なぜ働くのか

2022年11月24日 07時41分44秒 | 社会・文化・政治・経済
 
 
「お金のため」を超えて、働く意味を発明しよう。

なぜ、不満を抱えながら働く人がこんなにも多いのだろう? 問題は「人間は賃金や報酬のために働く」という誤った考え方にある。
今こそ、仕事のあり方をデザインしなおし、人間の本質を作り変えるとき。新しいアイデア・テクノロジーが必要だ。
そうすれば、会社員、教師、美容師、医師、用務員、どんな職務にあっても幸福・やりがい・希望を見出だせる。
仕事について多くの著書を持つ心理学者がアダム・スミス的効率化を乗り越えて提案する、働く意味の革命論。

「本書は、AI時代における僕たち人間のサバイバルそのものを根源的に問う一冊でもある」
……松島倫明〔編集者/NHK出版編集長〕(解説冊子より)

Small books, big ideas. 未来のビジョンを語る。
人気のTEDトークをもとにした「TEDブックス」シリーズ日本版、第5弾。

「なぜ、私たちは働くのでしょうか? なぜ、私たちは刺激に満ちた冒険を次から次へと味わう生活ではなく、
朝起きるたびにベッドから這い出す毎日を送っているのでしょうか?
実に馬鹿げた質問だ、働くのは生活のために決まっているーーたしかにそのとおりです。
でも、それがすべてでしょうか?
もちろん、そうではありません。なぜその仕事をするのか、仕事にやりがいを感じている人々に尋ねてみると、
お金のためという答えはほとんど返ってきません。
賃金以外の働く理由を並べれば、そこには長く、実に興味深いリストが展開されるのです」(本書より)
 

内容(「BOOK」データベースより)

なぜ、不満を抱えながら働く人がこんなにも多いのだろう?問題は「人間は賃金や報酬のために働く」という誤った考え方にある。今こそ、仕事のあり方をデザインしなおし、人間の本質を作り変えるとき。新しいアイデア・テクノロジーが必要だ。そうすれば、会社員、教師、美容師、医師、用務員、どんな職務にあっても幸福・やりがい・希望を見出せる。仕事について多くの著書を持つ心理学者がアダム・スミス的効率化を乗り越えて提案する、働く意味の革命論。

著者について

[著者紹介]
バリー・シュワルツ(Barry Schwartz)
アメリカ・ペンシルベニア州のスワースモア大学教授で、専門は心理学。これまでに著書10冊、雑誌論文は100本以上を数える。
2004年、『なぜ選ぶたびに後悔するのか 「選択の自由」の落とし穴』を出版、『ビジネスウィーク』『フォーブス』両誌で年間ビジネス書ランキングトップ10に入り、25の言語に翻訳される。
以来、同書のメインテーマについて様々な角度から各媒体で記事を執筆(『ニューヨーク・タイムズ』『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』『USAトゥデイ』『サイエンティフィック・アメリカン』
『ハーバード・ビジネス・レビュー』『ガーディアン』など)。
2005年にTEDで講演し、以降多数のラジオ・テレビ番組に出演(「Morning Edition」「Talk of the Nation」「Anderson Cooper 360°」など)。
2009年、知恵の喪失についてTEDで講演、次いで『知恵 清掃員ルークは、なぜ同じ部屋を二度も掃除したのか』を同僚のケネス・シャープとの共著で出版した。

[訳者紹介]
田内万里夫(たうち・まりお)
1973年生まれ。テンプル大学教養学部英文学科卒業。1998年より翻訳出版の版権エージェントとして勤務する傍ら、
2001年よりマリオ曼陀羅の名義で画家としての活動を始め、国内外のギャラリー等で発表を行なう。
『LOVE POP! キース・ヘリング展 アートはみんなのもの』(伊丹市立美術館、2012年)において、壁画プロジェクト「キースが願った平和の実現を願って」を担当。
『心を揺さぶる曼陀羅ぬりえ』(猿江商會、2015年)ほか、イギリス、台湾で出版(イタリアでも出版予定)。
 
 
 
