森文庫 740円+税
著者は、東洋思想研究家の田口佳史さん。
若き日に死の淵を彷徨ったり、ビジネスを起業したりした人生の裏も表も知り尽くした苦労人。
学者ではない実務家としての語りが大好きで、田口さんの解釈する「論語」「孟子」「孫子」は座右の書です。
難解と言われる「貞観政要」。
同書では、分かりやすい口語体で説明しています。
目次
第1講座 リーダーシップとは「腕っぷし」と「思いやり」
第2講座 自分の中に「ブレない軸」をつくれ
第3講座 人材登用の極意
第4講座 上司は「聞く耳」を持て 部下は「響く言葉」を持て
第5講座 「私欲」を去り「信頼」を呼び込め
第6講座 有終の美を飾るには
唐王朝の2代目皇帝太宗の言行録。
「貞観政要」そのコアとなるのが、4人の側近。
太宗・李世民は、589年に初代皇帝高祖の次男として誕生。
小さなころから利発なこどもだったようで、成人しても武人として父を助けます。
皇帝となっても、武断政治から文治政治に見事に転換させ、「貞観の治」という安寧の時代を実現させます。
太宗のすごさは、4人の側近を置き、彼らの直言に素直に耳を傾け、自らの身を正したり、政治に反映させたことです。
「諫議大夫」と呼ばれる4人の側近。
皇帝のブレーン、参謀、知恵袋です。
彼らは、歴史に精通し、短命だった秦や隋の過ちや四書五経からの知恵により、太宗に意見具申していきます。
魏徴、房玄齢、杜如晦、王珪・・・。
その中でも、魏徴という参謀は博覧強記・・・自分の命を賭して皇帝に意見具申していきます。
魏徴がまとめたとされる「十思九徳」は、まさに君主論。
マキャベリに勝るとも劣らない迫力があります。
田口さんは、これを見事に口語訳、超解しています。
現代十思
1.もっともっと強欲を欲したら、無一文のときを思って感謝の心に切り替えよ。
2.立派な施設や社屋が欲しくなったら、その投資は人材の確保に回そうと思え。
3.無謀な高望みを持たないためには、常に全社的実力向上を先行すべし。
4.順調に進めば進むほど「謙虚」を自分に言い聞かせよ。
5.快楽に遊ぶ癖がつきそうならば、もう少し会社を安定させてからと思え。
6.長い発展を望むなら、すべてに始めから終わりまで慎重さを失うな。
7.裸の王さまになりたくなければ、こちらから社内外を回って情報を収集せよ。
8.いわれなき誹謗中傷を受けたくなければ、常に他人には丁寧に対処すべし。
9.論功行賞を間違えないためには、喜びが去ってから行うべし。
10.罪を与え叱る時には、怒りが去ってから行うべし。
リーダーとしてのチェックリストとして使えそうです。
そして、九徳。
こちらも、なかなか鋭い突込みです。
1.寛にして栗(厳格さ)
2.柔にして立(テキパキ動く)
3.厳にして恭(横柄な態度をとらない)
4.乱にして敬(率先垂範でも平時は目立たない)
5.擾にして毅(いつも静か、でも芯がしっかりしている)
6.直にして温
7.簡にして廉(大まかにとらえるが、筋道はしっかりしている)
8.剛にして塞(剛毅な性格だが思慮深い)
9.彊にして義(実行力があるが暴走しない)
唐代の太宗の治世・・・それは教養(リベラルアーツ)によるマネジメントということも出来ると思います。
博覧強記・・・歴史と四書五経に精通した四人の参謀からの意見具申、直言。
それを対面のコミュニケーションでやり取りする様・・・すごいことです。
絶対権力を握る皇帝であれば、反対意見を持つ人間を飛ばしたり、殺したりすることも出来た時代・・・太宗は、逆に知恵やアイデアを吸い上げていきました。
また、貞観政要は、太宗皇帝は完全無欠な人間ではなく、強みや弱みもあったことがうかがい知れます。
「もっと、勉強しなくては・・・」などの言行は、太宗の人間味を感じられてとても微笑ましいです。
貞観政要・・・原典に当たりたくなってきました。
今度は、原田種成博士の貞観政要(上・下)にチャレンジしてみたいです。