メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ・・・。
「人に仕事をつける」から、「仕事に人をつける」へ・・・。
同一労働統一賃金、長時間労働是正、働き方改革法を契機として、戦後76年にして日本の人事労務制度の大変革が起こりつつあります。
データサイエンティストやDX人材など高度プロフェッショナル人材の確保、M&A対応、中高年の積み上げ型賃金是正のためにも、ジョブ型雇用が注目されています。
日経文庫からは、世界最大級の人事コンサル会社のマーサーから解説本が出されました。
平易に分かりやすく書かれており、とても読みやすい一冊です。
ジョブ型雇用はやわかり
マーサージャパン編著 日経文庫 900円×税
ジョブ型雇用の起点は、ジョブの明確化・・・ジョブディスクリプション(JD)が起点となります。
同書では、実務面から様々な助言を行っています。
「JDは機能によって使い分けるべき」
「会社と個人の合意形成が最重要」
「外部市場を意識した報酬制度へ」
「報酬の決定権は現場に」
「精緻さよりも、育成フィードバックを重視する」
「現場マネジャーに覚悟をせまる」・・・
ジョブ型雇用が導入されると、ラインの管理監督者は、本当に大変な状況になると思います。
人事部の権限や責任も軽減され、その存在の必要性も問われてくるように思います。
目次
第1章 ジョブ型雇用とは何か
第2章 ジョブ型雇用の基本形
第3章 経営戦略とのかかわり
第4章 導入にあたってのポイント
第5章 ジョブ型雇用がもたらすもの
第6章 競争力強化のためになすべきこと
ジョブ型雇用の導入にともない様々なサブシステムも必要になると同書は指摘します。
「リーダーは早期に選抜して育成する」
「組織の新陳代謝を行う」
「いまいる戦力で戦うか、その都度必要な戦力を集めるか」
「安定した環境ではメンバーシップ型に強み・変化に強いジョブ型雇用」
事例も豊富に組み込まれています。
野村證券の職務給、日本マイクロソフトのジョブデザイン、日立製作所のグローバル人事、ソニーのキャリア自律、メルカリのタレントマネジメント。
先進各社の取り組みが紹介されています。
職務給について、いろいろ研究、現場での仮説・検証を進めているのですが、欧米型の職務給Job-based Employmentをそのまま導入することは、ほぼ不可能。
日本流へのアレンジが不可欠です。
同書は、このあたりの背景や事情もしっかり踏まえており、好感が持てます。
人事労務担当者、経営者のみならず、新入社員や就社希望の学生にも読んでいただきたい身近な一冊です。