 
「なぜ働くのか?」
本書のタイトルとなっている、この問いを投げかけられたら、多くの人の頭には「お金のため、生活のため」という答えが思い浮かぶだろう。
雇用する側・される側の双方が多かれ少なかれ同じ答えを想定しており、現代の労働環境は基本的にこの発想(アイデア)に則ってデザインされていることは誰も否定できないだろう。

これに対して本書は、社会学や心理学の研究データを交えながら、「人間は賃金や報酬のために働く」という考え方が孕んでいる問題を明らかにしていく。
その問題とは、まず、仕事によって得られる金銭的インセンティブの多寡が、個人の労働意欲や仕事に対する主体性、さらには人生の充足の度合いと結びついていかないことだと本書は指摘する。
インセンティブに頼って労働意欲を向上させようとする試みは、むしろ「良い仕事」に対して破壊的に働き、(経営者が望むのとは)正反対の結果に導かれることが多いということも、数々の実例を引き合いに語られる。
さらに、「人はお金のために働く」というアイデア(その源泉を本書では18世紀の経済学者アダム・スミスへと遡る)がいかに社会制度に根深い影響を与え、その中に生きる人間の「本質」を規定しているかを考察していく。
ここで重要なのが、筆者は人間の「本質」というものを、生得的な、不可変のものではなく、「社会の求めによってあり方を変える」ものとしている点だ。

要約すると、この2世紀にわって「人はお金のために働く」というアイデアが現代社会の仕事のあり方を規定し、それが資本主義の発展を支えた一方、「仕事がもたらしうるそれ以外の喜び」は無視され、黙殺されてしまった。
その結果として、大多数の人々は仕事に対する自主性を失い、そこに意味や希望、やりがいを見いだせなくなっている。
そのような現状を捉え直して、我々はより望ましい「仕事のありかた」をデザインし直す必要がある。
それは、人間の本質を新たに作り変えるということでもある……。以上のようなところが本書の骨子だと言ってよいだろう。

本書は「読めば、なぜ働くのか? という理由が見つかりますよ!」といった安直な自己啓発本の類ではない。
むしろ、その答えは、あらかじめ存在していた何かを「発見」するというより、いま新たに「発明」されるべきでないかという問題提起の書である。
もっとはっきりと言えば、「私、なんのために働いてるんだろ……?」と悩んでいる読者にわかりやすく答えが与えられるわけではない。
だが、その「なぜ?」という疑問を深めて、よりよい答えを求めるための道筋に読者を誘い出すには、十分に刺激的かつ示唆に富んだ内容となっている。個人的には、経営者をはじめとする、労働環境を提供する側の人にぜひ読んで欲しいと感じた。
 
 
 
われわれにとって仕事とは、対価を得るためだけのものではなく、仕事そのものに対してやりがいや意味、積極的な関わりを求めることが可能となるものだ。仕事を「義務」「実績」とは捉えず、「使命」と考える人にとって仕事とは、人生におけるもっとも重要なもののひとつであり、働くことに喜びを覚え、自己のアイデンティティにとって不可欠なものと位置づける。
使命感を持って働く人々は、自分の仕事から大きな満足を得ているのだ。
 報酬による動機付けや平準化された単調な作業などは、従業員の仕事に対する情熱とやる気を損ない、満足を奪い去るものである。
監督者による行き過ぎた管理、ルーティン化された業務、物質的なインセンティブといったものに対する過剰な依存が、人々の賢明な判断力を磨く機会を失わせ、人々を精神的な貧困へと導いたとし、労働の場の変革を著者は訴える。
 本書で述べられる、仕事のやりがいとは必ずしも待遇面に左右されるものではないという内容は、個人的な経験からしても大いに納得できるものだ。責任感を持って仕事に臨む。同僚から感謝される。
部下や後輩が成長する。顧客の利益に貢献する。いずれも、報酬や出世とは別次元の達成感を味わえるように思う。
われわれの労働観を再確認できる1冊だ。
 
 

「なぜ働くのか」という身もふたもないタイトルの本書、そんなのお金を稼ぐために決まっているじゃないかと思うし、実際にそうなのだが、でもどうせ働くなら気持ちよく働きたいと誰もが思うだろう。

