ベストセラーになった「生物はなぜ死ぬのか」の続巻が刊行されました。
著者の小林武彦さんは生物学者、東大教授。
生物学の視点から「老いる」こと、「死ぬ」ことを分かりやすく解説していきます。
生物学の難しい専門用語は使わず、学者ぶった文体もなく、とても面白く読むことができる一冊です。
なぜヒトだけ老いるのか
小林武彦著 講談社現代新書 990円
前著では、「死は進化のために必要である」という生物学的な死生観を打ち出しました。
今回の新刊では、「人間以外の生物は、老いずに死ぬ」ことを解説していきます。
ちょっとビックリ。
そういえば、サケだって、ゾウだって、野生の動物には、老後、余生といったものはありません。
著者は、「ヒトは、人生の40%が老後である」と喝破します。
目次
第1章 そもそも生物はなぜ死ぬのか
第2章 ヒト以外の生物は老いずに死ぬ
第3章 老化はどうやって起こるのか
第4章 なぜヒトは老いるようになったのか
第5章 そもそもなぜシニアが必要か
第6章 「老い」を老いずに生きる
第7章 人は最後に老年的超越を目指す
同書によると、動物の中で唯一「老後」を持つ人間は、太古以来、ずっと集団生活をしてきたヒト、社会的動物として生き延びてきた人間に起因していると言います。
集団を維持、仲間割れのないように調整できる長老というポジショニングが「老後」の立ち位置。
スターウォーズのヨーダのような立ち位置が求められていると言います。
著者は生物学者らしく単純明快に斬っていきます。
なぜヒトだけが老いるのか?
・・・それは死を意識し公共を意識するため。
死は何のためにあるのか?
・・・それは進化のため。
そして、最終章では、「老年的超越」というコンセプトを打ち出していきます。
マズローの欲求5段階説の自己実現の欲求のようですね。
著者の説く「老いの死生観」
1 元気な時は本能のおもむくままにやりたいことをやる(公序良俗に反しない範囲で)
2 老いを感じ始めたら、すこしずつ中心を自分から周りに広げる
3 シニアになり、無理のない範囲で公共に尽くす(選手兼コーチ)
4 最後は皆に惜しまれ天寿をまっとうしてピンピンコロリと死んでいく
同書では、子育てを支援する「おばあちゃん仮説」、「おじいちゃん仮説」も登場。
老人の居場所のあることの大切さを指摘します。
同書の結論は、「シニアの定義」だと思います。
著者によると、シニアとは、「知識や経験豊富で、教育熱心で、私欲が少なく全体の調整役としてバランスよく振舞える人」。
「徳のある人」
若い人が頼れる、いいおばあちゃん、いいおじいちゃんになれれば良いとまとめます。
確かにそのとおりだと思います。
「老害」などは絶対に×。
スターウォーズのヨーダのように若者をバックアップできる明るい爺さんになりたいものです(笑)。
老後の悲惨さを説く本が多い中、逆に老後が楽しくなるコンセプトが詰め込まれた同書。
老後が楽しくなりそうな一冊です。