9/5(木) 5:04配信 THE PAGE
なぜ阪神は守護神の藤川を温存して横浜DeNAにサヨナラ負けを喫したのか?
阪神はストッパーの藤川を温存したまま横浜DeNAにサヨナラ負け
阪神が5-1のリードを守れずに横浜DeNAにサヨナラ負けを喫した。5-5で迎えた延長10回一死一塁から筒香のプロ入り4本目となるサヨナラ2ラン。この日は、逆転優勝を狙う横浜DeNAと、CS進出を狙う阪神の互いの対象チームである首位の巨人、3位の広島が敗れて絶対に負けられないゲームだった。チームモチベーションの差が露呈したとも言えるが、阪神には、ストッパーの藤川を温存したまま負けるベンチの采配ミスがあった。横浜DeNAは巨人に2.5差に接近、阪神は広島とのゲーム差を2.5のまま縮めることができなかった。
重なった配球ミスに制球ミス
ゲームを支配していたのは阪神だった。6回の攻撃が終わって5-1。だが、この日、8月7日の広島戦以来となる4番に戻った筒香は、「点差が開いてもあきらめない。負ける雰囲気がなかった」という。
阪神バッテリーが隙を見せた。6回無死一塁から2番に入っていたソトに対して先発の秋山がカウント3-0から中途半端な高さにカットボールを投じた。
外国人選手のソトだけに限らず、積極的な横浜DeNAは、このカウントからでも好球必打を推奨している。バックスクリーン右へ2点差とする35号2ラン。さらに続くロペスの平凡な三塁ゴロをさばいた北條の一塁への送球がそれた。そこで秋山から島本へ投手交替。2番手の島本は、筒香に四球を与え、無死一、二塁から佐野に初球をライト線に引っ張られてついに1点差にされた。
阪神は8回から勝利の方程式に入ったが、ここまで被本塁打ゼロだったジョンソンが佐野に同点アーチを浴びた。今季の阪神はハマスタの狭いバッターズフィールドを有利に使い、6勝4敗と勝ち越していたが、ついに逆手に取られた。阪神は9回にドリス、そして延長10回に40歳のベテラン、能見をマウンドへ送った。
ベンチの最大の采配ミスは、この能見の選択だ。打順はソト、ロペス、筒香。なぜ“守護神”の藤川ではなく能見だったのか。藤川は、心技体共に準備は整っていた。先攻めの阪神からすれば「リードして藤川」の考えだったのかもしれないが、横浜DeNAの2、3、4番の“最強の並び”を乗り越えなければ、そこでゲームは終わる。「いいピッチャーから投入する」は延長戦の原則だ。監督として藤川という切り札を温存したままの敗戦は最悪である。
能見はソトを三振に取ったが、ロペスを歩かせた。打席には、左対左ながら、今季2打数2安打と相性の悪い筒香。カウント2-1から逆球となったスライダーが真ん中に寄った。鈍い音。打球はライトへ高々と舞った。
打った瞬間、筒香はバットを投げベンチへ向かって両手を掲げた。
「(打った瞬間)いったかなあと思いました。後ろに今日ホームランを打っている佐野君がいたのでなんとかつなごうと思って打席に入っていました」
筒香の声がスタジアムに響き渡った。
筒香は、前の打席は高めの釣り球を振ってスイングアウト。この打席もストレートへの反応は立ち遅れていた。ここは変化球を見せてから定石通り長打警戒の配球である外のストレート勝負でいくべきだったのだ。
残り20試合を切った。もう後がない戦いである。
藤川が打たれた、或いは、藤川の後の投手が打たれた。まだそれなら納得がいく。藤川を温存したままの敗戦はチームの士気にかかわる。
阪神のベンチワークの見えないミスはまだあった。
追加点が欲しかった7回、先頭の高山がヒットで出て無死一塁。打席に入った北條は、バントの構えだったが、横浜DeNAの4番手、三嶋のコントロールが乱れてストライクが入らない。カウント3-0。続く4球目を北條はバントの構えのままストライクを見逃した。あくまでも推測だが、北條の見逃し方を見る限り、ベンチは「待て」のサイン。ベンチが欲を出したのだ。カウント3-0からのストライクは、最もバントが容易だと言われている。
走者を得点圏に進めたいのならば「待て」ではなくバントのサインである。ストライクを取られて3-1になると、あと1球しか余裕をもってバントはできない。案の定、北條は、次の外のボールをファウル。フルカウントになってもベンチは打たさず続けてバントのサイン。硬くなっていた北條は、バットの先にボールを当てて再度ファウルで三振となった。
北條の技術が足りなかったことも事実。だが、ベンチワークも北條の能力を引き出すための最善で繊細なものではなかった。
“たられば”はプロの世界にないが続く原口にヒットが出た。一死一、二塁となり、ここで代打・鳥谷。先月29日に“引退勧告”を受けて以来、初めての打席である。今季限りで、縦じまのユニホームを脱ぐ鳥谷に横浜ファンも拍手を送った。ハイライトシーンだったが。結果は、ショートゴロ。5番手の左腕・石田に木浪も凡退し追加点を奪えず、このことが後々響いてくることになる。
さらに細かいミスもあった。
8回に先頭打者として高山の持つ球団の新人最多安打記録にあと1本に迫る135安打目を放った近本が石田の牽制で刺された。全力で頭から滑って帰塁していればセーフだっただろう。だが「投げてこない」と早合点したような中途半端な帰塁でアウトになった。
実のところ横浜DeNAも、首位の巨人を追撃にするには心もとない大雑把な野球をしていた。先発の井納は、投手の秋山にタイムリーを許し、一気に勝負をつけなければならなかった6回無死満塁から追加点を取れず、少しイレギュラーがあったといえ、6回満塁の場面で大和が正面のゴロに足が動かず弾いてしまうミスもあった。
逆転首位獲りには物足りなさを露呈したが、筒香の一発で、すべてが帳消しになり、「スペシャルな1日になった」と、ラミレス監督はエキサイトしていた。
横浜DeNAは4連敗の首位の巨人とのゲーム差を2.5に縮め、阪神は3位の広島とのゲーム差が2.5のままになり、5位の中日に背後から2.5差で迫られることになった。
偶然にも「2.5」という数字が3つ並ぶことになったが、その数字に表れない中身には、ずいぶんと差があるようだ。
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