色ずく銀杏に秋の深まりを感じる。
あの日、校庭にも銀杏は色濃く舞っていた。
青春の日の甘くも苦い、思い出は深くもある11月の秋にまつわる。
深く好きになったその人は、銀杏葉が風に舞うのを、愛し気に見つめていた。
思わず、魅惑的で物憂げな横顔に魅せられる。
「絵になるな」と思わずカメラを構え、シャッタを切る。
シャッタ音に気付いた彼女の美しい顔は感情を露わにして突然、険悪になる。
「盗み撮りなのね。止めて!」鋭い声の響きとともに、目検にしわが寄せられ、彼女のこの上ないような不快な心情が刻まれていた。
私は、たじろぐともに言葉を全く失う。
そして、自身の行為を深く悔いるとともに、もうこれで彼女との心の絆は完全に失われだろうと落胆した。
そして、卒業式を間近に控えたある日。
「あの時は、ごめんなさい。もしも、あなたが、私を映した写真がまだ手元にあれば、ぜひ、いただきたいのです。どうか、よろしくお願いいたします。心待ちにしています」
自宅に届いた、彼女からの葉書に、私の心は複雑な思いとともに、歓喜して踊る思いであった。
2022年11月11日