日刊スポーツ
記者生活30年超の高原寿夫・編集委員が、今シーズンの矢野タイガースに鋭く迫ります。
<DeNA2-9阪神>◇5日◇横浜
「能見さんって、実は人間じゃないのでは…と思ってるんですよ。ボク」
能見篤史についてそう話したのは巨人の若き主砲・岡本和真だ。前回の巨人戦(甲子園)で雑談しているとき口にした。
「だってボクが子どものとき、テレビで見ていた能見さんがそのままの姿で今、投げていて対戦したりしてるんですよ。能見さんがマウンドにいるのを見ていつも感じてるんです」
何を言いだすのかと思ったが説明を聞いて納得した。23歳の見立てについては同感だ。今年5月28日で40歳になった能見だが、見た目は若い頃と変わっていない。180センチ、73キロの体形も不変。右足を豪快に上げ、腕を振る投球フォームも変わらない。
近くで見てもシワなど顔にもほとんど変化がないように思える。いわゆる「若見え」だ。中高年なら男女を問わず気になるところだ。聞かないといかん。能見投手、若見えの秘密は?
「そうですかね。特に何もしてないですけど。まあ体形が変わっていないんで。そこが影響しているのかもしれませんね」
普通は年齢とともに体は緩む。しかし能見は変わらない。そういう体質か? そんな疑問に不思議な“秘話”を明かした。
「それがね。逆らしいんですよ。5年ほど前にDNA検査をしてもらって。その結果は…」
ドジャースで投げる前田健太の紹介で、体重が増えにくいチームメート数人(名は秘す)とあるクリニックに出向き、DNA検査をした。その結果は「太りやすい体質」だったという。
「そんな結果が出たのはボクだけ。太らないのは代謝が良いというか、それだけエネルギーを使っているのではということでした」
それはそれでやはり一般的ではない。そして能見は野菜を食べないという。
「先に野菜から食べると太りにくいと言うじゃないですか。吸収しにくいって。だから食べないんです。野菜は。体重が減ってしまうとやはり困るので」
40歳を超えても150キロ近い速球を投げるベテランは4日DeNA戦で筒香嘉智に痛恨のサヨナラ被弾した。それでも帰路は冷静な表情だった。そしてこの日、さらりと1イニング無失点。こういう超人的投手がいるのだから阪神はもう少し勝ってもらわないと、と思う。「Aクラス攻防」のマツダスタジアムでも出番は来るか。(敬称略)
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9月4日の虎だ虎だ虎になれ!
<DeNA7-5阪神>◇横浜
横浜スタジアムは涼しかった。この日の関東地区は気温が下がった。横浜も最高気温27度だったらしいが、もっと涼しい感じだ。大阪の自宅に電話すると「こっちは蒸し暑いで?」。同じ日本、都市部でもこんなに違うのだから不思議だ。
涼しくなると体はラクになるがなぜか寂しくなるのは子どものころからだ。「夏の終わり」は数多い歌のテーマにもなっている。人は夏にいろいろなものを象徴させる。この日、評論を担当している権藤博はこんなことを言った。
「そうかなあ。私は昔から秋が一番好きだよ。今年も仕事が終わったと思うからね。我々の世界、野球人はみんなそうじゃないか」
ペナントレースも9月に入り、大詰めになってきた。昔なら多くのチームが消化試合になっている時期だ。クライマックスシリーズ(CS)が導入され、批判もあるが最後まで興味を持てるようになった部分はやはり意味があると思う。
阪神が18年ぶりのリーグ優勝を決めた03年。3度の食事より野球が好きだった闘将・星野仙一はよくこんな話をした。
「シーズンは130試合とか140試合とかあるんだけどな。ほとんどの場合、意味があるのは残り20試合ぐらいまでなんや。その時点で順位は決まっとるからな」
03年は140試合制。当時はCSはなかった。翌04年にパ・リーグが新たな形でプレーオフを復活させた。それがCSになり、セも採用しているのはあらためて書くまでもない。
指揮官・矢野燿大の1年目、阪神はAクラスに入れるかどうか。残り20試合を切り、瀬戸際のところまで来た。同時にやはり闘将の別の言葉を思い出す。
「終盤になったら結果オーライでええ。春先は勝ち方、戦い方がある。しっかり戦わないと勝ち試合でも俺は褒めない。だけどな。9月になったら関係ない。どんな不細工な試合でも勝てばええんやから」
DeNAに痛恨のサヨナラ負けを喫した。4点を先制したが強力打線に4発で逆転された。DeNAは今季ジャスト140発。阪神は犠打を決められず、けん制で殺され、盗塁を狙って刺された。それでも結果的に勝てばいいのだ。だからこそ勝利が必要だ。
3位広島も最下位ヤクルトにサヨナラ負け。その広島と週末に3連戦がある。もう少し夏を楽しむために。5日の試合が重要だ。(敬称略)