真っ盛りの9日、県立木曽病院での映画『パーソナルソング』の上映会と私の講演会のために木曽谷を訪れた。
木曽川にえぐられてできた木曽谷沿いに走る中央線を名古屋から長野方面へ北上するコースを辿るのは学生時代以来だ。
以前訪れたのはたしか夏だったはず。
晩秋の木曽谷は、まさに日本の原風景そのもの。
合掌造り集落で有名な富山県の五箇山辺りの風景とどこか似ている。
昨年の起こった御岳山の噴火の時に最前線基地となった病院が会場だ。
地元の自治体の方たちが人口二万人の一戸一戸にチラシを配ってくださったという努力のせいか、雨にもかかわらず病院講堂にいっぱいのお客さん。
映画の後に30分ほどの短い講演を行なった(70分の映画を見終わった直後にそんな長い講演はできない)。
目の前にいる聴衆の大半は高齢者の方たち。
そして、その間に介護士さん看護士さんとおぼしき人たちが並ぶ。
私にはなんとなく馴染みのある風景だ。
介護施設での演奏現場に近い雰囲気のせいか、講演会というよりもいつもの施設でのトークノリでしゃべる(もちろん演壇になんかいない。マイクを持ってお客さんの中に分け入る)。
「カラダヤワラカ」「アタマサワヤカ」という私の作った定番の「お口の体操」の呪文を披露すると会場から一斉に大きな笑い声が起こる。
「うン?なんでこれでこんなに受けるのかナ?」と思い、近くのご婦人に「おかあさん、ここ笑うところじゃないですけど…なにか、私オカシイこと言いましたか?」と、「きみまろ風」な切り返しをすると、さらなる笑い声を誘う。
施設で演奏する時、入居者の人たちからよく「きみまろに似てますネ」と言われる。
「うん?顔は似てないと思うけど…ナ」(似てるかナ?)。
多分、髪の後ろのシッポの感じが似てるんじゃ…と自分を納得させるが、「きみまろ風のノリ」はけっして嫌いじゃない。
思いっきり毒舌で目の前の高齢者をイジってみたい気持もあるけれど、講演者がいきなりきみまろになったんじゃあネ…(?)と思い直す(笑)。
それにしても、この地域の高齢者の元気なこと。
きっとこの地域の高齢者率(全人口に65歳以上の高齢者の占める割合)も50%に近いんだろうナと思いつつ(2013年現在の日本の全国平均高齢者率は26%で2050年までにこの平均の数字が50%になると予測されている)、やっぱり問題は「元気かどうかだ」と聴衆の顔を見ながら思う。
施設を訪れたり高齢者と話をしていつも思うのは、百歳越えの人たちの元気なことダ。
「この年でなんでこんな元気?」と思うのは基本的に間違い。
真実はまったく逆で「元気だから百まで生きられる」に過ぎない(考えてみれば当たり前の話か)。
寝たきり人口が200万人もいると言われる日本に対してデンマークやスウェーデンの北欧の福祉大国は寝たきり人口ゼロ。
別にこれは数字のトリックでも何でもなく、そこに住む人たちが「どう生きてどう死にたい」と考えるかどうかだけの違いから生まれた数字だ。
寝たきりだろうが胃ろうだろうが「何としてでも長く生きる」ことを望むのか、ひたすら「健康的に生きていこうと努力する」かの違いだ。
そこにあるのは思想の違いだけ。
もちろん、そんな「当たり前」のことに日本もやっと気づき始めているので、あれやこれやと対策をたててはいるけれども、何せ根本的な思想がない国なので(もともとないのだからいきなり「主張のある国」にはなれない)、対策はいつも後手後手でかつ行き当たりばったり。
みんながめいめい勝手はなことを言う(メディアを見てればよくわかるし、政治や行政だって同じこと)。
なので、私の話を熱心に聞き入ってくださっていた木曽の高齢者たちと「マジに何かできないかナ?」。
そんなことを考えながら帰路についた。
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