確率論を経営の中に取り込む・・・なかなか面白いテーマです。
経営者、起業家は、経営の確率論をアタマの中で計算しつつ、日々の仕事・マネジメントに取り組まれていますが、その中で成功するのはごく一部。
また、成功確率の高いジャンルは、レッドオーシャンの場合も多く、なかなかイノベーションが生まれにくい状況にあるようにも思います。
「イノベーション戦略の論理 確率の経営とは何か」
原田勉著 中公新書 760円+税
著者の原田さんは、神戸大学大学院教授。
経営戦略論、技術マネジメントを専攻されています。
同書の中では、組織論も重要な論点として取り上げられています。
日本企業に多い組織能力活用型戦略からでは、なかなかイノベーションが産まれないことを指摘、今ある人的資源、組織能力は過去の延長線でなりがちで「足し算」の発想となると指摘。
イノベーションを創出するためには、組織能力構築型戦略が必須と主張します。
「それが出来ないから困っているんだ」と経営トップは言われるでしょうが、著者はプロ野球の例をあげ、新人を試合で使いながら育てていく戦略は極めて重要であると述べます。
目次
第1章 確率の経営 イノベーション確率最大化基準
第2章 イノベーション確率とは
第3章 イノベーション・ドメインの設定 探索領域を決定する
第4章 探索のデザイン
第5章 探索の焦点を管理する
第6章 イノベーション戦略の実行
大数の法則、取引コスト論への挑戦、ナイト流不確実性などが出てきますが、文系でも十分に理解できる解説がされています。
また、米国流のコーポレート・ガバナンス論が企業の活力を奪っていると指摘。
ビジネスパースンをホッとさせます。
わたしなどは、コーポレート・ガバナンス論を「会社ごっこ」と呼んでいるのですが、内部統制、稟議制度、各種手続きの可視化等を進めれば進めるほど企業力、組織力は落ちていくように思います。
経営と確率論を結びつける原田先生の理論・・・ぜひとも一読いただきたい一冊です。