「いやいやそんなこと言っても気持ちよく働ける仕事に就けることなんてそうそう無いさ、理想と現実は違うよ」と、まあ、普通はそう思って諦めているということもあるだろう。
大抵の人は興味のないことを嫌々やって仕事の時間が通り過ぎるのを我慢して待っているに違いないと。
だから人に効率よく仕事をさせる為には給料を上げるか、ノルマを設定して罰を与えるか、あるいは仕事を細分化して誰でもすぐにできるような工夫をするか、などという考えに至る。

でも、その前提となっている「人は仕事を嫌々やるものだ」という考え自体が間違っていたとしたらどうなのか、というのが本書で語られていること。

本書に書かれていることはこれから就職しようとしている若い人たちの指針となり得るし、また、実際に働いている人には自身の働き方を再考するきっかけにもなるだろう。
人生のほとんどの時間を使って仕事をしているのだから、働き方を変えるということは人生を変えるということに等しい。
多くの人がより良い人生を歩むようになれば世の中は今よりもずっと生きやすくなるだろう。
 
 

労働の時間、量(成果)を金銭に換算することは仕事に対する使命感や喜びを損なう点は意外でしたが、仕事以外の社会的な負担を例に上げて社会的動機と金銭的な動機はぶつかり合うという説には納得できるものがあります。
仕事そのものの目的を理解して喜びを持って働くというのは理想ですが、相対的な額、絶対的な額があまりにも低いと感じられる場合は、使命感を持ち続けられる人は稀有なのではないかとも感じました。
本書で記された人物は人生に対する優れた資質を持った特別な人物で、大多数はそうではないという事と本書に記された理論の折り合いをつける方法が課題として残されていると思いました。

残業学~明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?

2022年11月24日 07時41分44秒 | 社会・文化・政治・経済
 
 
残業学~明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?~ (光文社新書) by [中原 淳, パーソル総合研究所]
 
 
超高齢化社会を迎え、あらゆる仕組みをアップデートする必要に迫られている日本。
多様な人々の力が鍵となる中、それを拒む障壁が、日本独特の働き方「残業」。
政府も企業も「働き方改革」を叫ぶ今、必要なのはそれぞれの「持論」ではなく、データを基にした「ガチ」な対話。一体なぜ、日本人は長時間労働をしているのか? 
歴史、習慣、システム、働く人の思い――二万人を超える調査データを分析し、徹底的に残業の実態を解明。
 

中原 淳

立教大学経営学部 教授。大阪大学博士(人間科学)。北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院 人間科学研究科、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授等をへて、2006年より現職。

「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、組織開発を研究している。専門は経営学習論・組織行動論。立教大学大学院 経営学研究科 経営学専攻 リーダーシップ開発コース主査、リーダーシップ研究所副所長をつとめる。

研究の詳細は、Blog:NAKAHARA-LAB.NET(http://www.nakahara-lab.net/)。Twitter ID : nakaharajun

【最近のその他の共著】

「職場学習論」「経営学習論」「人材開発研究大全」(東京大学出版会)「企業内人材育成入門」(ダイヤモンド社)、「ダイアローグ 対話する組織」(ダイヤモンド社)、「リフレクティブマネジャー」(光文社)、「フィードバック入門」(PHP新書)など多数

 

「現状はそんな理想的ではない!」といった意見も多数あると思いますが、一旦それを横に置いておいてページをめくってみませんか?

残業を複眼的に捉えることでみえてくる何かがあるはず。
最終章の著者の言葉に全てが集約されています。
「よき働き方」は、「ライフ」を精神的にも経済的にも支えます。
 
 
 
残業学。働き方改革に対して否定的な意見が多い社内で、(かくいう私もその一人なのだが)タイトルに惹かれ購入。

・なぜ、残業はなくならないのか?の考察
・残業を減らすにはどうすればよいか?の提言

について、2万人以上のデータを元に本音で書かれているというので、期待して読んだ。

前半は興味深くしっかり理解できた。
日本は高度経済成長時代に築かれた「残業の文化」の背景があり、その上で「残業代」を稼がないと暮らしていけない現状、上司より先に帰れない妙な連帯感、デキる社員に仕事がたまる会社の仕組み…

