保険をかけて賭ける
競輪研究家を自認する利根輪太郎の気分は、いつもプロの車券師であり、挑戦を続けていた。
結果は競輪初心者のままで、呆気なく敗退するのが常であった。
常勝は全く至難の業といってよかった。
実験の段階から実践へ一歩踏み出して、彼は白紙の状態に戻った。
正確に言えが軌道修正を迫られたのだった。
そのレースは有望な新人が人気を集めていた。
新人でレースに甘さがあるもののA級戦。
新人選手は思い切り先行し、そのまま逃げ切れると思った。
だが、新人選手のラインを内側に押し込んで、出させない。
走る格闘技なのだ。
頭突きもあり。
強引な押圧もあり。
ブロックして外側に弾くことも、内側に押し込むこともあり。
「新人なんぞに、簡単には勝たせないぞ!」老練のベテラン選手にも意地がある。
新人選手は直ぐに下がって巻き返すべきなのに、そのまま中断に留まっているのだ。
人気薄のラインは背後を確認しんがら、余裕の走りである。
8-4-6のラインのチャンスである。
1-3-9の新人ラインを内側に押し込んでいるのは、5-7-2ラインである。
競輪は走路の内側が有利であるが、外から被されてば力をロスする。
輪太郎は1-3を厚めに、1-5、1-2で勝負していた。
結局、新人選手は追い込んできたものの4着まで。
人気薄の4-8-6で決まり配当は3連単で50万円を超えた。
一番人気の車券など買うべきではない。
一番人気は競輪ファンの期待の大きさであって、結果は全く違う。
つまりファンの期待どうりに儲けさせてくれないから博打なのだ。
元競輪選手の解説、予想も当てにはならない。
スポーツ新聞の記者の予想も然り。
であるから、勝負をするならあらゆる展開を想定し、保険をかくなければならない。
S級戦は特に混戦となる。
選手間の力が拮抗しているのである。
人気ラインが7番手、8番手に置かれ捲り不発など常のことだ。
だから保険をかけて賭けるのである。
オッズは競輪ファンの心理を微妙に反映している。
ファンの迷いは多ければ、一番人気でも以外に高配である。
あるいは倍率が拮抗してくる。
勝負の軸になる選手が居ないケースなのだ。
人気のラインが逃がされてしまう場面も少なくない。
「少し我慢して待っていればいいのに」と輪太郎は呟くが、待ち切れず逃げてしまう。
競輪は逃げては、ほぼ勝てない。
多くのファンはライン同士で勝負が形成されると信じ込んでいる。
だが、マークしている選手が離れたり、別のラインの選手に割り込まれてラインがラインでなくなる。
飛び付きという戦法もある。
インで粘って番手(マーク)を奪うこともある。
単騎でかます選手もいる。
かますとはレースが緩んだ時に一気に逃げ戦法に出るのだ。
慌て踏み出しても間に合わない。
勝負どことで、100のスピードを80に落として、瞬時に100には戻せない。
力を余して負けてしまう選手もいる。
タイミングの問題であり、油断である。
先行する機関車役の選手は、もう少し配慮して走るべきなに、マークしている選手を置いて、1人で行ってしまう。
千切れたマーク選手は後方に置かれ戦意を失っている。
機関車役あってのライン形成なのに。
「輪太郎ちゃんダメだったじゃないの」スナック・スワンのママが外れた車券を輪太郎の鼻先でヒラヒラさせた。
「ママ、まだ、俺は修業が足らんのです」と輪太郎は頭を下げる。
展開が読めなかった悔いが輪太郎に強く残った。
次のレースで名誉挽回。
競輪研究家を自認する利根輪太郎の気分は、いつもプロの車券師であり、挑戦を続けていた。
結果は競輪初心者のままで、呆気なく敗退するのが常であった。
常勝は全く至難の業といってよかった。
実験の段階から実践へ一歩踏み出して、彼は白紙の状態に戻った。
正確に言えが軌道修正を迫られたのだった。
そのレースは有望な新人が人気を集めていた。
新人でレースに甘さがあるもののA級戦。
新人選手は思い切り先行し、そのまま逃げ切れると思った。
だが、新人選手のラインを内側に押し込んで、出させない。
走る格闘技なのだ。
頭突きもあり。
強引な押圧もあり。
ブロックして外側に弾くことも、内側に押し込むこともあり。
「新人なんぞに、簡単には勝たせないぞ!」老練のベテラン選手にも意地がある。
新人選手は直ぐに下がって巻き返すべきなのに、そのまま中断に留まっているのだ。
人気薄のラインは背後を確認しんがら、余裕の走りである。
8-4-6のラインのチャンスである。
1-3-9の新人ラインを内側に押し込んでいるのは、5-7-2ラインである。
競輪は走路の内側が有利であるが、外から被されてば力をロスする。
輪太郎は1-3を厚めに、1-5、1-2で勝負していた。
結局、新人選手は追い込んできたものの4着まで。
人気薄の4-8-6で決まり配当は3連単で50万円を超えた。
一番人気の車券など買うべきではない。
一番人気は競輪ファンの期待の大きさであって、結果は全く違う。
つまりファンの期待どうりに儲けさせてくれないから博打なのだ。
元競輪選手の解説、予想も当てにはならない。
スポーツ新聞の記者の予想も然り。
であるから、勝負をするならあらゆる展開を想定し、保険をかくなければならない。
S級戦は特に混戦となる。
選手間の力が拮抗しているのである。
人気ラインが7番手、8番手に置かれ捲り不発など常のことだ。
だから保険をかけて賭けるのである。
オッズは競輪ファンの心理を微妙に反映している。
ファンの迷いは多ければ、一番人気でも以外に高配である。
あるいは倍率が拮抗してくる。
勝負の軸になる選手が居ないケースなのだ。
人気のラインが逃がされてしまう場面も少なくない。
「少し我慢して待っていればいいのに」と輪太郎は呟くが、待ち切れず逃げてしまう。
競輪は逃げては、ほぼ勝てない。
多くのファンはライン同士で勝負が形成されると信じ込んでいる。
だが、マークしている選手が離れたり、別のラインの選手に割り込まれてラインがラインでなくなる。
飛び付きという戦法もある。
インで粘って番手(マーク)を奪うこともある。
単騎でかます選手もいる。
かますとはレースが緩んだ時に一気に逃げ戦法に出るのだ。
慌て踏み出しても間に合わない。
勝負どことで、100のスピードを80に落として、瞬時に100には戻せない。
力を余して負けてしまう選手もいる。
タイミングの問題であり、油断である。
先行する機関車役の選手は、もう少し配慮して走るべきなに、マークしている選手を置いて、1人で行ってしまう。
千切れたマーク選手は後方に置かれ戦意を失っている。
機関車役あってのライン形成なのに。
「輪太郎ちゃんダメだったじゃないの」スナック・スワンのママが外れた車券を輪太郎の鼻先でヒラヒラさせた。
「ママ、まだ、俺は修業が足らんのです」と輪太郎は頭を下げる。
展開が読めなかった悔いが輪太郎に強く残った。
次のレースで名誉挽回。