鈴木恵理子がこの日払った治療費は、化学療法室の費用である吐き気の予防のための点滴、制癌剤点滴、血液学的検査・免疫的検査・生化学的検査の・判断料、2万4000円と処方された調剤薬局の内服薬の制癌剤と、肝機能改善剤の薬剤費を合せて9000円余であった。
メールで大島和也が「勝負できるレースがある」と恵理子に期待を持たせたのである。
「そうか、制癌剤治療は高くつくんだな。今日は、3万3000円も払ったんだ。それは、大変だ。競輪で勝負しないとね」
「そうなのよ。頼りにしているわ」
恵理子が取手競輪場へ到着すると9レースの締め切り15分前となっていた。
心が急いた。
だが、特別観覧席の中央付近に大島和也と親しい競輪仲間の馬場哲夫が「9レースは難しい。人気は9-3ラインだけど、9番選手は、捲り(追い込み)に回る。5-1番ラインも捲り戦法。
前橋競輪場は330バンク(1周が330㍍)で短いので、2-8-7ライン逃げ粘るかもしれないよ」と言う。
また、大島は「9番選手と2番選手が踏み合う展開になれば、5-1ラインで一気に捲り返すよ」と強調する。
だが、恵理子は「単勝率33%の9番の信頼できる」と思っていた。
その9番選手と連携する3番選手の持ち点は111・00 9番選手の持ち点105・21。
3が軸になるはずと予想していたが、検討している時に、締め切りのベルがなったので、無理して買わずレースを見ることにした。
結果は9-3ラインは中断で5-1ラインと主導権争いでもつれ、軸に期待していた3番は後退する。
さらに9番も見せ場を作れずに失速する。
2-8ー7ラインが逃げ切る展開となる。
「買わなく良かった」と恵理子は胸をなで下ろした。
そして、「恵理子さん10レースが勝負」と大島が強気である。
3番選手は、前日の準決勝で本命で7着と敗退していた。
3-5の並び車券が1番人気だった。
3番選手は113・52の持ち点で断然。
3番軸にして4-1ラインと8-9ラインを絡ませた車券を買った。
3-5が一番人気で3・5倍、3-1ライン、3-2、3-7が10倍前後3-9が17倍、で車単車券は売れていていた。
だが、外科外来の番号が347番であったことから、3-4を3連単の軸とした。
結果は3-4-1で決まり、配当は5670円、1000円買っていたので、5万6700円となる。
「恵理子さん、ツキがあるよ。治療代が出たじゃないか」と大島和也が我がことのように喜ぶ。
「そうね、今日、取手に来て良かった」と恵理子は率直に喜ぶ。
4-1がラインでなく、筋違いなら1万円以上の配当になっていただろう。
恵理子は自動販売機で、コーヒーを買って飲んだ。
恵理子は花冷えで濃紺のダウンコート着てきたが、特別観覧席は暖房で蒸し暑くなっていた。
まさかのアクシデントで、アイスコーヒーを誤嚥してしまったのだ。
呼吸ができないほど咳き込む。
「冷たい飲み物は飲まないように」と看護師から注意を受けていたのだ。
大島和也の助けを求めようとしたが、声が出ず座り込んでしまう。
競輪ファンたちは、呼吸困に陥り片隅に座り込む恵理子に誰も気付かない。
さらに、冷たい缶コーヒーを握る手がしびれてきた。
ヒーヒーと異常な声を発して、気管支から呑み込んだものを吐きだそうと苦しみもがいていた。
5分くらいで何とかアクシデントから抜く出すことができた。
「私はバカね」涙も出てきて、ハンケチで目を抑えた。
みっともないことなので、そのような状況に陥ったことは大島にも告げなかった。
メールで大島和也が「勝負できるレースがある」と恵理子に期待を持たせたのである。
「そうか、制癌剤治療は高くつくんだな。今日は、3万3000円も払ったんだ。それは、大変だ。競輪で勝負しないとね」
「そうなのよ。頼りにしているわ」
恵理子が取手競輪場へ到着すると9レースの締め切り15分前となっていた。
心が急いた。
だが、特別観覧席の中央付近に大島和也と親しい競輪仲間の馬場哲夫が「9レースは難しい。人気は9-3ラインだけど、9番選手は、捲り(追い込み)に回る。5-1番ラインも捲り戦法。
前橋競輪場は330バンク(1周が330㍍)で短いので、2-8-7ライン逃げ粘るかもしれないよ」と言う。
また、大島は「9番選手と2番選手が踏み合う展開になれば、5-1ラインで一気に捲り返すよ」と強調する。
だが、恵理子は「単勝率33%の9番の信頼できる」と思っていた。
その9番選手と連携する3番選手の持ち点は111・00 9番選手の持ち点105・21。
3が軸になるはずと予想していたが、検討している時に、締め切りのベルがなったので、無理して買わずレースを見ることにした。
結果は9-3ラインは中断で5-1ラインと主導権争いでもつれ、軸に期待していた3番は後退する。
さらに9番も見せ場を作れずに失速する。
2-8ー7ラインが逃げ切る展開となる。
「買わなく良かった」と恵理子は胸をなで下ろした。
そして、「恵理子さん10レースが勝負」と大島が強気である。
3番選手は、前日の準決勝で本命で7着と敗退していた。
3-5の並び車券が1番人気だった。
3番選手は113・52の持ち点で断然。
3番軸にして4-1ラインと8-9ラインを絡ませた車券を買った。
3-5が一番人気で3・5倍、3-1ライン、3-2、3-7が10倍前後3-9が17倍、で車単車券は売れていていた。
だが、外科外来の番号が347番であったことから、3-4を3連単の軸とした。
結果は3-4-1で決まり、配当は5670円、1000円買っていたので、5万6700円となる。
「恵理子さん、ツキがあるよ。治療代が出たじゃないか」と大島和也が我がことのように喜ぶ。
「そうね、今日、取手に来て良かった」と恵理子は率直に喜ぶ。
4-1がラインでなく、筋違いなら1万円以上の配当になっていただろう。
恵理子は自動販売機で、コーヒーを買って飲んだ。
恵理子は花冷えで濃紺のダウンコート着てきたが、特別観覧席は暖房で蒸し暑くなっていた。
まさかのアクシデントで、アイスコーヒーを誤嚥してしまったのだ。
呼吸ができないほど咳き込む。
「冷たい飲み物は飲まないように」と看護師から注意を受けていたのだ。
大島和也の助けを求めようとしたが、声が出ず座り込んでしまう。
競輪ファンたちは、呼吸困に陥り片隅に座り込む恵理子に誰も気付かない。
さらに、冷たい缶コーヒーを握る手がしびれてきた。
ヒーヒーと異常な声を発して、気管支から呑み込んだものを吐きだそうと苦しみもがいていた。
5分くらいで何とかアクシデントから抜く出すことができた。
「私はバカね」涙も出てきて、ハンケチで目を抑えた。
みっともないことなので、そのような状況に陥ったことは大島にも告げなかった。