そして、残業が生む5つの恐怖「集中」「感染」「麻痺」「遺伝」「依存」。よく分析できているし、共感できる。その通りだなぁと頷きながら読み進めた。

しかし後半のいわゆる「解決編」部分は、かなり足りないと感じた。

むしろ本書に「これを読めば残業が減る!」とキラキラした期待を寄せて読んだとしたら、社長や役員クラスが実践しないと結局変えられないんだ、そんな「絶望」しか感じることはできないだろう。イチ社員が読んだところで、現状を変えられる!とはどうしても思えなかった。

社員として考えるならば、ムリムラムダをなくす働き方に地道に改善して、仕事の集中力を奪う雑務や夜の飲み会などの人間関係にうまく段取りを付け、楽しく働けるスタイルに自分自身を持っていくことだろう。

そしてそれは、今の会社で実現できるのか?
…そこに希望がないなら、社長が変わるイメージが湧かないのなら、やはり転職など別の方法を検討し始めた方がいいのかも知れない。ちょっとネガティブかもしれないが、もうそんな時代だと思う。

こういった根本は、社長にしか変える判断ができない部分だからこそ、社長が読むための啓発本としては有効だろう。
 
 
 
◆読む前の自分◆
 ・残業施策をしている会社のほうが残業のブラックボックス化につながっている。逆だと思っていたので驚きました。
 ・残業を減らすには個人の努力でどうにかするしかないと思っていいました。  

◆この本を読んだ気付き◆
 ・残業時間を60時間以上の層になるとストレスを感じているが幸せという割合が45時間以上の層より増加している。  
⇒これは驚きました。残業時間が増えるとストレスを感じそのことより幸せと感じる割合は減少すると思っていいました。

  ・日本のマネジメント層は適切な仕事の割り振り方などを習うことのないままマネージャーになる。  
⇒共感しました。自分もそうですがそのあたりがわからないままマネージャーになることが多く、作業時間が足りない場合は自分で引き取って何とかするという人が多すぎると感じました。

  ・マネジメント層は高難度な課題(※1)が与えられている。よってマネージャーになることが「罰ゲーム」と化している。  
⇒この部分もその通りだなと思いました。ではどうするべきなのかという気付きを与えてくれました。
  ※1  
   -多様な部下を扱う
   -部下には残業をさせない(少なくする)
   -自分も残業をしない(少なくする)
   -組織のパフォーマンスを上げる 
   -個人としての成果も上げ続ける
 
 
 
長時間の残業が組織を蝕んでいるという意識から書かれた本。
長時間労働に幸福を感じる人には「仕事が自分の思い通りになっている」全能感があり、仕事にのめり込む悪循環を生んでいる。残業が多かった時期と個人の実力が伸びる時期が重なると、残業が成長の条件であったと勘違いしてしまう。
上司が部下の仕事を代わりに引き受けたとしても、組織のパフォーマンスは必ずしも向上しない。できる部下に仕事を割り振ると短期的には楽になるが、できない部下との実力の格差が開くだけでなく、できる部下を酷使してしまいかねない。
仕事以外の時間を自分のために使えるよう余力を残し、多くの人や本から学ぶことで仕事での成長につなげていく。
次の時代の「希望のマネジメント」を考える参考書として読み込みたい一冊です。
 
 
 
 
日本人は長時間労働しがちですよね。
人がいないから自分が回さないと!となりますが、そもそも回らないのは人事や管理職の責任。終わらない仕事を抱えることで生産性も落ちますし、良いことはないです。ないはずなのですが、自分自身も仕事を抱えがちなので、この本は刺さりました。
有休もそうですが、長時間労働是正には法改正しかないのかなと思いますね。
 
 
 
残業がなぜ発生してしまうのか?
個人の要因、周囲の要因など様々な切り口でデータに基づいてわかりやすく解説してくれます。
特に、上司、組織、そして働く人の価値観や力など発散してしまいがちな要因をひとつひとつ丁寧に紐解いてくれ、頭の整理がしっかりとできます。

そして、ややもすると施策が形骸化してしまうだけの働き方改革が発生するメカニズムを解説し、そのうえで今後の組織のあり方、成果のあり方を提言してくれます。
これからの「働き方」と「生活」を考える上での必読本です。