世界文学への招待 (放送大学教材)

2020年01月23日 10時17分37秒 | 社会・文化・政治・経済
 世界文学への招待 (放送大学教材)
 

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

宮下/志朗
1947年、東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。放送大学教授、東京大学名誉教授。専攻はフランス文学・書物の文化史。主な著訳書『本の都市リヨン』(晶文社、1989年、大佛次郎賞)ラブレー“ガルガンチュアとパンタグリュエル”全5巻(ちくま文庫、2005‐2012、翻訳。読売文学賞および日仏翻訳文学賞)

小野/正嗣
1970年、大分県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。パリ第8大学で博士号を取得。作家、立教大学准教授、放送大学客員准教授。専攻はフランス語圏文学・創作批評論。主な著訳書『にぎやかな湾に背負われた船』(朝日新聞社、2002年、第15回三島賞)『九年前の祈り』(講談社、2014年、第152回芥川賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


テレビの講義と併用しながらテキストとして読んだ。読み物としても素晴らしく、意義深い本だった。世界文学と言っても現代文学が多く取り上げられ、近現代史、植民地支配、文化人類学的視点、母語と言語などを絡めながら、それぞれの地域(アフリカから日本まで)の文学のキーワードから作品を読み解き、文学の持つ力と可能性を論述している。
とりわけ、アラブ、パレスチナ文学の岡真理氏の熱い講義に加え、パレスチナ難民がいかにして難民となり、哀しみを背負い、人間としての尊厳を奪われていったかを描くカナファーニーの作品に心打たれた。
 
 
 
ぜひ読んでみたいと思う1冊でした。世界文学とは良い言葉ですね。いろいろな文学が混じり合うことで、新しい文学が生み出されるのでしょう。Twitterをやっているのですが、日本の俳句や短歌が英語圏で広く受け入れられて、素晴らしい作品がたくさん発表されています。日本人としてこれは嬉しいです。
 
 
これはシングルストーリー(アフリカ人作家アディーチェが指摘する物語の舞台へのステレオタイプの偏見、例えばアフリカならエイズ・貧困・内戦等)を持たれ易い各国の文学を紹介した本です。私の印象に残った事は、パレスチナ人がナクバ(故国喪失の悲劇)に遭っている事と、ナクバがアラビア語で描かれるためユダヤ人のホロコーストに比べて知名度が低い事です。私が分かった事は世界文学が西洋の文学だけでなく日本を含めた世界中の文学を指す事です。私が感心したものは、原文の読めぬ者には訳文にこそ価値がある、という宮下志朗氏の指摘です。
 
 
多和田葉子さんのように母語は日本語であってもドイツ語で執筆されるように「外国語を学ぶにつれ、母語の味方、母語の接し方も当然変化してくる、そのようにして母語に対しての感度が研ぎ澄まされていくはずだ。文学とは懐の深いものだ」とし、ゲド戦記を例にとって解説(小野正嗣)されていたり、他にもジョイスやベンヤミンなども。マイケルエメリック氏の世界文学の「源氏物語」が興味深いでした。新地学さんにもきっと意義深い本になると思います。
 


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